少年トッパ

殴り書き映画感想<4> 『Peace』 ※ネタバレあり

 半野良猫たちの世話と、金にならない介護事業。この2つに追われる60代の男性と、その妻の日々を追ったドキュメンタリー。介護事業には国の補助金も出るのだが、その手続きや計算がいかに面倒で手間を食うものかが、よく分かる。「もうからない」どころか、一生懸命やればやるほど経営が逼迫してしまうのだ。しかし、それでもこの夫婦は、へこたれることもめげることもなく、介護に従事し続ける。こういった方々が高齢化社会を支えているのだろう。頭が下がります。

 などと思いながら観ていたら、この映画、終盤に爆弾が炸裂した。なんと、猫にエサを与える旦那の行為に奥様がダメ出し! 全否定に近いニュアンスで苦言! それまで一枚岩のように見えた夫婦だったけど、いやいやどうして、いろんな想いが鬱積しているんだなぁ、と感じたものだ。そういえば、横田めぐみさんについてのドキュメンタリーを観た時も同じようなことを思ったものだった。同じ志を持って長らく一緒に行動している夫婦といえども、決して一枚岩ではないのだ。

 もうひとつ、介護されているおじいさんが自らの戦争体験を語る場面も実に見応えがあった。奥様によるダメ出しと同じく、こちらも「予期せず撮れてしまった」ものなのだろう。だからこそ、観る者の心を動かすのである。
 結局のところ、「用意してあったコメント」なんかよりも、「その場でたまたま言ってしまった本音」の方が圧倒的に真実味があるのだ。それを引き出す手腕、というよりも、その瞬間を待ち続ける辛抱強さこそが、ドキュメンタリー映画の作り手には大切なのだろう。
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