ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

五度で遊ぶ

2007-02-10 12:39:56 | ギター
 指板を絵として捉えて遊ぶ。一方でドミソの練習は続けること――あれは本当に役に立つから。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+7+
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+3+-+-+
+-+-+-+-+-+-+6+-+-+-+-+-+
+-+-+-+-+9+-+-+-+-+-+-+-+
+-+-+5+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
+R+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

 ルートはとりあえずG――とすると、第六から第二絃まではぜんぶポジションマークの位置となる。音の幅はぜんぶ五度。数学的でしょう。「音楽と数学はそっくりだ」とはジャコ・パストリアスの言葉である。
 もしこれを押さえられたなら、Gmaj7に6thと9thの響きを加えたコード――要するにメジャーコードに、洒落た装飾が付いた響きとなる。押さえられたらね。常人の手では、人差指、中指、小指で、一度に三音が限度だろう。
 この図は僕のアイデアではない。デイヴ・グレゴリィがXTC時代、巧みにコードチェンジしながらこの音形で跳びまわっているのを聴き、舌を巻いた。そこまでの曲芸は出来なくとも、例えばポリスの名曲〈孤独のメッセージ〉のバッキングは、基本的にこの形のR+5+9の連続だ。三度の音が無いからギターだけではメジャーかマイナーかも分からない。それが独特のクールな印象を生んでいる。

 グレゴリィは、絃でいうと六五四・五四三・四三二・三二一の順で弾き、さらに高音まで駆け上がっていた――とてもスピーディに。一つのコードでなら自分にも可能かなと思うが、この音形で一小節ごとコードチェンジしていくのはアクロバットだ。練習の鬼なんだろう。
 マーティン・ニューウェルのバンドの一員として来日したグレゴリィを見たことがあるが、いやはや物凄い人であった。じゃきーんとギターを弾いて、音をフィードバックで保ちながら、右手でシンセサイザーを弾く。
 鳴り止まぬアンコールに、曲を用意していなかったバンドは〈ジギー・スターダスト〉を演りはじめたが、途中で訳が分からなくなって中断。代わりにグレゴリィが中心になり〈デイ・トリッパー〉を演った。じつに楽しそうで、羨ましかった。

 第二絃の長三度を半音下げて短三度にすれば、マイナーコードにも応用できる。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+7+
+-+-+-+-+-+-+-+-+3+-+-+-+
+-+-+-+-+-+-+6+-+-+-+-+-+
+-+-+-+-+9+-+-+-+-+-+-+-+
+-+-+5+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
+R+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

 いっそ一絃の七度も半音下げて、メジャー7thではなく普通の7thにしてしまいたい衝動にかられる(形が綺麗だから)が、すると六度と半音でぶつかってしまう。ここは冷静に幅を保ちましょう。

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