老化研究の栞

最新の老化研究でわかってきたことをわかりやすく解説し、老化を防止するための方法を考えるヒントを与えられるようなブログ

糖尿病は老化を促進する?

2009-02-15 21:51:25 | Weblog
活性酸素が老化を促進し、老年病を引き起こす原因物質の一つであることは疑う余地もありませんが、その他にも老化や老年病の発症を早めている可能性の高い身体要因はたくさんあります。
高血糖もその一つです。

糖尿病になり、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高い状態が続くと、体内の様々なタンパク質に糖が結合し、異常なタンパク質(糖化タンパク質)がつくられます。

糖尿病患者では、赤血球の中で酸素を運ぶ役割を果たしているヘモグロビンが糖化されていることが知られていますが、これはヘモグロビンA1cとして糖尿病の検査にも用いられています。実際には、他にも様々なタンパク質が糖化します。
例えば、目のレンズのクリスタリンというタンパク質が糖化を起こすと白い濁りを形成し、糖尿病性の白内障を引き起こします。

タンパク質の糖化と脳の老化の関係についてはまだよくわかっていませんが、2009年2月14日の朝日新聞夕刊で紹介された、『50歳以上の糖尿病患者では、半数以上でアルツハイマー病の初期状態が見られた』とする広島大名誉教授鬼頭昭三博士らの研究結果は、糖化タンパク質が脳の神経細胞を障害している可能性を示唆しており、大変興味深い知見です。

いずれにせよ、歳をとっても認知症になりたくないと思っている人は、糖尿病のもとになるメタボリックシンドロームにならないように、まずは日ごろの食生活や運動不足に注意を払うことが大切です。

この他にも糖尿病は、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高めていることがわかっています。この辺のことは「日野原先生の健康ダイヤル アンチ・エイジング」に詳しく紹介されていますので、そちらをご覧下さい。


活性酸素って何?

2009-02-11 12:11:37 | Weblog
活性酸素って何?

前回、『脳の老化を遅らせるには、脳の中で発生する活性酸素の量をできるだけ少なくすることが重要である』と書きましたが、今回は、『そもそも活性酸素とは何か』、『どうしたら活性酸素の量を減らすことができるのか』、『どのくらい減らしたら老化は防げるのか』といったことについて触れてみたいと思います。

酸素は私たちが生きていく上でなくてはならない物質ですが、『活性』酸素になると、どうして病気や老化を引き起こす原因物質になってしまうのでしょうか。

以前このブログ(2007年5月)でも書きましたが、そもそも酸素は、私たちの体の中でブドウ糖などを水と二酸化炭素に『酸化』する過程で『ATPという生体エネルギー』を生み出しており、その酸化作用こそが酸素の働きなのですが、さらに『活性化』された形に変化すると、体にとって大事なタンパク質や遺伝子まで酸化する性質を持ってしまい、細胞に『ダメージ』を与えてしまいます。(それような変化が積もりつもって病気や老化が引き起こされてくるのです)

ちょっと専門的な話しになりますが、『酸化とは酸素と結びつく化学反応』であると共に、実は『分子から電子を奪う反応』でもあるのです。
上の図は、通常の酸素分子(O2)と代表的な活性酸素の一つである『スーパーオキシドラジカル』の化学構造を示しています。
実は『活性酸素』は一種類の物質ではなく、同じような性質を持った一群の仲間(活性酸素種)のことをいいますが、その共通の性質とは、『他の分子から電子を奪う性質が強い』ことです。
上の図を見ておわかりのように、酸素分子の場合には、それぞれの酸素原子は8個(2個X4対)の電子に囲まれていて『安定化』されています(安定化とは、分子にとって落ち着きがいい状態になること)。
これに対しスーパーオキシドラジカルには1個電子が足りませんので、常にまわりの分子から電子を奪い取ってやろうと狙っています。これが『活性』酸素が悪者たるゆえんであり、細胞に『ダメージ』を与える原因になっているのです。

実は、活性酸素は、都合の悪いことばかりでなく、我々が生きて行く上で重要な役割も果たしてくれているのですが、話しが長くなりますので、続きはまたあらためて・・・・。
(活性酸素やフリーラジカルについてもっと詳しいことを知りたい方は、老人研News No.212をご覧下さい。)