公募へのエントリーに言及して以降、連日、着実な御投票を賜っている。バンド一同、心から感謝しています。
上位の方々の得票数が半端ではないので順位がなかなか動かないのだが、たちまち地下に追いやられるでもなく、ある程度の位置に食い下がれているというのは、最初の篩い分けは生き残ったという事だと、少なくとも小説の経験からは思う。
なによりエントリーにまつわる作業と思索が、凄まじく勉強になっている。自分の創る舞台や音像への意識が、生業たる小説と同等にシビアになってきた。もはや音楽は、楽しい趣味ではない。しかし悩むことが最大の趣味である僕には、この精神状態が最も楽であったりもする。
ただ「なんとなく好き」だったCDの聴き方が、分析的になる。このミックスはどの帯域を強調して迫力を出そうとしている、等と考えはじめ、するとそこばかりが耳につくようになる。
新しいヘッドフォンを買った。同じソニーだが、使い古しとはとうぜん音が違う。その差異から、世間一般のリスニング環境の幅が類推できる。本当はできていないのだが、疑似的な確信が生じる。幾多の問題をクリアできそうな音像が、頭の中に響きはじめる。現状での理想。
冴えない現実を、懸命にそれに寄せていく泥臭い努力こそ、創造であると僕は考える。この信条は死ぬまで変わるまい。
立派な結論を述べられるような話題ではないので、本日は自由連想式に、逸れていくに任せる。
ヘッドフォンはサウンドハウスという通販業者から買った。ついでにBEHRINGERの安い機材も注文しておいたら、全部がまとめて届いた。
一つはTO800というストンプボックス――ギター用のオーヴァドライヴ。アイバニーズのTS808を愛用している事は何度も書いてきたが、緑色の筐体も品番も似ているし、なにより二千円台と安く、以前から気になっていた。
家の小さなアンプでだが、TS808と並べて試奏してみた。アンプを多少歪ませて、そこにLEVELを思い切り上げた信号を送り込む、オーヴァドライヴの典型的な使用法。
結論。そんなに変わらない。ライヴハウスで眼を閉じて弾いたら、きっとどちらか分からない。(本来、アイバニーズとはブランド違いに過ぎない)マクソンとの差異の方が大きいかもしれない。厳密に云えばハイポジションの音が少々違う。TS808のほうが鼻詰まりと云うか、太った猫が唸っているようなニュアンスがある。僕が好むこの音色を、嫌いだという人もいるだろうから、だとしたら大変お買い得である。
いずれライヴハウスのリハーサルでも試して、結果を報告したい。
もう一つはHB01。HELL-BABEという、無神経な感じの愛称が付いた、多機能ワウペダル。
こいつの出来には驚いた。ヴォクスやそれ系の高級ペダルより、僕はこちらを推す。これが三万円台の商品だったら、みな有り難がって絶賛するのだろう。実際には三千円台(サウンドハウス)である。
踏むと内部でLEDが点灯し、それをセンサーが検知してスイッチが入るという、光学式。同方式ではMORLEYというメイカーが有名だが、残念乍ら僕はそちらを弾いた(踏んだ)経験が無い。筐体が物々しいので、欲しいと思った事も。
地獄のベイブね――と強く印象に残っていたのは、ウェブ上でもプラスチックと分かる、軽々しさ故だ。ワウペダルは大概、石のように重い。舞台での安定感を求めての一つの結論なんだろうが、この点が、僕のような電車移動ギタリストには苦痛でならない。
ヘル・ベイブはやたら軽い、という記述を見た事もあったので、だったら音質や機能に目を瞑ってでも――という心算だった。ところがいざ届いてみたら、意外な重量感。プラスチック乍ら、体感としてはクライベイビィの七割程度。やや落胆した。
どこが重いのかと調べてみたら、なんと裏蓋。重たい金属を使って、ことさら重量を増してある。軽すぎるとクレームでもあって、仕様変更されたのだろうか?
全体のデザインはクライベイビィにそっくり。そこに「これでもか」と機能が盛り込んである。
筆頭は、前述の光学式スウィッチ。通常のワウの「強く踏み込むとオンになる」システムは、スウィッチの入れ損ない、切り損ない、思いがけないオフ、が多発する。その完璧な解決。ペダルには撥条が仕込んであって、足を離せば自動的にオフになる。
しかしこの仕様を知った瞬間の、「足を乗せた瞬間にオン」という僕のイメージは、残念乍ら裏切られた。多少遊びがあったのち、体感的には四分の一くらい踏み込んだところで、やっとオンになる。僕には些か不快で、ちょっとした改造を施した。後述する。
撥条の強さも調整できるようだが、初期設定で問題なかったし、どうやら長い六角レンチが必要そうなのでまだ試していない。
踏み戻すたびオフになるかと思いきや、裏側にTIMER ADJという半固定のネジ穴があり、オフになる迄のタイムラグを設定できる。つまり完全に踏み戻してしまっても、任意のあいだ効果が持続するので、その間にまた踏み込めばワウワウ領域に留まることができる。このタイムラグをフレーズの癖に合わせて設定すれば、ソロ中の「一音にだけ」ワウを掛けるといった曲芸も可能。
ユーザーレビュウでこのペダルを悪し様に語っている人々は、こうした設定を使いこなしていないか、そもそも気付いていないのではなかろうか。
RANGEのツマミで、ワウワウ領域の高低を設定できる。このツマミは大きいしクリックが付いているので、ライヴ中にも変えられる。
足先でオン/オフできるブースターが付いている。説明書きには、効くのは「ワウがオンの時」とあるが、オフの時も影響するようだ。今のところオフで充分と感じているが、ライヴ中にはついスイッチを入れてしまうかも。もちろんブースト量も設定できる。
Q及びFINEというツマミで、いちばん踏み込んだ時のフィルターカーヴや周波数帯域を調整できる。要するにワウワウ領域専用のパラメトリック・イコライザー。
アウトプットが二つある。一つはワウの効かないドライ。地味なおまけだが、こういうのは意外と便利なのだ。即ちヘル・ベイブを持参していれば、ライヴハウスのアンプを二台同時に使う事ができる。ドライの方に別のワウを挟んで、左右のアンプで別々のワウ、という夢のような事も可能。立って演れたら、君は神と呼ばれるだろう。
これだけ天こ盛で三千円台。音色も、バイパス時の音質も、僕の使い方に於いては文句の付けようが無い。これ程の名機が雑誌のワウ特集でレビューされないのは、価格差が激しすぎて「他はなんなの?」となるからだろう。
光学式スウィッチ部の改造について。
四本のネジを抜いて裏蓋を外し、電池の入った、且つインプットジャックにケーブルを挿し込んだ状態で、ペダルを動かすと、どこいらでどのパーツが光り、どのセンサーがそれを捉え――といった仕組みが理解できると思う。発光体とセンサーは同じ基盤上に貼り付けられており、基盤は二本のネジで筐体に留まっている。この基盤を浮かせて固定することにより、ペダルの踏み込み開始からワウ領域までの、物理的距離を調整できる。
僕はガムテープで厚みを調整したワッシャーを、基盤の下に咬ませた。快適な使用感となった。
云っておくけれど僕は、この種のペダルを極めて繊細に踏むタイプである。例えばワウを、ちゃうわうと前後限界まで踏む事は滅多にない。体重は完全に反対の脚に預け、足先で絵を描くくらいの細かさでもって、フレーズに合わせて動かすのが基本だ。そうではない人が多いから、このヘル・ベイブは遊びを大きく設け、「いや、まだオンじゃなくて」を避けてあるのだろう。
だから「うおりゃワウ」と飛び込むように踏んでしまう人に、この改造は勧められない。上述のTIMER ADJの設定で充分。
かといって「よって改造は自己責任で」なんてケチな事も云わないよ。もし改造に失敗して「津原のせいで損した」と思われたら、メールをください。購入価格相応の、サイン入り書籍と交換してあげます。予備も欲しいから。
更に話題は流転する。
以前、ユニヴァイブに言及したら、ラッコ☆戦士のkikuさんが、「これ使ってください」とダンロップのROTOViBEを貸してくださった。うねりの速度をコントロールできるコーラス/ヴィブラート・ペダル。ありがとう。優しい方が世の中には居るものだ。
kikuさんは「びっくりするくらいセコいですよ」と謙遜なさっていたが、なんの、ラヂデパのリハーサルで使ってみて、夢かと思った。我々が演奏するRCの〈よそ者〉や、一方〈亀と象と私〉といったファンキーな曲には、もはや不可欠な機材と化している。
僕のギターではフロント・ピックアップの方が掛かりが良いようだ。効果の特性上、リアだと低音が薄まり易い。kikuさん仰有る「セコい」はこの事かな? しかし無意味なくらい頻繁にピックアップを切り替える僕には、なんの問題も無い。
それに繰り返しになるけれど、本当、僕はペダルを「なにが悲しいの?」というくらい、ちまちまと操作する。この操作法において、ロトヴァイブは無敵のエフェクターと思える。ワウかロト、と選択を迫られたなら、即座にロト。そのくらい。
これまた重いんだけど、可愛いロトの重さと思えば、絶対に我慢できる。そのくらい。
上位の方々の得票数が半端ではないので順位がなかなか動かないのだが、たちまち地下に追いやられるでもなく、ある程度の位置に食い下がれているというのは、最初の篩い分けは生き残ったという事だと、少なくとも小説の経験からは思う。
なによりエントリーにまつわる作業と思索が、凄まじく勉強になっている。自分の創る舞台や音像への意識が、生業たる小説と同等にシビアになってきた。もはや音楽は、楽しい趣味ではない。しかし悩むことが最大の趣味である僕には、この精神状態が最も楽であったりもする。
ただ「なんとなく好き」だったCDの聴き方が、分析的になる。このミックスはどの帯域を強調して迫力を出そうとしている、等と考えはじめ、するとそこばかりが耳につくようになる。
新しいヘッドフォンを買った。同じソニーだが、使い古しとはとうぜん音が違う。その差異から、世間一般のリスニング環境の幅が類推できる。本当はできていないのだが、疑似的な確信が生じる。幾多の問題をクリアできそうな音像が、頭の中に響きはじめる。現状での理想。
冴えない現実を、懸命にそれに寄せていく泥臭い努力こそ、創造であると僕は考える。この信条は死ぬまで変わるまい。
立派な結論を述べられるような話題ではないので、本日は自由連想式に、逸れていくに任せる。
ヘッドフォンはサウンドハウスという通販業者から買った。ついでにBEHRINGERの安い機材も注文しておいたら、全部がまとめて届いた。
一つはTO800というストンプボックス――ギター用のオーヴァドライヴ。アイバニーズのTS808を愛用している事は何度も書いてきたが、緑色の筐体も品番も似ているし、なにより二千円台と安く、以前から気になっていた。
家の小さなアンプでだが、TS808と並べて試奏してみた。アンプを多少歪ませて、そこにLEVELを思い切り上げた信号を送り込む、オーヴァドライヴの典型的な使用法。
結論。そんなに変わらない。ライヴハウスで眼を閉じて弾いたら、きっとどちらか分からない。(本来、アイバニーズとはブランド違いに過ぎない)マクソンとの差異の方が大きいかもしれない。厳密に云えばハイポジションの音が少々違う。TS808のほうが鼻詰まりと云うか、太った猫が唸っているようなニュアンスがある。僕が好むこの音色を、嫌いだという人もいるだろうから、だとしたら大変お買い得である。
いずれライヴハウスのリハーサルでも試して、結果を報告したい。
もう一つはHB01。HELL-BABEという、無神経な感じの愛称が付いた、多機能ワウペダル。
こいつの出来には驚いた。ヴォクスやそれ系の高級ペダルより、僕はこちらを推す。これが三万円台の商品だったら、みな有り難がって絶賛するのだろう。実際には三千円台(サウンドハウス)である。
踏むと内部でLEDが点灯し、それをセンサーが検知してスイッチが入るという、光学式。同方式ではMORLEYというメイカーが有名だが、残念乍ら僕はそちらを弾いた(踏んだ)経験が無い。筐体が物々しいので、欲しいと思った事も。
地獄のベイブね――と強く印象に残っていたのは、ウェブ上でもプラスチックと分かる、軽々しさ故だ。ワウペダルは大概、石のように重い。舞台での安定感を求めての一つの結論なんだろうが、この点が、僕のような電車移動ギタリストには苦痛でならない。
ヘル・ベイブはやたら軽い、という記述を見た事もあったので、だったら音質や機能に目を瞑ってでも――という心算だった。ところがいざ届いてみたら、意外な重量感。プラスチック乍ら、体感としてはクライベイビィの七割程度。やや落胆した。
どこが重いのかと調べてみたら、なんと裏蓋。重たい金属を使って、ことさら重量を増してある。軽すぎるとクレームでもあって、仕様変更されたのだろうか?
全体のデザインはクライベイビィにそっくり。そこに「これでもか」と機能が盛り込んである。
筆頭は、前述の光学式スウィッチ。通常のワウの「強く踏み込むとオンになる」システムは、スウィッチの入れ損ない、切り損ない、思いがけないオフ、が多発する。その完璧な解決。ペダルには撥条が仕込んであって、足を離せば自動的にオフになる。
しかしこの仕様を知った瞬間の、「足を乗せた瞬間にオン」という僕のイメージは、残念乍ら裏切られた。多少遊びがあったのち、体感的には四分の一くらい踏み込んだところで、やっとオンになる。僕には些か不快で、ちょっとした改造を施した。後述する。
撥条の強さも調整できるようだが、初期設定で問題なかったし、どうやら長い六角レンチが必要そうなのでまだ試していない。
踏み戻すたびオフになるかと思いきや、裏側にTIMER ADJという半固定のネジ穴があり、オフになる迄のタイムラグを設定できる。つまり完全に踏み戻してしまっても、任意のあいだ効果が持続するので、その間にまた踏み込めばワウワウ領域に留まることができる。このタイムラグをフレーズの癖に合わせて設定すれば、ソロ中の「一音にだけ」ワウを掛けるといった曲芸も可能。
ユーザーレビュウでこのペダルを悪し様に語っている人々は、こうした設定を使いこなしていないか、そもそも気付いていないのではなかろうか。
RANGEのツマミで、ワウワウ領域の高低を設定できる。このツマミは大きいしクリックが付いているので、ライヴ中にも変えられる。
足先でオン/オフできるブースターが付いている。説明書きには、効くのは「ワウがオンの時」とあるが、オフの時も影響するようだ。今のところオフで充分と感じているが、ライヴ中にはついスイッチを入れてしまうかも。もちろんブースト量も設定できる。
Q及びFINEというツマミで、いちばん踏み込んだ時のフィルターカーヴや周波数帯域を調整できる。要するにワウワウ領域専用のパラメトリック・イコライザー。
アウトプットが二つある。一つはワウの効かないドライ。地味なおまけだが、こういうのは意外と便利なのだ。即ちヘル・ベイブを持参していれば、ライヴハウスのアンプを二台同時に使う事ができる。ドライの方に別のワウを挟んで、左右のアンプで別々のワウ、という夢のような事も可能。立って演れたら、君は神と呼ばれるだろう。
これだけ天こ盛で三千円台。音色も、バイパス時の音質も、僕の使い方に於いては文句の付けようが無い。これ程の名機が雑誌のワウ特集でレビューされないのは、価格差が激しすぎて「他はなんなの?」となるからだろう。
光学式スウィッチ部の改造について。
四本のネジを抜いて裏蓋を外し、電池の入った、且つインプットジャックにケーブルを挿し込んだ状態で、ペダルを動かすと、どこいらでどのパーツが光り、どのセンサーがそれを捉え――といった仕組みが理解できると思う。発光体とセンサーは同じ基盤上に貼り付けられており、基盤は二本のネジで筐体に留まっている。この基盤を浮かせて固定することにより、ペダルの踏み込み開始からワウ領域までの、物理的距離を調整できる。
僕はガムテープで厚みを調整したワッシャーを、基盤の下に咬ませた。快適な使用感となった。
云っておくけれど僕は、この種のペダルを極めて繊細に踏むタイプである。例えばワウを、ちゃうわうと前後限界まで踏む事は滅多にない。体重は完全に反対の脚に預け、足先で絵を描くくらいの細かさでもって、フレーズに合わせて動かすのが基本だ。そうではない人が多いから、このヘル・ベイブは遊びを大きく設け、「いや、まだオンじゃなくて」を避けてあるのだろう。
だから「うおりゃワウ」と飛び込むように踏んでしまう人に、この改造は勧められない。上述のTIMER ADJの設定で充分。
かといって「よって改造は自己責任で」なんてケチな事も云わないよ。もし改造に失敗して「津原のせいで損した」と思われたら、メールをください。購入価格相応の、サイン入り書籍と交換してあげます。予備も欲しいから。
更に話題は流転する。
以前、ユニヴァイブに言及したら、ラッコ☆戦士のkikuさんが、「これ使ってください」とダンロップのROTOViBEを貸してくださった。うねりの速度をコントロールできるコーラス/ヴィブラート・ペダル。ありがとう。優しい方が世の中には居るものだ。
kikuさんは「びっくりするくらいセコいですよ」と謙遜なさっていたが、なんの、ラヂデパのリハーサルで使ってみて、夢かと思った。我々が演奏するRCの〈よそ者〉や、一方〈亀と象と私〉といったファンキーな曲には、もはや不可欠な機材と化している。
僕のギターではフロント・ピックアップの方が掛かりが良いようだ。効果の特性上、リアだと低音が薄まり易い。kikuさん仰有る「セコい」はこの事かな? しかし無意味なくらい頻繁にピックアップを切り替える僕には、なんの問題も無い。
それに繰り返しになるけれど、本当、僕はペダルを「なにが悲しいの?」というくらい、ちまちまと操作する。この操作法において、ロトヴァイブは無敵のエフェクターと思える。ワウかロト、と選択を迫られたなら、即座にロト。そのくらい。
これまた重いんだけど、可愛いロトの重さと思えば、絶対に我慢できる。そのくらい。
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