Tommyさん、安らかに。

　昨日、Tommyさんの通夜に行ってきた。享年48歳。自分より若い人を見送るのは、つらく悲しいことだ。

　Tommyさんと初めて会ったのは、いつのことだったろう。薄情な僕はそういうことをマメに記憶してないけど、きっとTommyさんは覚えているだろうね。
　甲斐よしひろのライブやオフ甲斐で会うたびに、「トッパさん、トッパさん、今度ライブやるんですよ」とか「トッパさん、トッパさん、バンド組んだんですよ」とか「トッパさん、トッパさん、ドラゴンズ勝ってますよ」などと、うれしそうな顔で話しかけてくれたものだ。そう、こっちの名前を必ず2回呼ぶ、ってのがポイント。人なつっこくて無邪気で、あんまり笑えないダジャレを連発することもある（というか、多い）、そんな陽気で快活なアンちゃんだった。もしも僕の方が年下だったら、ギャグは面白くないけど頼れる兄貴分、と思ったことだろう。

　何年か前、稲沢での甲斐よしひろライブでは最前列という幸運に恵まれた。チケットを申し込んだ僕が、そのことを恩着せがましく、かつ偉そうに言うと（すみません、そういう性格なんです）、Tommyさんはすごく喜んでくれた。この時のライブは、きっと彼の人生の中でも忘れがたい思い出のひとつとなったことだろう。その時間を共有できたことを、今はとても光栄に感じる。

　Tommyさんは音楽が大好きで、自分でギターを弾いて歌ったりもしていた。でも、はっきり言って、歌そのものは決して上手いわけではなく、音程はいささか不安定で、声量もいまひとつだった（さらに上手くない僕が言うのもナンだが）。
　しかし、昨年の「甲斐バンド・トリビュートライブ」でバンドを従えて歌った時のTommyさんは、見違えるほどの成長を遂げていた。力強く堂々とした歌いっぷりで、まさにバンドのフロントマンにふさわしいオーラを放っていたのである。観客を盛り上げる手腕もなかなかのもので、大いに感心させられた。「好きこそ物の上手なれ」ということわざは彼にこそふさわしい、なんてことも思ったものだ。などと書くと、亡くなった方に対して失礼なような気もするけど、あの時の僕には本当に彼の成長がまぶしかったのだ。

　最後に会ったのは今年の7月2日、Zepp Nagoyaでの甲斐よしひろライブの開演前だ。その3ヶ月ぐらい前に急病で何日か入院していたTommyさんは、確かに以前より痩せていた。でも、口調は相変わらず快活で、自分のバンドのこと、ライブのことをうれしそうに話していた。だから僕は、まさかそれから4ヶ月も経たないうちに急逝してしまうとは、もちろんまったく思いもしなかったのだ。なので「いつかライブに行く」などと言ったのだけど、その「いつか」は永遠に来なくなってしまった。

　通夜の会場では、甲斐バンドの古いナンバーがBGMに使われていた。『男と女のいる舗道』『氷のくちびる』『そばかすの天使』『裏切りの街角』などだ。そういえば、通夜に行く3時間ぐらい前、職場のラジオからは『HERO』が流れた。もしかしたら、誰かがTommyさんのためにリクエストしたのだろうか。

　棺の中で眠るTommyさんを見て、僕はようやく、彼の死が現実であることを認識した。それまでは、とても現実だとは思えず、何かの間違いじゃないかと思っていたのだ。もしくは、夢の中の出来事じゃないかと。
　しかし、棺の中で瞼を閉じているのは、まぎれもなくTommyさんだった。本当に逝ってしまったのだ。大好きなドラゴンズのリーグ2連覇に大喜びしたであろうTommyさんは、クライマックスシリーズも日本シリーズも見ることなく、この世を去ってしまった。

　通夜から帰り、夕刊を見たら、世界の人口が70億人を突破したことが報じられていた。その節目の日にTommyさんを見送ったことを、僕は忘れずにいようと思う。
　Tommyさん、いい思い出を残してくれてありがとう。どうぞ安らかに。

※Tommyさんの勇姿は、こちらでご覧になれます。
http://blogs.yahoo.co.jp/kaitributenagoya/4166884.html