ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

屋根裏に来てね

2008-02-16 16:48:44 | ライヴ
 さて次回のラヂデパは、今や古巣の渋谷屋根裏。トリという事で少々自由が利きそうだ。
 屋根裏には自分のAC15を預けっぱなしにしてあり、アンプに関して悩みはない。リッケンバッカーの面白さを再認識してきたところでもあるので、20日も十二絃中心だと思う。あとはリハーサルで判断する。

 アラマタミキコもほぼ出ずっぱりだから、ラヂオデパートリアスといったところ。
 圧倒的迫力にてお送りします、と公言してしまっていいだろう。小山とミーシャの歌には定評があるが、人間努力を続けてみるもので、最近は僕の歌の調子も、二十代の異様に元気だった頃を上回っている。この歳になって不意に音域が、上にも下にも広がった。不思議なもの。
 奥野のドラムが最も映えるのは屋根裏だし、太朗も最近――ええと、どう誉めよう――ミスが少ない。

 誤解なきよう、誉め所に困っている訳ではない。太朗のベースの特異性についてはいずれゆっくりと語りたいが、この人はほんと奇妙で、ベースを始めた当初から音色もフレージングもタイム感も変わらない。楽器を変えても同じ音。で、どっとこ、どっとこ、跳ねていなくても跳ねて聞える弾き方をする。タッチは限りなく軽い。同じセッティングで僕が弾くと倍くらいの音量になる。曲を聴きながら鼻歌でベースラインを決めるらしく、初めての曲は端から弾こうとしない。しかし鼻歌の割には音程が頻りに跳ぶ。
 天才の定義の一つに「最初から完成されていて成長もしない人」というのがあって、僕の周りでは太朗のベースがこれに近い。ちなみにラヂデパの前身バンドに於いては、僕がベーシストで太朗はギターだった。だから僕もラヂデパに於けるベースには一家言あるつもりなのだが、太朗が何をやっているのか、実はよく分からないのである。

【2/20 渋谷屋根裏(渋谷)】03-3477-6969
http://shibuya-yaneura.com/
 日時:2/20(水) 18:00open 18:30start ※ラヂデパは20:45頃から
 前売券:2,000円  当日券: 2,300円
 対バン:the crows/世田谷ボーイズ/browny/Little sadistic doors

サントラではない

2008-02-16 08:28:49 | マルジナリア
 過日、出版社から「明日のはなまるマーケットで『ブラバン』が紹介されます」との連絡があった。大した扱いではなかろう、といった弁も添えられていた。といった次第で二秒くらい拙著が映されたが、吹奏楽(番組内ではひたすらブラバンと呼んでいた)ブームの一例といった扱い。なんらタイアップしていないのに取り上げられたのは、タイトルがそのまんまだから、また企画自体が、嘗て取り上げてくだすった新聞記事を元にしていたからだろう。

「ブームの火付け役」として、何故か後発のCDが紹介されたので、なんだか拙著が便乗商品のように見えたのが無念。
 僕が『ブラバン』という小説を書いた――書かざるを得なかったのは、版元の社長が偶然、僕が在籍していた吹奏楽部のOBだったという事情からで、これは自ら執筆を頼みにきてくださった打合せの席で露見した。
「やっぱり先にブラバンの小説書いて。タイトルは『ブラバン』でいいや」と云われ、無茶な人だと感じたものだ。
 英国映画『ブラス!』の存在は知っていたが、未だ観ていない。『スウィングガールズ』は執筆中に観たものの、『ブラバン』既読の方はお分かりのように、まるで別物につき参考にならなかった。大林宣彦が録った『青春デンデケデケデケ』の記憶が、最もイメージを喚起してくれたように今は思う。
『青春……』と云えば――。
『ブラバン』で取り上げた作曲家、上岡洋一の同級生でいらした方が、同書を読んで喜び、ラヂデパのライヴに足を運んでくださった事がある。御本人もバンジョー奏者としてライヴ活動をなさっている。彼から先日送られてきたチラシには、対バンのリーダーとして『青春……』の原作者、芦原すなお氏の顔が。世間は狭いというか、なんと云うか。時間が許せば出掛けてみよう。
http://www.hinocatv.ne.jp/~soulk/

 話を戻す。同番組に映し出された、CD店の吹奏楽コーナーに瞠目した。どう見ても拙著のサウンドトラック盤としか思えないパッケージが映っていたのだ。それもその筈、絵師を探ってみたらば同じ福山庸治氏で、事情の程はブログにあった。
http://yojira.way-nifty.com/annex/2007/10/cd_3615.html
http://yojira.way-nifty.com/annex/2007/12/post_c2f0.html
 画そのものの著作権は福山さんに帰属するので、「そのまま使う」という行為に著作権法上の問題はないのだが、関連商品を装っていると判断されれば、別の法を適用されたかもしれない。
 もしタイトルまで『ブラバン』だったら、メディア違いとはいえ訴訟沙汰だろう。タイトルやデザイン等を含めた一式としての書影に纏わる権利は、著者に帰属すると聞いた事があるから、僕もなんらか判断せねばならなくなる。かといってタイトル自体に著作権は生じないから、まったく違う雰囲気のデザインで『ブラバン』というCDならば、これはあり。ややこしい。
 福山さんの述懐どおりCDの画は異曲同工ながら人物が増えているし、タイトルも『必勝コンクール!』という事で、結果、このCDにはなんの問題もない。でもやっぱりサントラに見える。『ブラバン』のタイトル文字は僕自身のサインペンでの書き文字が元になっているのだが、『必勝コンクール!』もマジック書き風レタリングで、色も同じ青。なんというか、デザイナーの苦労が偲ばれる。

 ともあれ長年にわたり福山ファンであり続けてきた僕としては、なんだかんだでこのCDを入手したくなっていた。でもタワーレコードの販売サイトの煽り文句を見て、厭になった。
――今、吹奏楽がムーブメント! 映画「スウィングガールズ」大ヒット→CD「ブラバン!甲子園」大ヒット中!
そして今度はニュー・サウンズ・イン・ブラスでの本家本元、EMIからのブラバン・コンピ登場!――
 これだけ似せておいて、黙殺かい。いや似せてしまったが故、書くに書けないのか。
 福山さんも素晴しい画をくださったが、コンセプトを立てた僕も、装訂の松木美紀氏も、苦心惨憺した結果のデザインなのだ。絶対に売れないとされていた音楽ジャンルの隆盛に、僅かにでも寄与できた、その事実は嬉しい。だから面倒を云う気は最初から無いのだが、理不尽に存在を否定されれば、誰だって不快になるというもの。