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ネタバレ「映画:7つの贈り物 -Seven Pounds-」

2009-02-21 20:56:35 | 映画
7つの贈り物」・・・原題は『Seven Pounds』。『Seven Presents』でも『Seven Gifts』でも無い。基本的にポンドの意味は、ヤード・ポンド法などにおける質量の単位、英国の貨幣単位、心臓のドキドキする音・・・等々だけど、この場合の意味は「(価値の)重さ」だろうか?。なので、原題は「7つの(貴重な物の)重み」・・・だろうか?まさか、「ベニスの商人」の「1ポンドの肉」×7なんてシュールすぎる。

冒頭は、映像の被写界深度が極端に浅い映像(巨大なスクリーン上で、ピントが合っている部分が極端に少なく、ピントの合わない前後は適当にボケている・・・素人が家庭用ビデオカメラで明るさが足りない室内で絞り開放で撮影した映像の様)が続く。これはベンを名乗る男の心の闇(心の傷)から来る・・・精神的な近視眼を現しているのだろうか?(当初は、ピントが合って無いと映画館に苦情を言おうと本気で思っていた位。)それと、単純な会話が主体の米国英語は判り易く多分中2レベルの英語力でも大意は判るだろう。驚くべき事は、最近の焼き直しブームのハリウッドで、オリジナルとして脚本が書かれた事だろうか?(最近、ウィルは自己犠牲好きになったそうなので)これも究極の自己犠牲に拠る贖罪と云う感動作にすべく製作したのか、それとも、命の尊さを世に問う乱暴な問題作として製作したのか。

上映終了間近(エミリーが、共に贈り物を貰ったエズラを訪ねた際に、エズラがエミリーに気付き抱きしめるシーン)には彼方此方から啜り泣きが洩れていた。年の性か私も別のシーンで涙がウルウルしたが、チョット倒錯した私がウルウル来たのは印刷機を直すシーンだった。涙が溢れる=感動では無い。それほど迄に自らの贖罪を思い詰めたティムの心の闇を憐れんだのだろうか?

最初の30分でラストまでがほぼ間違いなく予想できる映画だった。想像を超えたラストシーン・・・との事だったが、想像通りであった。但し、ストーリーの流れが予想できるからこそ、彼の心の動き(特に後半、究極の愛の為に、究極の裏切りを行おうとする葛藤)が良く判り、ウィルの演技力が際立っていたのだろう。良い映画か、悪い映画かと聞かれれば良い映画なんだろう。だが、私自身は、もう映画館で見ないし、DVDが売り出されても決して買わない。多分、2度目を見ると別の場面で泣いてしまうだろう。恐らく、3度目でも・・・。だが、私はこんなカタルシスは嫌だ。

ベンを名乗る男(ティム)の行為は、そもそも臓器移植先進国と云われる米国でも許されているとは思えない。それはキリスト教的背景云々を語る気は無いが、自らの命と引き換えに臓器を譲ると云う考え自体が、危険な思想であると思われるからだ。又、生体間移植は日本では死生観の問題から受けが良いようだが、欧米では罪深い事とされている。又、非血縁間生体臓器移植に関しては臓器売買と同義であるとの指摘もある。現に発展途上国では臓器売買が行われているらしく、更に、臓器目的の殺人も起きていると聞く。現に中国政府は外国人への臓器移植を禁じた。この分野にも一石を投じるだろう。

又、白血球適応型/総合臓器適応型が一致する5人のレシピエントを素人である彼が独自に見つけ出す事は不可能であると思われる。(国税庁のデータベースには無い筈)実の弟ベン、ソーシャルワーカーのホリー、ホッケーのコーチであるジョージ、白血病の少年ニコラス、ピアニストのエズラ、そして、愛を交わしたエメリー、そして、ティムの7人(老人医療施設の理事長も入れると8名)がヒト白血球抗原(HLA)の主要3抗原系で半数以上が合致している事になる。免疫系に於けるセキュリティとは、7つの抗原系が、それぞれ6~50の抗原を取りうる。人は1つの抗原系について2つの抗原を持つ。つまり、1人が持つHLA型の抗原数は14である。HLA型のバリエーションは約1000兆種類(IPv6には負けるけど)・・・これが完全に一致するのは数億分の1以下の確立とされている。ま、そんな厳密な一致ではなく、実際の臓器移植の現場では、拒絶反応の大きい3抗原系(HLA-A/HLA-B/HLA-DR)の6抗原の内の半数以上の一致で移植が実施されている。(これが現状)それにした処で個人レベルでティムの選んだ「良い人」の中から8人の一致を見つける事は不可能だろう。特にエメリーの型は特異な型だと主治医は言っている。臓器移植先進国である米国に於いても、移植以外に助かる方法の無いレシピエントがドナーに巡り合えぬまま命を落とす確立は高い。だからこそ、レシピエントの選択に不公平があってはならないと強く思う。その中で、双方の自発的合意に因って移植が行われる生体間移植ではなく、ドナーが一方的にレシピエントをドナーの独善的視点で見た「良い人」を選ぶと云うのも不公正の極みで危険な思想だろう。

そもそも、贖罪としての「価値在る自殺」は自己犠牲とは云い難い。この危険な考えに触れた人々は、今後・・・大きな罪を償う際には頭の片隅に「7つの贈り物」が想起される様になっては単なるフィクションだと済ませれなくなりそうだ。

臓器移植を取り巻く問題の内、最大の部分が人の権利保護の問題だと思うが、 人には「臓器提供する」「臓器提供をしない」「臓器移植を受ける」「臓器移植を受けない」と云う4つの権利があり(バリエーションも4つだが)尊重されなくてはならない。「社会派のドラマ」だとして、何を導こうとしているのだろうか。

それから、ティムが12歳の時の水族館での思い出・モーテルで飼っていたクラゲだが、字幕では「ハブクラゲ」と出るが、「キロネックス・フレッケリ (Chironex Fleckeri)俗名:オーストラリア・ハブクラゲ」だろうと思う。ティムが自殺した浴槽の前には、救急隊員用向けの注意書きが置かれていたが内容は読み取れなかったが、クラゲが死んでいても刺胞には毒があるので注意を促す意味と、移植前に血清を使うべき云々が書かれているのだろうか?尚、「キロネックス・フレッケリ」の血清は存在するが、刺されてから3分以内で絶命すると云われているので間に合うのだろうか?
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