ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

最高傑作

2006-12-31 05:34:46 | マルジナリア
 長らく利用してきたteacupというBBSサーヴィスに無料ブログ機能を発見し、取材を兼ねた遊びとしていじっているうち、この【ラヂオデパートと私】は出来上がってしまった。小説家津原ではなくラヂオデパートというバンドの公式URLの獲得は長らく案件だったから、渡りに船、ただし楽屋裏を語る不安も大きかった。
 それが食べていくための手段ではないという意味に於いて、ラヂオデパートは無数のアマチュアバンドの一つに他ならない。しかし、結果として黒字か赤字かはともかく、前身のバンドから数えるともう二十何年もの間、僕らはお客さんからお金を頂戴して演奏してきた。ステージに立てばプロだ、と音楽で飯を食っている方から叱咤された事もあり、毎度それなりの覚悟をもってライヴに臨んでいる。
 自分達が演奏するための作詞を、僕は自分の重要な文業の一つと位置づけて生きてきたが、所謂J-POPの文脈からは程遠いという自覚はある。そう酷い代物ではないという自負もある。作曲や演奏に関しても、若いころ僅かにではあるが正式な教育を受ける機に恵まれたし、せめて何度かプロに誘われた事はあり、少しばかりの自信がある。
 要するに僕らは、三十年も頑張ってきたのだ。

 それだけにこの種の発信が、なんていうのかな、少々書きづらいけれど、ある分野でちょいと評価されたらスタア気分で余所へも進出、的な何かに誤解されたら厭だなと僕は思ってきた。同時に、誤解されるのには慣れているとも思った。そして一種の蛮勇として、実はバンドのメンバーにも相談せずに勝手に始めたのが、このブログだ。まずはライヴの告知をしたかった。レコーディング中心ではない僕らの活動は、ライヴにお客が来てくださらない事には成立しない。
 作詞作曲のプロセスを披露するなんてのは、本当、蛮勇もいいとこだった。でも曲は出来た。なにより驚いた事に、ネットに実像を曝される事で緊張を強いられたバンドは、以前よりずっと巧くなっている。12/24のライヴでは泣きながら握手を求めてきたお客さんがおられた。吃驚しましたよ。でも嬉しい。
 こんな偏屈な、初老に至りつつあるバンドが、なんらかメジャーと組んで――といった可能性はゼロに等しい。別に構わない。僕らは手段として音楽をやっている訳ではない。音楽と共に在り続けるのが僕らの人生で、他の選択肢を思いつかないのだ。つねづね人に云っている。僕の小説作品を賛美してくださる方々、本当にありがとう。嬉しいです。でも僕の最高傑作はラヂオデパートというバンドだ。だって他にある? こんなバンド。
 という訳で【ラヂオデパートと私】は、迷いを抱えつつも来年に続きます。この二箇月、読み続けてくれてありがとう。君はいいセンスをしている。

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