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取次の営業とは何か

論創社『出版販売試論』を読んで1 「取扱マージン制」について

2010-08-17 | 読書感想文
書 名:出版販売試論
副書名:新しい流通の可能性を求めて
出版社:論創社
著 者:畠山貞
税込価格:2,100円(本体2,000円+税)
発行年月:2010年6月
判型:B6
ISBN:9784846008734

栗田書店(現栗田出版販売)にて取次業務に従事された著者が、今日的課題である「返品問題」解消のため独自の「取扱マージン制」の導入を提案する。
というのがこの本の概要だと思います。

では、「取扱マージン制」とは一体何なのか。まずは抜粋させていただきます。

『*私案「取扱マージン制」の基本
(1)出版社から取次への送品は原稿より正味を二%上げる。例えば現行で正味六八%の場合、七〇%とする。但し返品は更に三%の歩高入帖とする。
(2)取次から書店への納品は現行より正味を三%下げる。例えば現行で正味七八%の場合、七五%とする。但し返品は更に三%の歩安入帖とする。』103頁より

本体価格1,000円の本で、入正味68、出正味78と仮定した場合、「取扱マージン制」を適応すると。

取次は出版社から700円で仕入れます。書店には750円で卸します。
取次マージンは50円も減ってしまいました。

しかしながら、返品が発生した場合。
取次は書店から720円で引取ります。出版社には730円で返します。
なんと取次は60円も儲かってしまうのです。

そして著者は、
『(中略)出版社サイドとして「送品の選別」に厳しくなり、返品率を四〇%以下に抑えれば現行より多く利潤が望めるようになる。(中略)書店の意見として「返品減少」より「売り損じを恐れる」という発言が業界紙で報じられており、事実その通りであろう。(中略)返品率が五〇%以下なら明確に粗利が増える制度になれば、書店の返品に対する考えも変わってくるのではないか。(中略)「取次」のマージンが、私案では一見、減少するように見えるが、(中略)返品率の改善により、諸経費は遥かに軽減されるので、このシステムを活用したほうがベターであろう。(中略)取次サイドとして、返品増はより多くの利益に結びつくという考えも成り立つ。しかし、これは出版社・書店の望む所ではないので、そうなることはないだろう。「返品減少」の実質的解決には、この私案の「取扱マージン制」が一考されてもよいのではないか』108~109頁より
と、主張してるわけです。

・・・・・・。一考してみたのですが、全く実現性がないと思います。ダメです。

まず、「歩高入帖」という考え方がありえないですよね。
上の例えだと、700円で仕入れた本を730円で返品するわけですよね。
配本しないで、全部返品すればいいじゃないですか。
「そ・・・そんな悪魔のようなこと、取次がやるわけないだろ!」
やるかやらないかじゃなくて、できてしまうということが問題なんです。

そして、現状「委託販売制度」の返品期限105日は、版元廃業時にのみ適応されており、実際には期限なし、フリー入帖ですね。しかし「歩高入帖」制を導入すればそうはいかないでしょう。版元は期限105日を過ぎた本の返品は受けなくなるでしょう。版元の言い分が正しいのでどうしようもありません。書店は105日を過ぎた本を店頭に置けるのでしょうか。取次は委託期限外の本を在庫できるのでしょうか。

書店側ですが、返品は一律歩安入帖になるわけですよね。そして配本は版元と取次が決める。これは「いじめ」の構造にしか見えないんDEATHけど。
例えば、上記が『スゴイね!ポリエステル』という本だったらどうするんですか。絶対売れないですよ。それが版元指定とか、取次の実用書ランクとかで配本されてきて、売れなかったらペナルティ(歩安入帖)だと・・・。

また私が懸念するのは、高度に政治的な判断で、万が一「廃業してもよい」とか「廃業したほうがよい」とかいう書店が発生した場合、この制度を利用して、オカシナ本をバンバンその書店に配本すれば・・・。
「そ・・・そんな悪魔のようなこと、取次がやるわけないだろ!」
だから、やるかやらないかじゃなくて、できてしまうということが問題なんです。

取次の配本精度は確実に落ちるでしょう。今でさえ、バラモン(取次仕入系スタッフ)は、めんどくさいことはしたくない。ランク・パターン配本に何の疑問も感じていないんですよ。そこにこんな焼け太りのマージン制度を導入すれば、彼らのモンスター化にもはや歯止めはかからないでしょう。

以上が、「取扱マージン制」について、私が一考した感想です。

この本には、まだまだツッコミどころがあるので、次回に繋ぎたいと思います。

※でも、ガッカリしないでください。勉強になる部分もありましたし、何より楽しく読ませていただきました。

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