実を言うと、志の高い力作だとは思ったものの、あのラストには釈然としないものを感じた。そう、ラスト数分で明かされる例のアレである。確かに衝撃的ではある(とはいえ予想もできた)けど、この物語にああいう仕掛けは必要だったのだろうか。サスペンス風味を強くすることによって、肝心の主題や目的を霞ませてしまったのではないか。そんな風に思えてしまった。この映画の目的は「現実に起きている痛ましい出来事を世に知らしめる」ことだろう。そのために、ドキュメンタリーではなく劇映画という体裁を選んだことは大いに支持したいが、あの結末は物語の幅を狭めてしまっているように感じたのだ。
阪本順治監督と江口洋介へのインタビューを読んだら、ああいう設定にすることは脚本を書き始めた時点で決めていたらしい。どうやら、そこから逆算してドラマを構築したようだ。なるほど。確かに、ああいう明確な「オチ」を用意しないと、このあまりに悲惨で痛ましい物語に区切りをつけるのは難しかっただろう。その前に市街地での銃撃戦という見せ場を作ったことも含め、あえて通俗的な展開にすることで、作品の間口を広げ、敷居を下げたのかもしれない。しかし、それが最良の策であったとは、やはり思えないのだ。
それとは別に、苦言をひとつ。エンドクレジットとともに主題歌(桑田佳祐の『現代東京奇譚』)が流れるのだが、その歌詞を字幕で出す意図が分からない。はっきり言って邪魔である。映画の中で描かれた諸々の出来事に想いを馳せたいのに、字幕が流れるとついつい目で追ってしまうのだ。日本語の曲だから、ほとんど聞き取れるのに。
曲そのものは悪くない。ただ、この映画のエンディングには、歌詞がある曲は必要なかったのではないか。ましてや、字幕はまったく不要。阪本監督、最後の最後に下手こいちゃアカンて。
などと偉そうなことを書き連ねてきたけど、インタビューを読むと阪本監督はホントに身を削ってこの作品を作り上げた、ということが分かる。その姿勢はホントに立派だと思います。敬礼っ。
※こちらのインタビュー記事もオススメです。
http://www.varietyjapan.com/interview/2k1u7d00000864ad.html
コメント一覧
トッパ
阿井
最新の画像もっと見る
最近の「<映画> 映画の感想」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- 新作映画公開情報@名古屋(972)
- 映画に関する話題アレコレ(109)
- <映画> 映画の感想(246)
- <音楽> 好きな歌の紹介など(115)
- <本> 本の感想など(81)
- テレビ・ラジオに関する話題チラホラ(87)
- いわゆる身辺雑記、もしくは雑感(588)
- ライブレポもどき(67)
- 「されても構わない程度の勘違い」シリーズ(3)
- お宝自慢、またはお宝もどき紹介(20)
- 愛・地球博の思い出(10)
- 告知モノ(36)
- 「映画バカ一代」関連(7)
- とりとめのない思い出話(11)
- 「このカバーが正しい」シリーズ(10)
- 分類なし(16)
- 日本語について語らせて(名古屋弁ネタ含む)(7)
- ミーコのページ(44)
- 「甲斐トリビュートLIVE」関連(26)
- 日記(0)
- 旅行(0)
- グルメ(0)
バックナンバー
人気記事