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晴れた日こそ映画を観る

24歳会社員による映画感想ブログ。出かけたと思ったら映画館というインドア派です。

河童のクゥと夏休み(原恵一特集)

2012年11月16日 00時17分43秒 | 映画(特集)
原恵一映画を観よう!と意気込んで観てみたものの意外に微妙だった。

特に気持ち悪かったのは飼ってる犬の「おっさん」のキャラ。
最初は優しかった飼い主に虐待されるようになり、逃げてきて今がクゥが住み込む家で飼われているってやつなんだが、なんか達観しちゃってる感が気持ち悪い。
「優しかった前の飼い主は虐待するように変わっちまった」という経験を踏まえて「人間なんか変わっちまうもんさ、フッ」みたいなことを言うんだがそんな浅いことドヤ顔で言われてもねえ。
声とか言ってる内容が、どう考えても絵の動きと合ってないのも残念。
もう少しうまく見せられないもんなんだろうか。

とはいえ、クゥを始め絵のタッチがキモカワな感じだったことやら、缶ビール飲みながらクゥを観察するお父さんの感じやらは好きでなんだかんだ楽しめるところもある映画だったとは思う。



こういう表情はとても愉快だった。


さて、この機会に「オトナ帝国の逆襲」も見返してみたんだがこれはやっぱり面白かった。
最初に観た時の印象よりもかなりコンパクトな映画に感じた。

当時映画館でこの作品を観た時の思い出としては、ひろしが靴下の匂いで家族愛を取り戻すシーンで一緒に見に行ってたクールなタイプの友人が泣いてたのが印象的だったんだけども、これはやっぱいいシーンだな。

ましてや希望に満ちた10年前と違って今はおれも普通にサラリーマンやってるわけで、35年ローンを安月給で返済する社畜であり平凡な一家の大黒柱のひろしの言う
「俺の人生はつまらなくなんか無い!! 家族のいる幸せをお前たちに分けてやりたいぐらいさ!!」
の名台詞は胸に突き刺さりましたなあ。

「カラフル」とか「河童のクゥと夏休み」の場合は発してるメッセージ自体があんまり好みじゃないってのもあって、そういう突き刺さるセリフがないどころか頷けない部分が多くて楽しめなかった。
面白いか面白くないかで言えば「カラフル」は特にめっちゃくちゃ面白くて、合う人には合うんだろうと思う。

カラフル(原恵一特集)

2012年10月02日 00時00分00秒 | 映画(特集)
「おおかみこどもの雨と雪」を観てアニメ映画も面白い!!!と気付き他の傑作を探ってみたところ、細田守作品とディズニーピクサー関連を除いたアニメの名作として唯一大好きだった「オトナ帝国の逆襲」と「戦国アッパレ」等のクレしん映画を監督した原恵一監督の作品が見つかったので、原監督の映画をちょいと観てみようと思う。
(ちなみにアニメの名作ながらジブリ作品はあまり好きじゃない。)

そこでまず観てみたのがこの「カラフル」。
お話としては、主人公は重罪を犯して死んだ魂なんだが運よくチャンスをもらい、自殺した中学生男子の魂と入れ替わりにもう一度生きられるというもの。
ネクラ過ぎる中学生に乗り移ったのに普通の振る舞いをしちまったために、普通にしてるだけなのに周りに驚かれ「どんなやつだったんだよ、コイツは!」ってなるのは名シーン。

「誠くん」がどんなやつだったかも知らないまま誠くんの姿で援交女子の邪魔をしたり髪型を変えたりするまでは本当に面白くって、アニメ映画ってあんまり知らなかったけど本当に面白いんだななんて思った。
それなのに後半がほんとにひどくて、前半からのギャップがここまでひどいのは初めてなぐらい残念だった。

一番引いたのは家族ぐるみで絵だけは上手な誠に美術専攻のある学校を進めるシーン。
母「お兄ちゃんは以前は真のことなんて気にしてなかったのにこの学校を見つけてくれたのよ」
父「母さんだって、前はスーパーの惣菜ばかりだったのに料理するようになったじゃないか」
兄「父さんも前よりよくなったよ!」
みたいな気持ち悪い持ち上げ合いの説明ゼリフで家族が急にうまくいき始めたことを互いにたたえ合う感じに悪寒が走った。
また「自主自立」、「考」など生徒の自主性を尊重するワードが散りばめられた学校案内が気持ち悪くて、自殺未遂するような子がそんなとこに入ったら自分という存在のくだらなさに悩まされて絶対また自殺を図ると思うよ。
(おれの卒業した高校も「自主自立」的なことを謳った自由な校風だったのである)

だからそういう間違った意味の「自由」を批判する方向に持っていくのかなと思ったらそれはそれで普通に良いものとする感じだし、誠君も全然違う方で反論するからどんどんわけわからなくなる。
誠「ボクは最近仲良くなった友達がいて、その子と同じ高校に行きたいんだ!」
こんな許すまじゆとり発言と、それに言いくるめられる家族一同に心底ガッカリした。
「高校に入って価値観が変わったらどうせ仲良しのままじゃなくなるし、いい友達なら高校が変わっても仲良くできるぞ!」って将来子供ができたときにに強く教えられる気がするのは中高一貫でない学校に通ってた者のささやかなアドバンテージなのだろうか。

そもそも生徒の自主性を重んじる学校を「進路とかどうでもいい」っていってる子供に勧める時点で危ない。
何も決められない人間に決断を迫る高校生活を押し付けるんだぞ?
子どもなんだから自分で決断できない子が多いのは普通だし、変な規則のある学校は別としてもある程度教育しようという姿勢を見せる学校にいったほうが絶対いいと思うなあ。

というわけで、自分の価値観から決して認められない作品でした。
前半までは本当に面白かっただけにめっちゃくちゃ残念でならない。
「クレしんなんかで泣いちまったぜ!」ってさせられた監督とは思えない後半で、前半がめちゃ面白かったこともあり非常に残念だった。
「前半面白かったのに後半ひどいアワード」があったら各賞を総なめにするはず。

ヴァンパイア(岩井俊二監督特集)

2012年09月30日 00時00分00秒 | 映画(特集)
間にぴあフィルムフェスティバルの話をはさみましたが、岩井俊二特集の続きをいきます。
今公開中の「ヴァンパイア」について。
岩井監督と言えばキレイ系の名手として有名だけど個人的にはあまり理解できなくて、同じく岩井監督の「リリィシュシュのすべて」では登場人物の変化に「??」ってなってしまったのだが、ヴァンパイアはそれ以上に「???!」とさせられる作品だった

そもそも主人公ケヴィンが“バンパイア”なのか何なのかということすらよくわからん。
血を集めてはいるけども、飲んでみようとしても結局気持ち悪いから吐き出しちゃうわけで、普通に日中も活動してニンニククサそうな食べ物も食べるから実は普通に人間てことでいいんだよな??
なんて思ってると女がヒルにやられたところから血を吸って飲んでみたり、最後にはその女が恋人になって「私の血を好きなだけ吸って生きていいわよ、ただし他の子の血は吸わないでねヾ(´ε`*)ゝ 」なんて言われ、「首から吸うの初めてなんだ」との謎の童貞宣言をしながら血を吸ったりと、あれーやっぱりヴァンパイアなのか?ってことでまたしても「????!」ってなっちまった。

「ヴァンパイア気取りの男が恋により本当のヴァンパイアニズムに目覚める!」みたいな着地点として解釈していいのやら、結局は直接血を吸うんじゃなくてビンに入れて冷蔵保存してる新しいタイプのヴァンパイア的なキャラクターを撮ってみたかったってだけでしょっていう出オチ感やらで、観てる方としてはかなり退屈だった。。。

なんて今でこそはっきり「退屈だった!」って言えるけど観てるときにはそれなりに楽しんでしまうのが岩井映画の特徴で、もし誰かと一緒に観に行ってたら「まあ面白かったね」みたいな感想を共有してしまいそうな感じが怖い。
岩井俊二作品を一緒に観に行った友達に対して「あの時は面白かったねなんて言ったけど、実は結構退屈な映画だったじゃん。。。オレ、あいつに嘘ついちまった。。。」って罪悪感からお互い距離を置くようになり、疎遠になったっていう人も多いのではないかと思う。(?)

岩井ワールド過ぎてついていけないので、次回作には常に観客目線みたいな鈍感キャラを登場させて説明的な役割にして、普通のひとでも楽しめる感じにして欲しい。

「PFFアワード2012」の結果について

2012年09月29日 21時18分55秒 | 映画(特集)
先日第34回ぴあフィルムフェスティバルのコンペティション部門の作品を4つ観てきた感想をここに書きましたが、昨日グランプリ等が発表がされたそうです。

グランプリは鶴岡慧子監督の『くじらのまち』で、運よくおれも観れた作品。
「仲良し高校生男女3人組のすれ違う心の揺れを瑞々しく描いた青春群像劇」ということで、青春時代を漆黒の闇の中で過ごした身としては全然乗れないはずの設定でそれなりに楽しんでしまったので、確かにできの良い作品だったのかなと思う。
「個人的には乗れないけど世間的に食いつきが良さそうな映画を撮る監督」って印象で、前回「『踊る大捜査線』的なやつに抜擢されたら試しに観に行ってみようかな」なんて適当なことを書いたんだけど、できればそういう企画ありきの作品じゃなく自由に撮った長編を今度は作って欲しいね。
今回の作品は見せ方は上手だけど正直話がつまらん!っていう感じが個人的にはあったので、次回全然別の作品を作ってもらうことに期待ですな。

ちなみに個人的にお気に入りだった『Please Please Me』も日本映画ペンクラブ賞を獲ったそうで、おめでとうございます。

学生で映画を撮ってこういう映画祭に出品して、プロの映画監督になって傑作映画を撮るなんてことになったらこれ以上ないほど素敵な生き様ですな。
今回は受賞はしなかった加藤綾佳さんも加藤秀則さんも、劇場公開の作品を獲ったら観てみたいなと期待してしまう。

ぴあフィルムフェスティバルに行ってきました

2012年09月27日 21時10分48秒 | 映画(特集)
ぴあフィルムフェスティバル(PFF)とは「ぴあ」が主催する自主映画の登竜門的映画祭ですが、PFFを知ったのは私が生涯ベスト級に大好きな映画である「川の底からこんにちは」がきっかけ。
実はこの作品は、石井裕也監督がPFFでグランプリを受賞し、その実力を認められて「ぴあ」から助成金を受けて作られたものなのですが、調べてみれば石井裕也監督に限らず今をときめく有名映画監督はPFFの入賞者がめちゃくちゃ多いんですよね。

個人的に大好きな映画を撮った監督だけを挙げてみても、井口奈己(人のセックスを笑うな)、園子温(恋の罪・冷たい熱帯魚、愛のむきだし)、犬堂一心(ジョゼと虎と魚たち)、李 相日(悪人)、中島哲也(告白)、内田けんじ(アフタースクール、(鍵泥棒のメソッド))、タナダユキ(百万円と苦虫女)、森田芳光(間宮兄弟)ってもうそうそうたる顔ぶれ!!
おれの好きな邦画ってだいたいPFF出身監督で網羅されとるやん!!w|;゜ロ゜|w ヌォオオオオ!!!!!!!!ということに気付き、今回足を運んだ次第であります。

ちなみにPFFの主な入選監督一覧はこちら
http://pff.jp/jp/award/index.html

で、今年のグランプリやら何やらの発表&表彰式が明日(9/28)に迫っているということなので今日のうちに少しでも感想を残しておきたいと思う。
4つ観ました。観た順に書くぜ。

1.「Please Please Me」
最初ながら個人的には一番良かった。
父親と娘の二人暮らしの妙な生活を描き、わかるわけないのに共感できる絶妙な感じでした。
特に自転車を押しながら2人で帰っているシーンで、娘が一人でしゃべり始めちゃうと父はすっかり闇に消えて娘が一人でひたすらしゃべりまくるところは印象的。
ちょっと過剰な演出だけど、聞き手を無視してしゃべり続ける感やら、男側の「よくわからなかったけど父さんはわかるよ、うん」みたいな都合のいい感じやら、これって親子というより男女のあるあるなんじゃないだろうかと感じた。

親子というより男女、男女とはいえ親子。
親子は親子でも、人間同士なんだからその関係ってそれぞれだよな。みたいな。
そんな不気味な関系が面白かった。
PFF先輩監督作品の中で言えば、ほんのちょっとだけど森田芳光監督の間宮兄弟のエッセンスを感じる。

というわけで非常に楽しめたのだが、同時に結局なんだかよくわかんねえやって感じがしちゃう作品でもあった。
65分という尺は映画として起承転結を付けるには短いのかもしれないけどPFF的には長い部類なわけで、それだけの時間をかけて観た“一本の映画”としては不満が残る。

2.「水槽」
学校でいじめられてる女子中学生が、街に逃げ込んできた危ない気配のする兄ちゃんといやらしい関係になる話。
なんだか不思議な作品で、上映後に監督が何かの流れで“フェチ映画”だと言っていたときには妙に納得した。

いつもUCCのブラックコーヒーを飲んでいて背中は傷だらけの微イケメンなチンピラはいかにも誰かしらのフェチズムを満たしそうだし、個人的に面白かったのは田舎町の学校で主人公をいじめるいじめっこのブスさ!
「エェーーーー!!???本来きみがいじめられるべきでしょ!∑(`□´/)/」って失礼極まりない第一印象を持たされる外見のいじめっこ達に主演のいじめられっこが「ブス!」と言い返した時は笑っちまったし、その後いじめの標的が他に移るという話の流れも良い。

ということで思い返せば面白いところもあったんだけど、個人的には退屈な印象だったな。

3.「くじらのまち」
男子1人+女子2人の仲良し3人組高校生が恋の三角関係に陥るっていう乗れるわけない設定の作品。
クラスにその三人しかいないならわかるが、普通の共学でその組み合わせで仲良し三人組になる感覚が絶対理解できない。
こういう脚本はフィクションとして鑑賞しておk??

という先入観が功を奏したのか、異世界のものとして割と楽しめました。
本編の不足分をタイトルで補完する技量やら、なんとなく納得させられたようなわけわからんような感じ、だけど結構面白かったなと思わせる器用さやらが商業映画で成功しそうな感じがしました。
監督&カメラマンセットで「踊る大捜査線」的なやつに抜擢されたら試しに観に行ってみようかな。

4.「あの日から村々する」
この作品は最後に観たのですが、それまでの3作は結構真面目で「そろそろぶっ飛んだやつが見たいなー」って思ってたときにちょうど見れてよかった。
今回観た監督の中で一番大物になりそうな感じがしたというか、なってみて欲しいと思わされました。
監督の加藤秀則さんは見た目は「Please Please Me」の監督青石太郎さんそっくりで、上映前に見かけて「青石さんがまた来てるわー」とか思ってたらまったくの別人で驚いたくらい。

映画のあらすじは、原発事故の後“なめこ汁発電”が一般的になった頃、発電所で事故が起こるというもの。
官房長官は「ただちに影響はない」的なことをいうものの、発電所近くの住民はどんどんカニ化してしまうというマジキチ展開。

総理大臣が歯の抜けまくった子供だったり、その子供に「だってこんなに悪口ばっかり言われる役職なんか普通誰もやりたくないでしょ?」って言わせるあたりやら、「だったら私がやります」っていかにもお馬鹿なキャラが立候補するあたりやら、風刺っぽいニュアンスなんだけど小難しくしない敷居の低さがとてもよかったと思う。
今後スポンサーをつけてプロとして作ろうとしたらいろんな障壁に邪魔されそうだけど、本当に面白いものをぜひ撮って欲しいと期待させられた。

というわけで、いっぱいある中から偶然出会えた4作品について思い出してみた。
どれも自主製作なのに非常に面白かったような、普通の映画並に金払ったと思うと物足りなかったような複雑な感じ。

とりあえず、明日の発表が楽しみですな。

リリィシュシュのすべて(岩井俊二監督特集)

2012年09月20日 03時48分41秒 | 映画(特集)
「ヴァンパイア」の公開を記念して、シネマライズで岩井俊二監督映画をいろいろと再上映していたので前々から気になっていた「リリィシュシュのすべて」を観てきた。

ネットの口コミを核心に触れないように恐る恐る読み漁った感じによると、十代独特の胸がキリキリと痛むような感じがするリアル系青春映画って感じで、つい最近観てめちゃ素晴らしかった「桐島、部活やめるってよ」を岩井テイストで描いた感じかなーなんて期待して鑑賞。
結論から言えば、個人的にはちょっとイマイチだった。。。
「桐島~」との比較で言えば、登場人物全員がリアルで「学校そのもの」を描き切ってる上にどの登場人物にも感情移入できる「桐島」に対して今作は「こんなやついるか…?」ってほど登場人物の気持ちが理解できないというか、あまり共感できなかった。
忍成修吾と市原隼人は中学入学当初はとても仲が良かったけど夏休み明けから忍成が不良になり荒れちゃって市原隼人にも強烈ないじめをするようになるっていう話なんだが、その変化する様にリアリティを感じないんだよな。。。

たしかにちょっとしたきっかけで人が変わることはよくあって、リア充だった友達が急に暗くなってひこもりになり音信不通になったこともあるし、いじめられっこタイプだった子がいじめる側にシフトチェンジするなんてのもまあよくある話。
「顔は歳とったら変わるから性格重視!」みたいなことを言う人もいるけど実は性格の方がすぐに変わるよね?と思う。

だから温厚で優秀でいじめられっこだった忍成が急に不良になるってこと自体は結構リアルだと思うし、それをもともと仲が良かった市原隼人の視点で描くってなるとめちゃくちゃ面白くなりそうなのに、十代のその繊細な心情の変化をあまり上手には描けてなかったと思う。

忍成が変化する夏休みに何があったかというと、オヤジ狩りした不良から盗んだ金で沖縄に行って豪遊するんですな。
そこで忍成はダツに刺されて死にかけたり、海で溺れて死にかけたり、謎の旅人大沢たかおが死ぬのを目の当たりにしたりと散々な目に遭うものの、沖縄編のウェイトとしては明らかにめっちゃ楽しそうな豪遊シーンの方が大きめで、良いことだけじゃなかったけどそれなりに楽んだように見えたけど??といった感じ。
(それとも死にかけた時に人工呼吸という形でファーストキスを市川実和子に奪われたことで失望したのだろうか!?)
少なくとも引き金になるほどのことは起きていないように思えるまま忍成は沖縄の海に札束をバラ撒いちゃうほど気が狂っちまったのである。
次のシーンで2学期が始まったらもうクラスメイトのDQNに攻撃的なキャラになっており、そいつをドブで泳がせるっていうマニアックでハードないじめシーンに突入しちゃうんだからもう付いていけないぜ。

忍成の斡旋で売春をやってた蒼井優が最後に自殺するっていうのも唐突。
いきなり変化を起こすことで十代の不安定さ的なものを表現したいのかもしれないし、蒼井優や忍成本人にも説明できないような機微ってやつなんだろうけど、「説明できないけどなんかわかる!」って気持ちにさせて欲しかったなあ。
あと忍成に続いて蒼井優もお金を捨てるんだが、万札を捨てるシーンってなんか嘘くさくて役のリアリティをなくすし、ありがちで面白くない!

ついでに言うと、これは完全に自分が悪いんだがリリィシュシュファンサイトの掲示板の文字がウワーって流れるのをちゃんと読むのはきつい!!
きついからちゃんと読んでなかったら意外と重要なことが出てくるのをまんまと見逃しちまった。
その結果フィリア・青猫についてもよくわからんままになっちゃったんだから、ひょっとしたらちゃんと読んでれば後半は結構楽しめたのかもなー。自業自得。
なのでこれから初めて観る人はここをちゃんと読むように気合を入れて臨むのがオススメです。

なんか文句ばっかり書いちゃったけどテーマとか話自体はすごく面白いなあと思うし、映像もいちいち綺麗だからそれなりに楽しめた。
それがマイナスに感じたというか、嫌なシーンなんだからこんな綺麗なんじゃなくてもっと嫌な感じで撮ってよって思うとこもあったけど。

ということで、ぱっと見好きな感じだからこそ却って物足りない印象が強く残る作品だった。

ヴァンパイア初日舞台挨拶で蒼井優と岩井俊二監督観てきました

2012年09月18日 06時34分49秒 | 映画(特集)
9/15日に岩井俊二監督8年ぶりの監督作品「ヴァンパイア」が公開になり、岩井監督と蒼井優による舞台挨拶を観てきた。
二人とも“お茶目”って感じで、歳も観た感じも全然違うけどなんとなく気が合いそうな感じだった。

蒼井優は演技以外でしゃべってるのって案外ほぼ見たことなかったけど、思ってた以上に変人っぽかった。
ショートヘアになってから人前に出るのが初ということで、何歳以来のショートヘアなのかとの質問に対して「0歳www」で笑いをとる独特の空気感は蒼井優ならではって感じ。
終始監督を変態呼ばわりするし。
最後に一言求められた時にも「もし失敗しようものならこのような映画がもう上映できなくなりますので、記者の方はこの映画を観たくなるような記事をお願いします。」との注文で答え場内をクスクスの嵐に巻き込んだ。
高いテンションで笑いをとるのではなく、染み出るユーモアでクスクス笑いを取りに来る感じが素敵だったな。

あと、終わり際芸能レポーターに「上戸彩さんが結婚されましたがコメントお願いしまあぁあぁーす!!!」って言われて退場しながら「素晴らしいと思います」って答えてた。
芸能レポーターってこれほど唐突なタイミングで関係ないこと聞いてくるんだなあってことと、そのメンタルの強さに驚いた。

一方の岩井監督は蒼井優の言う通り確かに変態っぽくて、コミュ力のあるできるキモオタって感じだった。
というと失礼っぽいけどむしろ褒め言葉で、マイノリティーっぽい独特の感性を持ちながら人を動かしてその感性を発揮する手腕があるんだから天才肌なんだろうな。
だからこそ一部からはすごく人気のある監督であると同時に「普通に楽しい!」って映画を撮ってくれる人ではなくて、今作ヴァンパイアにしても、過去作にしてもスッキリとしない癖のある作品という印象。

過去の岩井監督作品で観たのは「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」と「花とアリス」、それと今回再上映で観に行った「リリィシュシュのすべて」。
先の2作については既に書いてるので、このあと岩井監督特集として「ヴァンパイア」と「リリィシュシュのすべて」の感想を書きたいと思う。

スタンドバイミー(新旧青春映画の傑作特集)

2012年09月09日 10時05分22秒 | 映画(特集)
妙な名作オーラのせいかとっつきにくくて、気になりつつ未見だった1986年公開のアメリカ映画「スタンドバイミー」。
今回は「桐島、部活やめるってよ」と合わせて“新旧青春映画の傑作特集”としてみようということで観てみた。
さすがは異様なオーラを放ってるだけあって本物の傑作でした。そして久々に号泣した。
DVDで泣くなんて最近ではめったにないし、それもほろりと涙するどころではなくブワァーって泣かされる映画だとは意外だった。

小学校卒業間際の男子4人組が冒険に行く話なんだけど、グッときたポイントは(1)子供の頃のなんでもない思い出の「楽しかったなぁ」感と(2)「いい友達だったけど今は全くの他人だな」感の2つ。

森に死体があるというウワサを聞き、それを見つけて英雄になろうと子供だけで冒険することになるのだがそのアドベンチャーなかなかのワクワクさん。
道中子供同士で将来のことを話し合うところなんかも良くて、その時点でもうホロっと泣いてきていた。
子どもながらに自我が芽生えているというか、自分なりに考えるところがあり経験やら知識を持たないなりに将来を考えてる姿がなぜだか妙に美しかった。

さらにとめどなく涙が出たのは、こんなに仲良しだったのに中学に入ったら学校でたまにすれ違う程度の仲になり、大人になった今では全くの他人になってしまっているというラスト。
他人となってしまった子供時代の友人を回想しつつ、「私はその後彼らほどの友達はできたことがない。誰しもそうなのではないだろうか。」っていう小説を書いて映画は終わるのだが、自分の子供時代の友達の記憶やらと相まってボロンボロン泣いちまったよ。

なんでこの映画がこれほど泣けるのかというのは、その友達にもう会えないからというよりも、今では自分もその友達も全然違う人に変わってしまったってことに気付かされるところなんだと思う。
それは悪いことではなく青春映画っぽい語彙で言えばむしろ“成長した”ということだし、必要なものはちゃんと大人になっても持ち続けてきているはずだけど、思い出の中にある景色やら友達やらその時の自分さえももうどこにもないんだなって不意に気付かされるとやっぱり涙が出てしまう。
そういう意味で心の琴線をガシガシをくすぐってくる名作でした。

今回は“青春映画の傑作”ってことで無理やり並べてみたけど全然毛色の違う作品だったな。
ちなみに午前十時の映画祭の「青春映画万歳!」ってくくりでTOHOシネマみゆき座でやってた「アメリカングラフィティ」も観に行ったけど、あまりにも面白くなくて途中退出しちまった。。。
映画館途中退室なんて初めてかも。
こちらは同じ青春映画でも、車を運転しながら隣の車線で走ってる車の女をナンパしたりするのが自分の青春時代とかけ離れ過ぎてて共感できなかったのであります。
というわけでいくら名作でも好みというか、相性ってものが映画の質とは別にあるということを改めて感じた。
自分にとってビンビンに効いてくる次の名作に期待。

桐島、部活やめるってよ(新旧青春映画の傑作特集)

2012年09月08日 17時01分26秒 | 映画(特集)
映画の日に丸の内ルーブルで観てきました。「桐島、部活やめるってよ」。
自分にとって吉田大八監督といえば、「クヒオ大佐」にしても「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」にしても堺雅人やら満島ひかり、永作博美だとか、ガッツリおれ好みのキャスティングをしておきながら「こんなのいったいどう楽しめば…(°△°)ツマンネェ」っていう駄作を作った許せない人っていう印象だったのですが、結構評判が良さげだったのでおそるおそるトライしてみたところ思ってたのとは全然違った超傑作でした
(ちなみに「クヒオ大佐」と「腑抜けども~」もおれが好きじゃないだけで実はそれなりに評価されているみたい。)

万能型リア充イケメン人気者の「桐島」が学校に来なくなってリア充やらDQNやらスポーツマン達が騒がしくなり、「桐島」みたいなタイプとは元から大した関わりはなかった非リアにも影響が及ぶ話。

主人公の神木隆之介くんは所属する映画部で「キミよ、オレの熱い涙を拭け」の続編を無理やり撮らせようとする顧問に逆らって「生徒会オブザデッド」っていうゾンビ映画を撮り始めるなど結構熱い青春を過ごしているものの周りからはキモがられており、実際結構キモイ。
高校時代は軽音楽部に所属しており、流行の恋の曲でも歌ってればいいものをなぜかヘビメタとかビジュアル系とかあえてキモい曲に走ってしまい決してリア充ではない高校時代を過ごした私にとって、今回の神木君の役は痛いほど感情移入できてしまった。
(普段おとなしい集団がヘビメタやってたらそりゃあ気持ち悪いよなって今改めて思う。)

教室ではキモイ神木くんも映画部では楽しそうにキラキラしてるし、授業中に映画のカット割りを真剣に考えてる姿なんてめっちゃ素敵で、彼なりの青春がとてもまぶしかった。
それなのに周囲からは完全に見下されてるのが切ないし、許せないし!でもそういうもんだよなあって感じ。
この繊細なニュアンスをリアルに描いているあたりがこの映画の本当に優れていると思う。

神木君の親友武文の卑屈さも最高だった。
自分の陰口を言ってる女子たちのことを「俺は使わねーなー、映画監督になってもアイツらはつかわねーなー」と妄想に妄想を重ねた世界の中でささやかな仕返しをしたり、体育のサッカーで居心地の悪い想いをしたあとそのサッカーを楽しんだリア充達に「体育のサッカーで活躍したって何の意味もないよ。こうやって無駄なことに一生時間を費やしていればいいんだフヒヒ」って意味のわからない見下し方をしたりと、生粋の器の小ささを見せつけてくれる。

それ以外では、リア充&DQNグループにいつつその人たちに距離を感じてる実果がすごくよかった。
イケメンと仲良くして女王様やってるクソ女に距離を置きつつ部活で輝ける才能もなく、うまくいかない感じにイライラしている面倒な女。
同じバドミントン部の親友・橋本愛の二の腕を触り「やっぱり良い筋肉してるなー。私と全然違う。ホラ、私のも触ってみてよ」などと過剰なスキンシップをとるシーンではもしやレズ展開くるか?!と期待したけどそんなわけなかった。

あとはその実果ちゃんに好意を持たれ、「オレはがんばってもこの程度なんだよ!」の名言を残した風助と、その風助をバレー部でスパルタ教育する何様だよ系同級生のゴリラ、なんでもできちゃう脱力系イケメン弘樹に、弘樹を好きなストーカー気質の吹奏楽部部長などいろんなひとが出てきて、なんだか学校って面倒なところだよねーって思う。
「スクールカースト」なんていうと大げさでいい加減な表現だとも思うけど、そういったものが実にうまく伝わってくる雰囲気と、いろんな人が混在する学校を舞台に別々の時間を過ごしているっていう見せ方が非常に面白かった。
「ひとつになること」みたいなのが善きこととされるチンケな学園ドラマとは一線を画した傑作でした。
映画を観てから一週間経つけど、いまだに神木君のことが気になって頭から離れない実に余韻の残る作品。

スーパー!(エレン・ペイジ特集)

2012年08月28日 20時16分48秒 | 映画(特集)
「ローラーガールズダイアリー」「ハードキャンディ」とエレンペイジの主演作品の感想を2本続けてアップしましたけども、そもそもおれが彼女を「良い!!!!!!」って思ったのは「スーパー!」という映画がきっかけ。
やたらめったらエレンペイジ主演作品の感想を書いては「スーパー!のときはドウノコウノ!!!」みたいなことばっかり言う割にその「スーパー!」の感想を書いてなかったので思い出せる範囲で書いておく。

主人公フランクは中年のオッサンで日本でいうところの飲食のキッチン担当のフリーターみたいな感じの人なんだけど、美人の奥さんがいる。
その奥さんがドラックの売人をやってる悪いオトコにとられて逆上し、街中の間違った振る舞いをしているやつらを無差別にフルボッコにするといういびつな形の世直しをしていく話。
そんなフランクの連続暴力事件に興味本位でついてきて、フランクを数倍上回った次元でいろいろとヤバイことをする女をエレンペイジが演じる。

この映画は冒頭が本当に素晴らしくて、その勢いで過激な内容を最後まで楽しめるっていうところがあると思う。
これはフランクのこれまでの人生でうまくいったといえるたった二つのエピソードの回想なんだが、ひとつは犯人追跡中のお巡りさんに「あっちに逃げました!」って言ったら感謝されたこと。
もうひとつは美人の奥さんとの結婚式。
つまり、人の役に立ちたいけど特にできることはない、ただ奥さんを愛しているひとなのです。
どちらかと言えば陽の目を見ない生き方をしながら運良く最愛の妻を得ることのできたおれとしてはこのフランクにかなり共感してしまって、その妻を失ったフランクの気持ち思うと冒頭のたった10分そこらで涙目になってしまいました。

また最後も本当に良くて、麻薬野郎から奥さんを救ったもののフランクはクソヤローで、麻薬野郎がいなくなったって結局フラれちまうんですな。。。
それでもフランクは元奥さんが再婚して幸せになっていく過程を涙ながらに見守り、幸せを感じ、元妻の幸せこそが自分の人生の幸せ、冒頭でいうところの「うまくいった出来事」として考えるようになるというなんとも切ないけれど、これほど心に響く話はないというほどのラストなのである。

ただし中盤はそんな繊細なものではなく、フランクの行いは通り魔かテロリストみたいなもの。
そりゃ最後にふられるわな。
世直しという名目で自分のやりたいことをやってるだけなんですから。
とはいえ価値観のズレたヤツの恐ろしさが面白いし、結構笑えて全体としては非常にまとまりのある名作だと思います。
好き嫌いが分かれそうな感じもあるけども。

ということで、これまで観たエレンペイジ出演の5作品を順位付けるとしたら個人的には
スーパー!=インセプション>ジュノ≧ローラーガールズダイアリー>>>>>>>>>>>>ハードキャンディ
って感じでしょうか。
この人は思いっきり主演にするよりも脇役でおいしい役をやる方が光るのではないだろうか。