ちょっと並ばされたあと「森の劇場」へと案内される。場内が暗くなり、舞台に「コナラの精」が登場。まあ、「精」とは言っても、白い衣装を着た女性だけどね。その女性が軽やかに舞いながら歌声を披露し、続いてスクリーンに森の風景が映し出される。そして、樹の枝に座った生物学者風の男の語りとともに、森の生き物たちが次々と登場する。カマキリ、バッタ、トンボ、蝶、カエル。かなり高性能のカメラで撮ったものらしく、素晴らしい臨場感を味わえる。こりゃ見応えありますわ。かつて昆虫好き少年だったのに今では触れることにさえ抵抗を感じるようになった僕だが、ここで見るカマキリの姿には久々にワクワクしちまった。そう、僕はかつて昆虫好き少年であり、中でもカマキリが大好きだったのだ。もちろんカブトムシもクワガタも好きだったが、なぜかカマキリには妙な親近感を抱いていたのである。
ちょいと万博とは関係ない思い出話を。
確か小4か小5の頃だったろうか。カマキリが大好きだった僕は、親戚の家に行ったある日、草むらでカマキリを捕まえていた。僕が住んでいた地域よりも田舎だったので、面白いくらいたくさん捕獲できる。調子に乗って、僕は虫カゴをカマキリでいっぱいにして、意気揚々と引き上げた。小さな虫カゴの中には、おそらく30匹以上のカマキリが入っていただろう。僕は王様になったような気分だった。
翌朝、目が覚めた僕は、さっそく虫カゴを見た。そして驚いた。虫カゴの中には、たった3匹ほどのカマキリしかいなかったのだ。なぜだ? どこへ行ったんだ? よく見ると、その3匹の周りには、食いちぎられた頭部やカマや足が散乱していた。僕は状況を理解した。そうか、コイツら、共食いしちまったんだ――。激しい自責の念に駆られた。自分のせいで、こんなにもたくさんのカマキリを殺してしまったのだ。愚かな所有欲のせいで30以上の命が失われてしまったのである。それ以降、僕は虫を捕まえる意欲が湧かなくなった。
すんません、万博に話を戻します。この森の劇場での映像は、かなり見事なものだった。オススメよ。
上映終了後、「森の回廊」へと歩を進める。壁一面に、蜂の巣を模した額が飾られ、その中には色とりどりの昆虫が並んでいる。本物の昆虫ではなく、紙やプラスチックや金属など様々な素材を使って作られた模型だ。ひとつひとつの額に小学校の名前が書かれている。どうやら愛知県内の小学校のほとんどが参加しているようだ。どれもなかなか見事な出来映えである。
下の階に降りると、ニホンオオカミの剥製が展示してある。意外と小さくて弱そうだけど、実際には俊敏で勇敢なんだろう。いやぁ、貴重なものを見せてもらいましたわ。
そんなこんなで、この瀬戸愛知県館は、かなり楽しめた。さほど混んでいないみたいだし、これから行かれる方はぜひ寄ってみてくださいませ。でも、虫が苦手な方にはオススメできないけどね。
<つづく>
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