少年トッパ

『うさぎが鬼に会いにいく』に刺されたっ。

 久々に本の話題。花粉症もかなり治まったので、あれこれと読んでおります。



●寺澤有『報道されない警察とマスコミの腐敗 映画『ポチの告白』が暴いたもの』(インシデンツ)

 映画『ポチの告白』のパンフ代わりとしても販売されている書籍。元警察官、元新聞記者、ジャーナリスト、裁判官、弁護士などが、警察とマスコミの実態を語っている。って、まだ半分ぐらいしか読んでないけど。

●吉田豪『BAND LIFE—バンドマン20人の音楽人生劇場独白インタビュー集』(メディアックス)

 バンドブームの時代にデビューしたミュージシャン20人へのインタビューをまとめたもの。登場するのは、森若香織、氏神一番、関口誠人、ダイヤモンド☆ユカイ、水戸華之介、中山加奈子、阿部義晴、いまみちともたか、BAKI、石川浩司、サンプラザ中野、サエキけんぞう、NAOKI、KERA、仲野茂、MAGUMI、KENZI、イノウエアツシ、DYNAMITE TOMMY、大槻ケンヂ。ほとんどの者が全盛期にも大した収入がなかった、ってのが切ない。「音楽バカだったので金に無頓着だった」ということも大きいだろうが、そこにつけ込んで搾取しまくった輩がいたのは明らかだよね。そういう構造、今も変わってないんだろうか。
 勉強になることも多かった。たとえば「5分以上の曲は印税が2曲分」なんだって。ってことは、4分50秒ぐらいの曲ならイントロか間奏か後奏を少し長くして5分以上にしちゃえばトクするわけだ。やってるミュージシャン、多いのかな?

 関係ないけど、オーケンが「週刊アスキー」で連載している対談企画『R40!』も早く単行本にしてくれないかな。必ず買いますので。あ、できれば吉井和哉や斉藤和義を登場させてから、ね。

●宇多丸『ライムスター宇多丸の「マブ論CLASSICS」—アイドルソング時評2000‐2008—』(白夜書房)

 アイドルソングが熱く語られた評論集。愛情あふれる筆致と、曲単位に語るだけではなく「アイドル史」を俯瞰しつつ考察していくというアカデミックな姿勢が素晴らしい。しかし、困ったのは、こっちがハロプロ関連の曲に思いっきり疎いこと。じゃあなんで読んだんだ、って話ですが。
 ここ数年で僕がハマったアイドルソングは、まりもみの『星になる!』と、星井七瀬(三代目なっちゃん)の『ナナナビゲーション』なんだけど、どっちも取り上げられてなかったのは残念。あと、つんく♂のプロデューサーワークを語る際に奥村愛子の名前も出てきたのに、サラッと流されてしまっていたのは切なかったなぁ。でも、読み応えは充分あるし、パフュームの成功を讃える記述は感動的。

●吾妻ひでお『地を這う魚』(角川書店)

 小林まことの『青春少年マガジン』に続いて……というわけじゃないだろうけど、吾妻ひでおも自身のデビュー当時を振り返る作品を発表した。ただし、その描き方は極めてシュール。なんと、ほとんどの登場人物が人間ではなく、得体の知れない奇妙な生物として描かれているのだ。街を歩く人間たちも、人間の姿をしていない。これは「当時、僕の目にはこう映っていた」ってことなのだろうか。それとも、普通の人間を描くだけじゃ面白くない、というだけの理由かな?
 しかし、吾妻ひでおのタッチだから楽しく読めるけど、これが媒図かずおとか日野日出志とかだったら、すげー気持ち悪いマンガになってたろうね。

●中村うさぎ『うさぎが鬼に会いにいく』(アスキー)

 中村うさぎが、世の中で「鬼」と思われている人物に会って話す、というシリーズの単行本。とはいえ、さすがにそうそう殺人鬼とかと面談できるはずはなく、いわゆる「鬼才」をターゲットにした企画へと途中からシフトチェンジしている。
 登場するのは、佐川一政、植垣康博、三浦和義、岡留安則、釣崎清隆、鈴木邦男、バクシーシ山下、日野日出志、マツコ・デラックス、田嶋陽子、そして最後に元ヤクザの牧師さん。愛する女性を殺して食った男もいれば、連合赤軍の兵士だった男もいる。死体の写真を撮り続けるカメラマンもいれば、アダルトビデオの監督もいる。なんとも豪華、というか、濃い顔ぶれだ。
 で、どれも興味深かった(ただし、田嶋陽子の回のみ手ぬるすぎの感あり)のだけど、ちょっと戸惑ったのは、肝心のインタビューが掲載されていないことだ。どの章も「中村うさぎによる感想」と「中村うさぎによる後日談」で占められており、もちろんその中でインタビュー相手の発言は紹介されるのだが、読んでいる側としては「映画本編を観させてもらえず、その映画の感想だけを聞かされた」という気分になってしまうのだ。せっかくインタビューしたのなら、それをテープ起こしして載せて、そのあとに中村うさぎが感想を書く、という風にすればよかったのに。もちろん、ページ数の都合とかで、こういう形になったんだろうけどね。
 それはともかく、中村うさぎの直感の鋭さと洞察力には唸った。特に連合赤軍に関する分析。「母性が男性原理に敗北した」ってのは、確かにその通りかも。

 また、マツコ・デラックスの回では、ものすごく心に刺さる箇所があった。ちょっと引用。

*     *     *     *     *

 他者の視線に迎合した途端、我々は、果てしなくサービスしなくてはならないような錯覚に陥る。痩せなきゃいけない、お洒落しなちゃいけない、社交的でなきゃいけない、愛されなくちゃいけない……「自分」という存在が、他者に捧げる際限のない供物となるのだ。
 元々、他者の視線に自分を苦もなく当てはめられるような人間ではないのだ。閉じた世界に、たったひとりで住んでいるタイプなのだから。それゆえ、他者の期待値を正確に測ることができず、過剰に反応してしまう。これでもか、これでもか、と、やり過ぎてしまうのである。
               ※P.145〜146より

*     *     *     *     *

 うわー、耳が痛い。これ、ほぼ100%、ネット全盛期の頃のオレのことじゃん。掲示板に毎日たくさんの書き込みがあって、そのひとつひとつにハイテンションなノリでレスしていた頃。もてなさなきゃ、喜んでもらわなきゃ、と自分を無理やり躁状態にして振る舞っていた時代。今から考えると、すげー痛々しかったなぁ。まあ、今でもやってることは大して変わらないけどね。ははは。

 というわけで、5冊ともオススメです(『報道されない〜』はまだ途中だけど)。興味がある方はぜひご一読を!
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