ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

もーん

2007-06-27 07:45:49 | ギター
 ラヂコンズのリハーサル。残念ながらサンチャゴ・タムラ氏が、よんどころ無き御事情にて欠席。それでも人数が居るというのは凄い事で、いい加減にしか練習していなかった曲がどんどん形になっていく。「こんな曲演るの?」というサプライズもラヂコンズの魅力としてまだ詳細を伏せるが、Zirconsがマルチプレイヤーりびけん氏を擁していることもあり、「あれも出来る」「これも出来る」と発想が尽きない。
 小山曰く、りびけんさんと僕は資質が似ているらしく、成程、双方ともウクレレを弾くし、昨夜知ったのだが、りびけんさんはウッドベース(コントラバス)も弾かれるようだ。日々ものを書いたり、人にものを教えたりしているという点も似ている。眼鏡をとると顔が怖いというのも似ている。いや、りびけんさんのお顔の構えは、なにせ「本職」にスカウトされる程らしいので、僕など到底及ばないが。
 豆腐もお好きらしい。
 いいねえ。

 例によってギターに話が移る。若いロックギタリストはフロント(ネック側)のピックアップマイクを余り使わない。もーん、という籠もった音がするからだ。僕も若い頃は、なんでそんな機能が付いているのか理解出来なかった。
 色々な楽器の役割を肩代わりせねばならない、過酷な状況での演奏生活を続ければわかる。本来ギターというのは、じゃりん、で音が終わってしまう楽器だ。この特性を克服すべく歪みが積極的に利用されるようになったが、その代わりこれは逆にうるさい。
 歪ませず、アンサンブルを包むような太い音(単音)を出すにはどうしたらいいか? 答の一つが、もーんである。もちろんマルチエフェクターで揺れや残響を加えれば「間のもつ」音が作れるのだが、マルチどころか単体エフェクターでさえ持ち運ぶのが嫌いな僕は、もーんの魅力に逆らえない。
 幸い僕のギターにはブースターが内蔵されている。無意識に触れてしまうボリュームノブの代わり、このゲインコントロールを操作してみる。持ち上げる周波数帯のコントロールに干渉し、それまでじゃりんだった音がもーんに変わる。なんと便利な。

 という訳で、暫くもーんを追求してみる。
 楽器弾きが自分の音色を得る時、そのプロセスは二種類に大別される。頭の中の音色――憧れの音色を再現せんとし、研究してそこに至る場合。必要に迫られ、いわばマイナスの計算で、その音を出さざるを得なくなる場合。
 どちらのケースも僕は一応経験してきたが、身に付くのは後者で、自分ではその音色が厭だとしても、周囲にはシグネイチュア・トーンとして認識されたりする。皮肉なものだ。小説の作風と同じだな。

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