製作年 2011年
製作国 日本
配給 ビターズ・エンド
上映時間 110分
監督 石井裕也
出演 光石研 森岡龍 吉永淳 西田尚美 田口トモロヲ
50代のオジサンが抱える親子関係の問題や生き様の問題をコミカルに描いた映画。ダンディであることに価値を置いている。
石井裕也監督の前作「川の底からこんにちは」が超面白いし感動しちゃう大傑作だったため、かなり期待して鑑賞。
静かにしていた人が急に態度を変えて熱くなるだとか、うまくいってないひとが卑屈になりながら自分なりに頑張っていくだとか、そして後半になると歌を歌うだとか、前作にも共通する石井イズムを結構感じる作品だった。
それだけに、もちろん普通に楽しめたけどちょっと二番煎じに感じてしまった。
主人公がお父さんってことで自分には気持ちが分かりにくかったからでもあるけど。
だけど石井監督だって20代なわけで、そもそもなんでこういうのを撮ろうと思ったのかが不思議だ。
光石研が演じる「金も地位もないけど、ダンディでいたい」っていう宮田ってオッサンが主人公で、プライドが高く家族や親友に対してかなり偉そうに振る舞ってしまう不器用なキャラクター。
彼が自転車に乗るときに、最後の直線で一着になる競争馬に自分を例えた独り言を毎回言う癖があるんだけど、これはなんとなく共感できて好き。
「宮田、依然として後方、依然として後方。」と、うまくいってないのは今だけで最後にはレースに勝てると信じ込みたいような、ただ深くは考えず実況っぽいことを言ってるだけなのか、とにかく延々と競馬の妄想をしながら独り言を言い、しかも金がないから競馬はやらないっていう堅実な性格があとからわかるっていうどうでもいいような部分にめいいっぱい意味を込めた表現にも石井イズムを感じる。
「金のことなら心配するな。父さんお金はいっぱい持ってるから」って言うけど嘘はバレバレで、子供たちからはいくら頑張っても安月給の可哀想なひとだからあんまり頼っちゃだめだと思われている悲しすぎる父ちゃん。
子供たちが立派な大人になれるのかを心配しているけど、実は親に迷惑をかけないようにバイトでお金を貯めたり本当は感謝の気持ちを持っていたりと既に結構立派なしっかりした兄妹で、居酒屋でわめいたり親友や家族に対してや職場でまともに振る舞えない安月給の父からするとうまく育ったじゃないかという対比。
この映画はお父さん世代の人が観て自分と自分の子供のことを考えさせられて「こんなおれだけど、考えてみればうちの子もまともに育ったもんだなあ」と感慨にふけるにはいいのかもしれないが、息子世代が見ると正直鬱陶しい。
「こんな時代にオジサンやってるんだから大変で当然なんだよ!」っていうセリフが前作の「中の下なんだから頑張んなきゃしょうがないでしょ!」ってセリフに当たり、共感できれば面白いんだろうが世代のせいなのか見せ方のせいなのかこれがあんまり響かなかった。
もちろんこれは自分の非を認められなかったりちょっとずれた怒り方をしてしまうキャラクターのセリフではあるんだけど、観ている方の共感を誘っているのは明らかで、大変なのは時代のせいでも年齢のせいでもなく自分のせいじゃないの?って思ってしまうと全然乗れない。
そういうわけで、親子関係と不器用なオッサンの価値観といった作品の根幹部分があまり受け入れられなかったのが残念だった。
だけど楽しめるシーンも多くて、夢の中で子供二人と楽しく遊んだあと家に帰ってくる場面で
「最後に一言言わせてくれ…。いや歌います。」
って踊り始めるという「川の底からこんにちは」のしじみ工場の社歌のシーンで味をしめた得意の演出が始まるんだが、これがなかなか良い。
息子の踊りがさりげなくキレてて、そこまでの無愛想な振る舞いとのギャップのせいかなんか笑える。
引っ越しを手伝うシーンで親友の真田に運転に気を付けるよう注意され、「おれは運転のプロだぞ!」と怒って出発した直後に事故ったトラックが映るのもベタだけどよくやったと思う。
それと前作で満島ひかりがダラダラと飲んでしまう缶ビールの銘柄がピッタリで良かったんだが、ビールのチョイスに関しては今回もバッチリだった。
行きつけの呑み屋で出てくるのが生じゃなくてキリンラガービールの瓶で、ガンコオヤジが好きそうなブランドとしてちょうどいいし、中学から親友のオッサン同士が酌み交わすにはやっぱり生より瓶の方が雰囲気出るね。
けど店の雰囲気からしてもまぁそりゃあキリンラガーだなって感じで当たり前なんだが、すごいのは缶ビール。
宅飲みのシーンで宮田はサッポロドラフトワン、真田はクリアアサヒと別の銘柄を大量に飲みテーブルが空き缶だらけになっているという場面があったんだけども、このチョイスが個人的には大好き。
あくまでおれの印象だけど、ドラフトワンは第三のビールの中でも値段が最も安い部類で、ついスイスイと飲み過ぎてしまう薄口仕様。
そしてここ数年サッポロビールが力を入れて売り出している麦とホップではなく昔から細々と売れ続けている二番手の商品であり、地味なんだけど実は第三のビール第一号という当時は革命的であったであろう伝説の商品。
かつてスゴイやつだったのに最近ではちょっとマイナーになっちまった感といい、一口の満足感よりもがぶがぶとのどごしを楽しむタイプであることといい本当に宮田が好みそうなブランドで感心した。
一方の真田はというと、のどごし生、金麦に次いで売り上げトップ3のクリアアサヒを選ぶ。
最近大プッシュされて伸びてきた歴史の浅い商品で、CMとかパッケージを見ると割と若向けな印象。
介護からの解放で自由になりちょっと背伸びしてこじゃれた帽子をかぶり出してしまったキャラクターである真田が、のどごし・金麦のようなビッグブランドとは違うが若向けでナウい売れ筋のクリアアサヒを選ぶというのはめちゃくちゃピッタリだと思う。
前回は淡麗しか出てこなかったから大人の事情で選んだのがうまくハマっただけかなと思ったけど、ここまでくるとそれは考えられない!
ということでなぜかビールの話で長くなってしまいましたが、大筋で共感できなかったにも関わらずそれなりに楽しめる作品でした。
製作国 日本
配給 ビターズ・エンド
上映時間 110分
監督 石井裕也
出演 光石研 森岡龍 吉永淳 西田尚美 田口トモロヲ
50代のオジサンが抱える親子関係の問題や生き様の問題をコミカルに描いた映画。ダンディであることに価値を置いている。
石井裕也監督の前作「川の底からこんにちは」が超面白いし感動しちゃう大傑作だったため、かなり期待して鑑賞。
静かにしていた人が急に態度を変えて熱くなるだとか、うまくいってないひとが卑屈になりながら自分なりに頑張っていくだとか、そして後半になると歌を歌うだとか、前作にも共通する石井イズムを結構感じる作品だった。
それだけに、もちろん普通に楽しめたけどちょっと二番煎じに感じてしまった。
主人公がお父さんってことで自分には気持ちが分かりにくかったからでもあるけど。
だけど石井監督だって20代なわけで、そもそもなんでこういうのを撮ろうと思ったのかが不思議だ。
光石研が演じる「金も地位もないけど、ダンディでいたい」っていう宮田ってオッサンが主人公で、プライドが高く家族や親友に対してかなり偉そうに振る舞ってしまう不器用なキャラクター。
彼が自転車に乗るときに、最後の直線で一着になる競争馬に自分を例えた独り言を毎回言う癖があるんだけど、これはなんとなく共感できて好き。
「宮田、依然として後方、依然として後方。」と、うまくいってないのは今だけで最後にはレースに勝てると信じ込みたいような、ただ深くは考えず実況っぽいことを言ってるだけなのか、とにかく延々と競馬の妄想をしながら独り言を言い、しかも金がないから競馬はやらないっていう堅実な性格があとからわかるっていうどうでもいいような部分にめいいっぱい意味を込めた表現にも石井イズムを感じる。
「金のことなら心配するな。父さんお金はいっぱい持ってるから」って言うけど嘘はバレバレで、子供たちからはいくら頑張っても安月給の可哀想なひとだからあんまり頼っちゃだめだと思われている悲しすぎる父ちゃん。
子供たちが立派な大人になれるのかを心配しているけど、実は親に迷惑をかけないようにバイトでお金を貯めたり本当は感謝の気持ちを持っていたりと既に結構立派なしっかりした兄妹で、居酒屋でわめいたり親友や家族に対してや職場でまともに振る舞えない安月給の父からするとうまく育ったじゃないかという対比。
この映画はお父さん世代の人が観て自分と自分の子供のことを考えさせられて「こんなおれだけど、考えてみればうちの子もまともに育ったもんだなあ」と感慨にふけるにはいいのかもしれないが、息子世代が見ると正直鬱陶しい。
「こんな時代にオジサンやってるんだから大変で当然なんだよ!」っていうセリフが前作の「中の下なんだから頑張んなきゃしょうがないでしょ!」ってセリフに当たり、共感できれば面白いんだろうが世代のせいなのか見せ方のせいなのかこれがあんまり響かなかった。
もちろんこれは自分の非を認められなかったりちょっとずれた怒り方をしてしまうキャラクターのセリフではあるんだけど、観ている方の共感を誘っているのは明らかで、大変なのは時代のせいでも年齢のせいでもなく自分のせいじゃないの?って思ってしまうと全然乗れない。
そういうわけで、親子関係と不器用なオッサンの価値観といった作品の根幹部分があまり受け入れられなかったのが残念だった。
だけど楽しめるシーンも多くて、夢の中で子供二人と楽しく遊んだあと家に帰ってくる場面で
「最後に一言言わせてくれ…。いや歌います。」
って踊り始めるという「川の底からこんにちは」のしじみ工場の社歌のシーンで味をしめた得意の演出が始まるんだが、これがなかなか良い。
息子の踊りがさりげなくキレてて、そこまでの無愛想な振る舞いとのギャップのせいかなんか笑える。
引っ越しを手伝うシーンで親友の真田に運転に気を付けるよう注意され、「おれは運転のプロだぞ!」と怒って出発した直後に事故ったトラックが映るのもベタだけどよくやったと思う。
それと前作で満島ひかりがダラダラと飲んでしまう缶ビールの銘柄がピッタリで良かったんだが、ビールのチョイスに関しては今回もバッチリだった。
行きつけの呑み屋で出てくるのが生じゃなくてキリンラガービールの瓶で、ガンコオヤジが好きそうなブランドとしてちょうどいいし、中学から親友のオッサン同士が酌み交わすにはやっぱり生より瓶の方が雰囲気出るね。
けど店の雰囲気からしてもまぁそりゃあキリンラガーだなって感じで当たり前なんだが、すごいのは缶ビール。
宅飲みのシーンで宮田はサッポロドラフトワン、真田はクリアアサヒと別の銘柄を大量に飲みテーブルが空き缶だらけになっているという場面があったんだけども、このチョイスが個人的には大好き。
あくまでおれの印象だけど、ドラフトワンは第三のビールの中でも値段が最も安い部類で、ついスイスイと飲み過ぎてしまう薄口仕様。
そしてここ数年サッポロビールが力を入れて売り出している麦とホップではなく昔から細々と売れ続けている二番手の商品であり、地味なんだけど実は第三のビール第一号という当時は革命的であったであろう伝説の商品。
かつてスゴイやつだったのに最近ではちょっとマイナーになっちまった感といい、一口の満足感よりもがぶがぶとのどごしを楽しむタイプであることといい本当に宮田が好みそうなブランドで感心した。
一方の真田はというと、のどごし生、金麦に次いで売り上げトップ3のクリアアサヒを選ぶ。
最近大プッシュされて伸びてきた歴史の浅い商品で、CMとかパッケージを見ると割と若向けな印象。
介護からの解放で自由になりちょっと背伸びしてこじゃれた帽子をかぶり出してしまったキャラクターである真田が、のどごし・金麦のようなビッグブランドとは違うが若向けでナウい売れ筋のクリアアサヒを選ぶというのはめちゃくちゃピッタリだと思う。
前回は淡麗しか出てこなかったから大人の事情で選んだのがうまくハマっただけかなと思ったけど、ここまでくるとそれは考えられない!
ということでなぜかビールの話で長くなってしまいましたが、大筋で共感できなかったにも関わらずそれなりに楽しめる作品でした。