傘

　傘を盗られた。それも、がらがらに空いた電車内で。

　ショルダーバッグの中を整理するために、自分が座っていた座席の脇に立て掛けた、ほんの三〇秒ほどの間の出来事、だった。思えばその時、視界の端に蠢いていた影が一つ……。

　大雨やビル風に強いという、二四本骨のまっ赤な和傘だった。お気に入り、だったのに。ううーん！　悔しいぞ、ぷんぷん！

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owl：つかささん、ご機嫌斜めですな。

yukari：ななめ、とおりこして、よこだおし、です、よ。

owl：何かあったのですか？

yukari：♫かさを　とられて　どんじやらほい♫、だつて。

owl：工ｴｴｪｪ(´д｀)ｪｪｴｴ工、、、またですか！　四本目のビニル傘の後、しばらくなかったのに。

yukari：おきにいり、の、あかい、かさを、やられた、そうです。

owl：あっちゃー、……もしや、『アレ』になって居られないでしょうな。

yukari：わらいながら、おこつて、いたので、まだ、だいじようぶ、でしよう。

tsukasa：（部屋の隅っこで膝を抱えて）♪赤い傘ー、盗ーられたー、つーかーさーさーんー♪ビーニル傘、コーンビーニーで、買ーちゃーたー♪……ふっ、ふっふっふっ。

written

2020/03/08