老化研究の栞

最新の老化研究でわかってきたことをわかりやすく解説し、老化を防止するための方法を考えるヒントを与えられるようなブログ

加齢に伴う認知症の発症を予防するためのポイント(1)

2009-01-11 15:04:11 | Weblog
 前回は「老化に伴うタンパク質の酸化」の話しをしましたが、今回は「脳の老化と認知症の関係」について、これまでの研究の中でわかってきたことを、話してみたいと思います。

 若くして発症する家族性のアルツハイマー病では、生まれつき遺伝子に原因があることがわかっており、このような場合には発症の予防はとても困難なのですが、高齢者に多く発症するアルツハイマー型老年期認知症(Senile Dementia of Alzheimer's Type)の大部分は、生理的な脳の老化が主な原因である、発症の予防も不可能ではないと考えられています。(両者は症状は似ていますが、分けて考える必要があります)

 老化の原因については、前回述べたように、タンパク質の酸化が考えられていますが、この他にも遺伝子の本体であるDNAの酸化や細胞膜を構成する脂質の過酸化なども関わっているものと考えられています。

 従って、根本的に脳の老化を遅らせるためには、脳の中で発生する活性酸素の量をできるだけ少なくするすることが重要です。

 全身的には、摂取するカロリーを減らす(食事をコントロールする)ことが寿命の延長に効果的であることが動物実験で明らかになっていますが、人間ではまだ十分な検証が済んでおりませんので、現状では「カロリーは取り過ぎないように注意する」という言い方が正しいと思います。(極端にカロリー制限をし過ぎると、必要な栄養素まで十分に採れなくなることによって、逆に寿命を縮める恐れがあります。何事もほどほどが大事です)

 活性酸素の影響を抑えるという意味では、十分な量のビタミンCやビタミンEを摂取することも、ある程度効果が期待されますが、これも、「活性酸素を除去するために必要最小限の量」があれば十分なわけで、それ以上に多量に摂取しても寿命を延長する効果はありません。(一部のサプリメントには効果があるように書いているものもありますが、いっさい証明はされておりません)

 老化に伴う変化の中には、分子や細胞のレベルで不可逆的な変化(後戻りできない変化)と、可逆的な変化(生活習慣や生活環境によって、ある程度改善できる変化)があります。

 病気としてのアルツハイマー型の老年期認知症は基本的に不可逆的な変化によるもので、一旦発症すると完治は不可能です。
 それに対し、50代の後半辺りから徐々に増えてくる「軽い認知機能の衰え(Mild Cognitive Impairement)」は。可逆的な変化と不可逆的な変化が平行して進行しているものと考えられています。従って、何も対策を講じないと、次第に不可逆的な変化が進行して、最終的にアルツハイマー型の老年期認知症に移行することになるものと見られていますが、脳の神経細胞にはある程度の「復元力」がありますので、それを活性化することによって、「可逆的な変化による認知機能の衰え」の部分については進行を遅らせたり、症状を改善することも可能であると考えられています。

 それでは、実際にはどうすればよいのでしょうか。

 そのヒントになる記事が、朝日新聞2009年1月11日(日曜朝刊)に載った「東京都老人総合研究所と世田谷区共同研究」の報告として紹介されています。
 それによると、「軽い認知機能の衰えがある「認知症予備群」の高齢者でも知的な趣味と運動を定期的に長く続けると、記憶力や注意力などを改善することができる」ということです。
 これは、逆に言うと、定年退職などで急に脳を使うことが少なくなると認知症が発症しやすくなることを示唆しています。

 要するに、年を取っても色々なことに興味を失わず、知的な活動を続けることが重要であり、家族の側からは、高齢であるからと言ってあまり年寄扱いすることはせず、サークル活動などで頻繁に外出をするなど活発な老後生活が送れるよう、協力をしてあげることが、認知症の予防にはとても重要です。

(関連記事リンク:東京都老人総合研究所トピックス『どうすれば防げるか、痴呆(痴呆介入研究グループ 矢冨直美)』


 


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