少年トッパ

素晴らしすぎるぞ、『pieces of love』!

お気に入り度 ★★★★★★★★★★

 『pieces of love』を観た。短編3本、計40分のオムニバスである。普通、オムニバス映画といえば5本のうち1本が面白ければ御の字、というのがニッポンの常識である(よね?)。時には総崩れの場合もある。しかし、この『pieces of love』の3本はすべて素晴らしい。傑作。決して大げさではなく、奇跡を目の当たりにしたような気分になった。心地いい夢を3つ続けて観た、という感じ。

 まずは、谷村美月主演の『日にち薬』。ああ、もう、こんな谷村美月を待っていた! そう叫びたくなるキャラクター設定である。ほら、ここんとこ『魍魎の匣』だの『神様のパズル』だの『おろち』だのと、無表情な役柄が多かったでしょ? 『檸檬のころ』の谷村美月を大好きな者としては、泣いたり笑ったり悩んだり落ち込んだりと、感情を爆発させる姿を見たかったのだ。ホントにもう、片想いの相手に告白しようとジタバタする谷村美月が可愛いったらありゃしない。
 監督は永田琴。聞き覚えがある名前だと思ったら、『渋谷区円山町』と『Little DJ 小さな恋の物語』の監督だった。前者は前半だけ好きで後者はイマイチだったけど、次の作品が楽しみになってきた。

 続いて、仲里依紗主演の『It's so quiet.』。その親友役として吉高由里子が出ている。この二人が会話を交わすシーンが、とにかく楽しい。夢見心地になるほど楽しい。そして、仲里依紗が意中の男子と心を通わせていく過程の描き方が素晴らしい。もう、楽しいとか素晴らしいとか、そういう言葉しか思い浮かばないや。すんません、語彙が貧困で。
 監督は三木孝浩。名前を聞いたことがないので調べてみたら、いろんなプロモーションビデオを撮っている人みたい。YUIの『CHE.R.RY』も、この人だって。あれも傑作だったもんね(全部は観たことないけど)。

 そして、アニメーション『つみきのいえ』。前の2本が素晴らしすぎたので、これはまあ、普通の出来だろう。そうそう傑作が続くはずないもんね——なんて思っていたわけだが、その予想は完全に外れた。ものすごく味わい深く、詩的で寓意性に富み、しみじみと心に沁みる傑作なのだ。
 水没した街で暮らし続けるお爺さんが主人公。水位が上がるのに伴い、お爺さんは積み木を重ねるように、家を増築していく。その家は、結婚した時にお爺さんと妻が建てたものだった。娘が生まれ、やがて嫁ぎ、そして再び二人きりになったお爺さんと妻が、穏やかな日々を共に過ごした場所だったのである。だから、水没した街から人々が去っても、お爺さんはそこで暮らし続ける——という物語。
 ナレーションは長澤まさみ。以前から思っていたのだが、彼女の最大の魅力は「声」じゃないだろうか。決して滑舌が良いわけではないが、なんとも情感の込め方が巧いのである。おそらく、それは修練の賜物というよりは、天性のものだろう。この『つみきのいえ』にはナレーション入りとナレーションなしの2バージョンがあるらしいが、長澤まさみの声によって作品の完成度はさらに増していたと思う。まあ、ナレーションなしバージョンを観ていないので断言はできないけど。
 監督は加藤久仁生。新進気鋭のアニメーション作家であり、すでに海外でも高く評価されているようだ。日本には、すごい才能を持った人がまだまだいるということですね。

 この『pieces of love』、今週金曜まで全国5ヶ所(TOHOシネマズ横浜・流山・名古屋・鳳・久山)で上映されています。料金は500円。詳しくは下記参照。

※『pieces of love』に関する案内→http://www.robot.co.jp/pol/

 唯一の不満は、DVDには収録されるらしい『わかばちゃん』(主演は星野真里)が上映されなかったこと。これも観たかった! って、1作だけ上映しなかったのはDVDを買わせるための戦略?

 あと、あんまり書きたくないんだけど、僕が観た時は自分を含めて客は4人だった。こんなに素晴らしい作品なのに! あと3日しかないけど、都合が合う方は絶対に観に行って!
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