昔のことです。
店主が色んな人に追われていることなど知らずに喫茶店でバイトを始めました。
店にたびたび来るスーツ姿のお兄さんはここの珈琲が好きなのかと思って出迎えていました。
本当に空気読めなかったです。今思うと店主とテーブルで話している様子は仲よさそうではなかったです。
ある日私が電話に出ると、「○○さん、いる?」いないと言うと「お金返してと言っといてよ」と言われました。
なにも知らずにいた私には強く言われませんでした。だから店主は私に店番をさせて、逃げ回っていたのでした。
そのお兄さんは債権者で怒っていて店に取り立てに来ていたのでした。
豆が新鮮なら膨らむ
入ったばかりの私に珈琲ドリップを任されて店番してました。店主に手ほどきを受けこれでいいの?と
思いながら淹れていると「大丈夫それで。後は顔。もっと自信満々な顔で淹れて」と言われました。
カウンター越しにお客さんが神妙な感じでありがたそうに私のドリップを見るのに戸惑っていました。
その期待した表情に逆にびびっていました…豆が美味しいから、大丈夫なんですが。
喫茶店は魔法の世界という側面もあります。ハッタリに近い感じです。
お客さんが「これこれ!」「喫茶店のジュースは違う」と喜ぶオレンジジュースは、
市販のOJに業務用オレンジシロップ(無果汁)をスプーン1杯混ぜただけだし。
店主が裏の山で拾ってきた木の枝で作ったオブジェを、〇万とかで買って行かれる。でも、喜んでるから…
三谷幸喜も、強引に任された神谷町の喫茶店で、ネスカフェを溶かして出してばれなかったと書いていました。
←サイフォン式も好き。熱々の珈琲
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当時世間知らずな私は、彼が借金で追われているのはわかっても、自分に給料を払ってくれないとは思いつきませんでした。
彼はお給料を払ってくれず、私が2か月余りで辞めた後にお店は潰れてしまいました。いい喫茶店だったのですが…
一応労基に行ったのですが、店主が可哀そうな気持ちもあり諦めました。
「借金取りに追われている店主が自分に給料をくれないことを察知できなかった?」
と言われたことを憶えています。