来月公開されるインド映画の『マッキー』をしたまちコメディ映画祭で一足先に観てきました!
上野公園で開催なのだが、映画館じゃなくて音楽堂っていうオープンな舞台での上映でした。
名前から察するに普段はコンサートとかやるところなのだろうか。
屋根はあるものの、横はオープンだから街中に爆音を響かせまくりだし、逆に静かなシーンでは外から車の音が聞こえてくるような感じで、映画を観る環境としてはかなり特殊でした。
だけど開演前には綺麗なオレンジ色の夕焼けに包まれて、すっかり夜になると秋を感じさせる良い風が吹いて、思っていた以上に気持ちのいいシアターになっていました。
息を吹き込んで膨らませるビニールのクッションが配られるという優しさも嬉しかったです。
ビニールのクッションともうひとつ、クラッカーも配布されました。
インド映画を上映する方式としてに
マサラ上映というものがありまして、静かに鑑賞するのではなく、歌って踊る陽気なインド映画に合わせて観客も一緒に盛り上がろうというものなんですが、実際には映画に合わせて踊れるほど日本人は陽気な民族ではないわけです。
とはいえインド映画の上映中は内なる盛り上がりは最高潮に達するわけで、
紐を引っ張るだけで大きなサウンドと陽気な雰囲気を出すことのできるクラッカーは日本のマサラ上映に必要不可欠なものなのです。
オームシャンティオームが渋谷のアップリンクでマサラ上映されたときもクラッカーが配られましたが、やはりマサラ上映にクラッカーは必需品です。
今作「マッキー」はオームシャンティオームほどダンス&ミュージックにウエイトを置いたお祭り感があるタイプの作品ではないので上映中に立ち上がって一緒に踊るようなことは困難なのですが、クラッカーを鳴らすことぐらいならできる!ということでせっかくのマサラ上映を楽しむのに非常に重宝しました。
(今回は「ライブアクション上映」という名前で呼んでました)
ということで気が付くと映画の内容の話に入る前に長々と書いてしまっているわけですが、
とにかく面白いコメディ映画でした!
「マッキー」というのはあっちの言葉で「ハエ」という意味で、映画の主人公はなんとハエです。
プライドの高いマフィア(?)が惚れた女の子と仲良くしていたために嫉妬されて殺された男がハエに生まれ変わって、そのマフィア風の悪者にコミカルかつ徹底的に復讐する映画です。
まず面白いのが、
ハエの復讐の基本は耳元でブンブンやるだけということです。
最初は「くだらねぇww」って感じなのですが、眠ろうとしてもブンブン、仕事中もブンブン、いつでもどこでもブンブンやられて徐々に徐々にやつれてくるマフィアを見ていると、そのくだらなさに爆笑しつつ「これは辛いだろうな…」と観ている方までダメージを食らいます。
インドも日本も自殺大国なわけですが、こういうストレス系の復讐に効き目のある文化に共通点があるのかも。
サウナマシンに入って両手足をロックされ、ブンブンし放題の無防備な状態になるシーンでは、実際にブンブンする前から会場中からクスクス笑いが起きました。
実際ブンブンされてサウナマシンを飛出し全裸で怒り狂うシーンでのモザイクの感じだったりと、序盤は特に本当に笑わせてもらいました。
後半はそういうジャブを浴び続けて精神的におかしくなったマフィア男が徹底的にハエと戦うのですが、事情を知っている観客としては一見合理的な対策が、映画内の他の登場人物から見ればハエに対する嫌悪感が異常なおかしな行動ばかりで、そういう客観性を取り入れてくるのも面白い。
バトルもどんどんエスカレートしてくから、ハラハラドキドキ的な部分もエキサイティングでした。
もうひとつ面白いのが、
ハエに感情移入させられて、ハエが人間に度を越したイタズラをしたり、人殺しを企んだりするのを応援してしまうというところ。
今回はマサラ上映(ライブアクション上映)なので観客の反応が大きく、盛り上がる点は全体で雰囲気を共有しているわけですが、結構な人数がハエの復讐を応援している空間の非日常な感じが楽しかったです。
「オレたちはなぜハエの人殺しを応援しているのだろうか」という一歩引いた視点の自分もいるのですが、そいつはそいつでハエを応援する自分を観て笑っているという多重構造が起きるもの醍醐味でした。
あとは、インド映画としては短い2時間5分という上映時間もいいですな。
やってる復讐はだんだん結構エグいものになっていくわけですがあくまでコメディなわけで、軽めに楽しめるボリュームであることというのは大切なことです。
ちなみにこの前やっていた「きっとうまくいく」はヒンディー語映画で歴代ナンバーワンのヒット作とのことでしたが、「ロボット」はタミル語でナンバーワン、そしてこの「マッキー」はテルグ語映画でNo.1だそうです。
同じ国の言葉のわけですが、ガッツリ違う言語なんですかね。
「きっとうまくいく」「ロボット」は1位っぽい雰囲気があるけど、「マッキー」の不謹慎な感じのコメディが1位というのもこれまた興味深いですな。
日本はなんとなくコメディがバカにされてるフシがあるので、そこまでメガヒットになるような邦画ってなかなかないと思う。
ただ洋画だと「テッド」がレンタル開始からの初動が「アバター」を超えて記録更新したらしいとかあるから、コメディが今来てるのかもしれないなー。
ということで10月26日から本格公開になりますが、心からイチオシの作品でした。