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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

社長借入金の変動と利益の関係

2015-09-25 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
「社長借入金」、多くの中小零細企業で生じる勘定科目です。負債です。社長からの借金です。会社が社長から借りたお金です。借りたお金ですので返さなければなりません。だから、貸借対照表の負債の部に計上されるのです。

社長借入金は会社の資金が不足したときに生じます。例えば、資本金1000万円で設立した会社が、その1000万円を使い果たしたときには、何らかの形で資金調達をしなければ活動ができません。そのときの手っ取り早い方法が社長借入金です。社長の個人的な資金を会社に提供するのです。

社長借入金で資金調達したときの仕訳は「現金あるいは預金/借入金」となります。会社の資金は増えますが収益は生じません。入金の原因が「負債の増加」であるからです。社長借入金を返済したときの仕訳は「借入金/現金あるいは預金」となります。会社の資金は減りますが費用は生じません。出金の原因が「負債の減少」だからです。このことが社長借入金を理解するにあたって非常に大切です。

★社長借入金の背後(多くの場合は赤字経営)
会社の資金が不足するから社長借入金は行われます。資金不足の原因は「収益<費用」、すなわち「赤字」です。社長借入金で資金不足の穴埋めをしたからといって赤字は解消されません。社長借入金で得た資金でもって「収益>費用」という状態、黒字にしなければならないのです。そうでないと、社長借入金は返済できません。

★社長個人から見た社長借入金
社長借入金を社長個人から見れば、会社に対する「貸付金」です。貸したお金ですので、返してもらわなければなりません。「私(社長個人)の資金が減ったのだから、私の所得(税金)は減らないの?」、は素朴な疑問かもしれませんが、貸付金は返ってきますので所得を減額する要素にはなりません。

★社長借入金の返済ができない場合
会社としては返済負担がなくなるので資金面では助かります。しかし、社長個人としては辛いです。資金が減ったのに税負担は軽くならないからです。

★社長借入金の利息
支払わないことはほとんどです。というのは、社長は会社が危機的状態であれば資金を無利息で提供するのが当然であるからです。危機的状態に陥った責任は社長にあるからです。また、利息を支払うと、社長が個人の所得として確定申告するのが煩わしいという理由もあります。

【会社設立登記など】税理士(会計事務所)と司法書士との連携《ワンストップでなくても連携は可能》

2015-09-11 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社の設立、役員変更などの登記は税務会計処理に影響します。また、税務会計処理をするために登記をしなければならないこともあります。

◎会社設立の際に大した意味もないのにメンバー全員を役員にしてしまったがために賞与が支給できなくなった(経費として認められなくなった)
◎退職した役員に退職金を支給しようとしたが役員を辞任した登記をしていなかったので退職金が支給できなかった(経費として認められなかった)
◎本店移転の登記をしていなかったので会社が実在しない場所を管轄する税務署に申告書を提出することになってしまった(会社の納税地=申告書提出先は登記上の本店所在地になる)

「登記の事情」と「税務会計処理の事情」を照らし合わせておかなければ、このような不都合が起きてしまいます。

◆登記は司法書士、税務会計は税理士
法律上、登記をするには司法書士の資格が、税務会計(厳密には税務)には税理士の資格が必要です。これが、「不都合」が生じる原因です。登記と税務会計の連携がないからです。

◆登記(司法書士)と税務会計(税理士)のワンストップサービス
「不都合」を解消する手段として、司法書士と税理士が同じ場所に事務所を構えているというケースがあります。これですと安心です。ただし、法律上、司法書士と税理士の「合同事務所」は認められておらず、ワンストップサービスの場合であっても、司法書士と税理士別々に契約をして報酬も支払う必要があります。また、ワンストップであるからといって報酬が割り引かれるとは限りません。

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★ワンストップでなくても連携は可能

Aさん(これから会社を設立し事業を開始する)
B税理士(Aさんが会社設立後に税務会計処理を依頼する)
C司法書士(Aさんが会社の設立登記を依頼する)
なお、B税理士とC司法書士に面識は全くない。

AさんがB税理士の事務所を訪ねて行きました。

Aさん「このような方針(株主、役員など)で会社を設立しようと考えています。」
B税理士「わかりました。登記をするにあたっての注意点をメモしておきます。これを司法書士さんに渡してください。」
Aさん「わかりました。そのまま司法書士さんに渡せばいいのですね。」
B税理士「司法書士さんさえよろしければ、詳しい事情は私から司法書士さんへ直接説明しますので、司法書士さんに私の名前と電話番号を教えてください。」
Aさん「そうしていただけると助かります(笑)!とにかくこんなこと(事務手続)は苦手なもんで。」

Aさんはその足で司法書士の事務所を訪ねました。すると、その日のうちにC司法書士からB税理士に電話がありました。

C司法書士「初めまして、司法書士の〇〇でございます。この度は、A様の会社設立登記の件でお電話させていただきました。」
B税理士「こちらこそ初めまして。税理士の〇〇でございます。さっそくのお電話ありがとうございます。A様の会社設立登記の件ではご無理をお願いして申し訳ありません。」
C司法書士「どういたしまして(笑)!簡潔なメモをご用意いただいて助かります。どうかあとは私にお任せください。」

10日ほどしてC司法書士からB税理士へ、メールで履歴事項全部証明書と定款が送られてきました。B税理士はそれをもとに、税務関連役所に提出する設立届を作成し提出しました。Aさんは社長としての活動をすでに開始しています。

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以上は、司法書士と税理士のごく一般的な連携だと思います。司法書士にすれば、登記制度に無知な人よりも一定の知識がある税理士に説明をするほうが仕事はしやすいです。税理士としては、「登記の事情」と「税務会計処理の事情」を照らし合わせていないことによる不都合を防げます。

事情によりワンストップサービス(提携関係のある税理士と司法書士)を利用できない場合には、このような連携が可能であるかを司法書士と税理士に確認してみることです。多くの場合、連携は可能だと思います。

≪迷う、悩む≫開業届(個人事業者)を税務署に提出すべきか?

2015-08-29 12:45:00 | 起業(会社設立など)と経営
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を税務署に提出することをためらう人がいます。開業届は、事業の開始をした日から1か月以内に提出しなければなりませんので、提出することを迷ったり悩んだりする余地はありません。

◆開業したといえるのか?(この先どうなるかわからない・・・)

開業届を提出しない第一の理由はこれです。

誰しも、事業の開始をした時点では、先はどうなるのか、つまり、事業に成功して多額の所得を得て多額の納税をすることになるのか、それとも事業に失敗して無一文になるのかはわかりません。「事業の開始」とは、客観的に見て事業を開始したことが明らかで(店舗を構えた、サイトを開設したなど)、本人が事業をするという意志を持っているということです。先のことは関係ないのです。そうであれば、開業届を提出しなければならないのです。そうすることが法律で義務付けられているのです。

◆雑所得で申告したい

このような難しいことを知っている人がいます(笑)。

事業所得の場合は、いわゆる記帳義務があります。記帳義務とは、事業所得の計算の基となる収入と必要経費に関する証拠と記録を残す義務です。この記帳義務に対して身構える人がいます。実際、この記帳義務を果たすことは容易でありません。十分な記帳ができず、税務調査で税務署から厳しい指摘を受けることもあります。かといって、記帳義務を逃れるために、事業所得を雑所得として申告することはできません。

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★開業の事実と所得の区分は税務署が決めます

開業届の提出がない場合、開業の事実を決定するのは税務署です。開業届の提出がないのに事業所得の確定申告をしていない場合には、税務署が開業の事実を突き止めて事業所得の申告をするように促してきます。また、所得の区分(事業所得か雑所得か)を決定するのは税務署です。

「これで事業の開始かな?」と感じたならば、まずは税務署に電話(匿名でもOK)で確認することをおすすめいたします。

★開業届を提出しないで事業所得の申告をしている人がいる

確かにいますね(笑)。

開業届の提出は、納税者の「開業したという認識」を税務署に知らせて、「開業の日」を明確にするためにあるの「だと思います」。当たり前のことですが、必要経費は開業日以降しか認められません。また、初年度の青色申告の申請は開業から2か月以内にしなければなりません。

開業届の提出がない場合には税務署も開業の日がわかりませんので、開業届の提出がないまま初めて事業所得の申告をしてきた納税者に関しては「開業の日」を調べなければなりません。そして、その開業の日を基準にして様々な税務的な判断をすることになります。

やはり、税務署と「開業の日」に関してもめたくない場合には、開業したならば速やかに開業届を提出しなければならないということです。「後出し」の開業届(開業の宣言)は信用してもらえないのです。

経理担当者を採用する場合は経理業務の範囲に注意

2015-08-28 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
経理や会計といってもその意味は非常に漠然としています。帳簿を作成する、金銭そのものを扱う、請求書を発行する、支払いをすることであるなど意味は様々です。 それゆえに、「経理業務」をさせるために「経理業務の経験者」を採用するにあたっては、「経理業務の範囲」を明確にしておく必要があるのです。

【営業事務】
営業部門が行う、売り込む、受注をする、納品をするという活動にまつわる様々な事務的サポートを営業事務といいます。その代表的業務は請求書の発行とその入金の管理です。

【給与計算(労務手続)】
給与計算も数字を扱う事務作業の代表です。給与計算には社会保険料(健康保険と年金保険料)や税金(所得税と住民税)の徴収という法定された作業が伴います。

【総勘定元帳の作成(試算表の作成)】
この作業は一般の人にはほとんどなじみがないと思います。「仕訳」と「勘定科目」です。会計ソフトです。会社に義務付けられている会社法に基づく決算(株主総会)と税法に基づく法人税の申告を行うには、総勘定元帳の作成(試算表の作成)が必須となってきます。

【現金(預金)管理】
いわゆる「財布を握る」ということです。おそらく、このような権限のある立場にあった人が経理担当者の採用に応募してくることはないと思います。

【支払事務】
仕入代金、給料、諸経費など会社は様々な支払いをしなければなりません。支払事務は、会社が支払うべきものについて、支払うべき金額を計算し支払いの手配(銀行振込の手続や現金の用意)をすることです。規模の大きい会社の場合、この作業は「購買あるいは仕入」などと呼ばれる部門が行っています。

【税務申告】
会社が儲かれば法人税が課税されます。法人税は会社が自主的に税額を計算して申告をしなければなりません。会社は法人税が課税されなくても申告をしなければなりません。「儲かっていないこと=利益が生じていないこと」も申告をしなければならないのです。この税務申告という事務作業は会社には不可欠なのです。

経理業務の範囲に関する認識は、人それぞれの人生経験(主に職歴)によって異なります。ですから、採用広告する側と採用広告に応募する側に認識の違いがあるのは当然です。大切なことは、その認識の違いを埋めるために対象となる「経理業務の範囲」を明確にしておくことです。

会社設立と同時に経理担当者を採用して「経理全般」を任せていたが、2・3年経って「税務申告」と「源泉徴収」が全くできていなかったことが判明し愕然とする人もいます。ご注意ください!

会社に課税される税金の事務作業(会社を設立したら直ちに作業開始!)

2015-08-25 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社を設立した瞬間から様々な税金が課税されます。会社に課税される税金のほとんどが、いわゆる「申告納税制」ですので、会社を設立したならば「申告」するための事務作業を始めなければなりません。また、申告納税制においては、税務関連役所は申告の義務を連絡はしてくれません。申告納税制においては、納税者自身で申告の義務を認識しなければならないのです。税務関連役所が連絡してくるのは、申告の義務を果たすべき期限が過ぎてからです。

申告納税制においては納税者の甘えは許されません。「知らなかったから(役所が連絡してくれなかったから)」は通用しないのです。以下において、会社を設立して事業を開始した人を対象に、会社に課税される税金の事務作業の説明をさせていただきます。参考にしていただければ幸いです。

■法人税

会社が儲かれば、法人税(国税)、事業税(都道府県税)、都道府県民税、市町村民税が課税されます(ここでは、まとめて法人税といいます)。ここでの「儲け」とは「利益」のことです。利益は「収益-費用」として計算されます。会社は自ら利益を計算しなければなりません。この計算作業は決算と呼ばれ、事業年度という1年ごとの単位で行います。

決算作業をするには、収益と費用を集計するための記帳(帳簿作成)という作業を常日頃からしておかなければなりません。この作業が大変です。預金通帳や領収書などの基礎資料の整理保存は当然として、複式簿記という専門的知識が必要な事務作業が必要となります。

会社は法人税が課税されなくても申告をしなければなりません。要するに、「儲かっていないこと=利益が生じていないこと」も申告をしなければならないのです。このことを知らない人が少なからずいます。ご注意ください!

■消費税

会社は消費税(国税および地方税)を納めなければなりません(売上規模と設立後の年数によって納税義務が免除される場合があります)。会社は販売の際に消費税を受け取り、仕入や諸経費を支払う際に消費税を支払います。会社が税務署に納める消費税は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた額です。消費税も法人税と同様、原則として事業年度ごとに自ら計算して申告と納税を行います。

税務署に納める消費税の計算は、法人税の課税の対象である利益の計算と並行して行います。受け取った消費税は売上をはじめとする収益から計算します。(収益を消費税込で把握している場合には収益の8(消費税率)/108(税込価格)となります。) 支払った消費税は仕入をはじめとする費用から計算します。(費用を消費税込で把握している場合には、集計した費用合計の8/108となります。)ただし、すべての収益と費用が消費税の課税対象となるわけではないので対象外の収益や費用は除外しておく必要があります(例えば、給料や利息には消費税は課税されません)。また、収益や費用以外にも消費税の課税対象となるものがあるので注意が必要です(例えば、設備投資に際しては消費税を支払いますが設備投資の全額が費用とはなりません)。

■源泉徴収

会社には源泉徴収義務というものがあります。この義務は、会社がその役員や従業員に給与(給料、賞与など)を支払う際に所得税(国税)を源泉徴収し(天引きし)、それを税務署に納めるというものです。なお、源泉徴収同様、役員や従業員の住民税(都道府県民税と市町村民税)も天引きし市町村役所に納めなければなりません(都道府県民税も市町村役所に納める)。

■固定資産税、自動車税、印紙税

これらは個人(すべての個人)と同じです。会社として不動産を所有していれば固定資産税が、自動車を所有していれば自動車税が、一定の契約書を作成すれば印紙税が、それぞれ課税されます。

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★設立届を速やかに提出する
会社の税金に関する事務作業が遅れ、最悪の場合、申告が期限に間に合わない人の共通点は、設立届を提出していないということです。設立届を提出しておけば、税務関連役所から申告などに関する連絡が送られてきます。ですから、設立届は必ず提出してください!