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萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

山歩雑談:夏山のキケンと安全

2016-07-31 03:08:08 | 解説:用語知識


今日っていうか昨日はめずらしく夕方に山歩きしたんですけど。
いつもなら朝5時出→8時前には登りだし→昼前に下山、でも今日は寝坊した&先に用があり、
ソンナワケで予定していた山は延期して、慣れている短時間+楽ちんルートに変更して16時ごろ着きました。

そこは標高1,700メートル付近の森+草原、稀少種の植物や蝶がすむ山上の花園です。
知られちゃったら人わんさか来そうなもんだけど、悪路マイナー林道がそういう環境を守っています、笑

登山図には名前も載っているんですけど、通ったとしてもフツー気づかず素通りするようなカンジの場所。
自分も偶然に通ったとき「あれ?ここ良いコースじゃね?」と寄ってみたら以来それから常連に、笑
ソンナワケで人はいつも少なくて、夕方なんて無人or慣れてるカンジの人しかいない。

が、今日はなぜかリゾートふぁっしょんな女の子がいました。

半袖+七分丈パンツ+パラソルくるくる回し、一人で草原の中ぶらぶら歩いている。
駐車スペースにコンパクトな車一台、どうも一人で運転して一人で来たらしい。

あーコレ放置ほったらかしたらヤバいんだろうな?

って思いました率直ヤバイなあと、笑

そのとき時間は16時半=日没まで2時間くらい。
森なら真っ暗になる時間、草原も傾く日+斜面の影で暗くなり始め。
アブも蜂も飛んでいる山上の花園、高い草叢の底はヘビもいる+森はクマの痕跡もある。
きっと一人ほったらかしたらクマも鹿も来るだろう、ゴハンになる草や実もある場所だから。

山のお花畑だわ散歩しましょ、

ってカンジだったんだろうけど、でも危ないですよマジで?
そういう危険を解かっていないから無謀してたんだろうけど。

草原は転落の心配はない、が・山は街燈ナシ真っ暗で月が出ても足もとは見えません・で、転ぶし+道に迷ってアタリマエ。
転倒すれば捻挫etc動けなくなることもある、で・山は電波が入り難くて救助が呼べない・呼べてもすぐ来てはもらえません。
だから山は照明+救急用具は持って行くのがアタリマエ、低山だろーが初心者コースだろうが同じです。

かつ山は天候も急転しやすくて、朝は晴天でも午後は豪雨雷雨なんてよくあります。
今日も雨の匂いがしました、自分のトコは降っていなくても近くで降っている=すぐ雲が流れて降りだす可能性大ってことです。
自分の経験になっちゃいますけど夏は特に急転しやすいなー思います。



夏山は朝露が降ります、夜間に冷えた空気の湿気が水滴になるワケです。
その朝露が日昇=気温高くなるごと蒸発して→霧になり→霧が雲になって雨を降らせます。
ようするに一日で水が変化しまくり循環するワケです。

コレ夏山はよくあることで、八月の富士山も雷雲しょっちゅう湧きます。
そのため夏は霧に巻かれやすく、霧に濡れると体温が奪われて低体温症を起こします。
低体温症が悪化すると凍死になるワケですが、夏山だからと軽装で登った凍死の遭難例も珍しくありません。

晴天、なだらかで見晴らし良い→1時間後→濃霧・豪雨で道迷い+行動不能

なんて遭難ケースは夏山であることです。
どんな楽ちんコースでも天候変化で難易度も変化するのが山、室内や街中のスポーツとは違います。
ソンナワケで・ちょっと散歩なんて軽い気持ちからの遭難死は珍しくありません。

寺院の脇道からなにげなく山歩きを始めて、
暗くなり、道に迷い、ヘッドライトも無く登山靴ではない足は疲労で転び、
そして翌日に駐車場から200メートル付近で疲労凍死の遺体で発見、なんて事故が2、3年前にもありました。
その現場になった寺院は観光客も多いカナリ有名なところです。

春にも残雪のころ、気圧配置の急転で降った雪で凍死した遭難事故もありました。
現場は東京都奥多摩の山、標高2,000メートル未満の地点・北斜面、軽装備の登山者でした。
この事故も装備+山と天候の知識と的確な判断があれば助かったケースです。

北斜面と南斜面では気温がズイブン違います、もし南斜面にビバークすれば凍死は免れたかもしれない。
ビバーク=緊急時露営するなら焚火すればよかった、でも雪中に火を起こす技術は知らないと難しい。
アイゼンを持っていれば雪中も安全な行動が可能=体力消耗も少なく自力下山もできたかもしれない。

夏と春の遭難2例、どちらも共通するのは「軽装備」「無知識」安易が原因です。



この↑霧写真を撮ったときも下界は晴れていました、同じ地域でも山上と平地は全く違う天候だったワケです。
こんなこと普通によくあります、平地と山を同じ尺度で測れないよってことです、笑

朝と午後も天候変化は激しいのが山、
かつ山の夕暮は平地より早くあっというまに暗くなります、そのため午後発の山行は原則アウト。
夕方から登って翌朝にご来光なんて登山もありますけど、経験者のサポートなしでは危険です。

○暗い山中の行動は野生獣との遭遇+転滑落の危険も大。
○山小屋も15時には着くことが常識、遅刻すれば怒られてアタリマエなのは遭難危険度が高いためです。
○下山完了は遅くても16時、夏は日が長いためツイ遅くなりがちですが危険は変わりません。
○慣れたルートでも自然環境は変化→崩落・倒木・野生獣の棲みつきなど、道もそのときどき変化する可能性があります。
○夏山の遅い午後は雷雲発生・集中豪雨など天候変化も大きいです、観天望気の技術&装備きちんとしてください。
○単独行はクマの遭遇率がどうしても高くなります、初心者ルートやハイキングコースでも山=野生獣の生息地と理解してください。
○…やむを得ない単独行はラジオで人声複数を演出しましょう、手負いのクマは食人の可能性が高く危険度MAXです。
○草原地帯ではアブ・蜂・ヘビとの遭遇は通常モード+葉でカブレるなど有り、長袖長ズボン+登山靴が無難です。
○夏の森はヤマビルが大発生することも。。帽子+首元ガード+長ズボンなど対策して安全。

ちなみに夏の丹沢は山蛭ヤマビルの大発生で有名です、
もしヤマビルにたかられると=吸血されて流血騒ぎになります、笑
で、ヤマビルを防ぐには女性が履くタイツ+長ズボンのWガードが有効なんだとか。



また、山でカメラを使う場合、
○集中して野生獣の接近に気づかない→遭遇→襲われる、なんてことも。
○三脚は持たない方が無難です、担いだ三脚を枝にひっかけ転滑落・三脚のバランス崩して転落なんてことも。
○登山道での撮影は他の人の通行を妨げないこと、カメラ使用者を避けて転落となれば責任問題が起きます。
○撮影の邪魔だと草木を折ったりしない、条例違反も当然ですが「山」への畏敬なく山の撮影など無理です。

ラストに、最低限のことですが、

○山の三品は最低限必携=水・照明・雨具
○足もとは登山靴、履き慣らしておかないと怪我します。
○防寒具は夏山でも必携、真夏でも山は天候・時刻で冷えこみます。

今日っていうか昨日ちょっと危なっかしい人を見た&夏休み夏山シーズンなのでコンナの書いてみました。
自己過信は遭難事故の元、単独行・午後発・悪天候と夜間は避けて無難です。

山は安全万端こそ楽しくで、笑
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山岳事情:登山のリアル×名誉棄損

2016-05-21 23:53:25 | 解説:用語知識
Because it's there.



山岳事情:登山のリアル×名誉棄損

エベレスト登頂について、ちょっと最近ギモンだったので。

ここ数年、エベレストに登ろうって芸能人&テレビ企画が多いですけど。
その「登ろう」って理由はナンなんだろう?なんだってソンナ企画ワザワザするの?
って話をする前に・・知らないと「?」が解けないエベレスト&登山ちょっと簡単まとめを、笑

1.エベレストの登山ルート

どの山も共通することですが、ノーマル・ルート=普通の登山道があります。
このノーマル・ルートは最も危険度が低い、遭難可能性が低いルートです。
逆に難易度が高いのはバリエーション・ルート、道を見失いやすい+危険地帯が多く登山技術が要されます。
それより難しいのは未踏ルート=ルート開拓です、ファイナリスト・クラスのみに許されることで素人だと遭難死直結です。

エベレストの場合、
ネパール側からの南東稜ルートがノーマル・ルートにあたります。
チベット側からだと難易度がUP。

2.エベレスト登山適期
春が適期です、理由は天候安定期+雪と氷が少なめな時季だから。

標高3,000m以下=100mごと0.5~0.6度
標高3,000m以上=100mごと1度

気温はコンナ↑カンジに標高ごと変化します、ようするに標高が高くなるほど気温低下するってワケです。
(気温変化は緯度も関係=同じ標高2,000mなら奥多摩@東京より北海道の山の方が寒くなります。)
日照条件によっても気温が変化=北斜面は南斜面より気温が低くなります、地形に影響されるってことです。
湿度や風速も体感温度に影響=濡れた体に風が吹けば気化熱で体温が奪われる→低体温症など体調悪化=死。

標高・斜面の方角・地形・天候により同じ山でも難易度=遭難危険性が変化するってことです。

たとえば富士山も積雪期は難易度まったく変化します。
コンクリート硬度に氷化した雪面はアイゼンもピッケルも効かず、シャッターぶっ壊す豪風に吹き飛ばされます。
そして遮るものない滑落の摩擦で身ぐるみはがれ体温を奪われて、そんな全裸凍死体が毎シーズン無残な姿で発見されます。
そのため唯一の通年営業している山小屋は宿泊予約がくると経験値や装備・レベルを聴いて中止させるべきか考えられるそうです。

エベレストは標高8,848m、標高0地点と山頂の気温差は単純計算で約マイナス73度になります。

ようするにホトンドの地点が通年零下、
それでも春は天候も恵まれやすいため登山適期とされているワケです。

3.エベレスト登山は入山料がカナリ高額

ネパール政府は「標高5,300mにあるベースキャンプより上に行くものは入山料を収める」と定めています。
これは登頂してもしなくても同一料金です。

2016年5月の南東稜ルート概算=125,00ドル=約1,365,000円(110円/ドル)

入山料は2015年度の改定により減額されました。
ネパール側+適期の春+ノーマル・ルート南東稜は1人あたり=11,000ドル+諸経費1,500ドル。
諸経費の内訳は=リエゾン・オフィサー、医療サポート、ロープ設置など各登山隊単位で掛かります。
エベレストにおけるリエゾン・オフィサーはネパール政府代理人で、登山隊の監視役として付けられます。

詳しい計算式を書くなら、

入山料11,000ドル+(諸経費1,500ドル÷登山隊人数)

これ↑が1人あたりの費用となるんですけど、この入山料は2015年度改定より前は約250万円でした。
とはいえ改定以前は7人グループで申込むと780万円になる割引制度があり=約111万円/1人でした。

三点とりあえず簡単に書きましたけど、
たぶん3の入山料について驚かれる方もあるかと思います。
この入山料+諸経費の負担が冒頭=芸能人やテレビ企画による登山の問題を起こしています。

で、なんで芸能人やテレビ企画が問題になるのか?っていうと、山の原則が無視されてるから。

4.自助と相互扶助

登山はスポーツかもしれません、が、他種目と違うのは生死の危険度が高いことです。
この危険性のために「自助と相互扶助」という原則があります。

自助=登山は自己責任、自分で責任をとれる以上のチャレンジはするな。
相互扶助=もし遭難者を見たら救助に協力する、が、救えなくても責任は遭難者本人。

この↑自助&相互扶助は山の常識です、山ならどんな低山でもアタリマエ。
なので山岳救助隊員がもし遭難者の命を救えなかったとしても、責任は遭難者本人です。
なぜなら山=危険=遭難可能性があることが大前提で、だから自助と相互扶助という原則があります。

低山でも遭難ポイントがいくつもあります。
今年のゴールデン・ウィークも遭難事故が多発しましたけど、低山での事故が多くありました。
標高が低い=難易度が低い、っていうのは山を知らなすぎるカン違いだ~ってことは上述1・2の応用で解かるかと、笑

エベレストのルート+費用+自助と相互扶助

っていう前提を挙げたところで「エベレスト登山」ここんとこの風潮疑問。

まず・テレビ企画で遭難死したら誰が責任とれるの?ってことです。
どの山でも遭難の危険があります、大ケガしても救助の人が行けない場所もあり見棄てざるを得ない時もあります。
遺体を回収されないことも当然ありえます、実際にエベレストではポイント確認の道標にされている氷漬け遺体もあります。
死だけじゃなく遺体放置の可能性もある、それを理解して山を人生に選んでいるのが職業的登山者=山ヤさん&プロクライマーです。

危険を解かりながら山に登った=他人に迷惑をかけてはいけない、だから遭難しても自力で下山することは当りまえ。

そういう自己責任=自助の覚悟と準備が山ヤさん達はしっかりある。
だから実際、遭難しても自分で応急処置して自力で下りて来るワケです。
こうした「自己責任による登山」は本来、登山するなら誰でもアタリマエにする心構えでもあります。

そんなふうに山で死んでも後悔しないと覚悟して、芸能人が山に登るでしょうか?
本音のトコロは「テレビ企画だから」芸能人の仕事として登っている、それがアタリマエだと思います。
そういうアタリマエはあっちゃいけないことじゃないかなあって思うんですよね、

「生死をテレビ企画にしている=命を売り物にしている」

視聴率とるために「生死の際を映したい」それがテレビ企画の本音なんじゃないでしょうか?
そういう番組は登る芸能人はヒロイズム化しやすいし、観ている方も感動してみたりしやすいわけで、

「命を売り物にすることを感動している」

っていう風潮が疑問なんですよね。
って書くと反論する人もあるかもしれないですけど、そういうテレビ企画で登山した芸能人が死んだら・どんな反応しますか?

山で死ねて本望だったなあ、

なんてこと遺族に言えませんよ?だって「テレビ企画で」死んだのであって「山で」死んだんじゃナイですから。
だからもし「山に好きで登って死んだんだから文句言うな」なんて言ったら遺族の方に刺されて当然ですよ?
だってその人は「芸能人=テレビ界で生きる人」であって「山ヤ=山で生きる人」じゃない。

プロクライマーや山ヤさんも山で亡くなることがあります。
そのとき遺族の方は覚悟ごと呑みこんで受けとめます、「山で生きる人」だから「山に死ぬ」ことも覚悟なわけです。
山は自助と相互扶助、もし救助されなくても恨みっこなし、誰のせいでもなく本人の判断ミスと運の尽きだと呑みこむ。
なにより遭難した人のために救助者が死ぬなどあってはいけない、そうした巻きこみ二次災害は遭難者本人への名誉棄損です。

そこらへん勘違いした漫画家がいるんですよね、遺族が遭難救助隊に土下座させるなんてシーンを描いて。
遭難事故現場に遺族を救助ヘリで連れて行く~なんて描いてるあたり山と救助のリアルを知らない人間だなと。
ああいう安易なヒロイズムは本職の救助隊員さんたちに迷惑をかけます。

そういうヒロイズムが誇大化したのかなあって思ったのが「芸能人の登山理由」への疑問です。

“福島への応援としてエベレスト登頂しました”

ああいう考え方は傲慢に想えます、だって「自分がやりたくて危険に踏みこむ」のが山だからです。
ただ「自分がやりたいこと」を正当化するため「応援として」を利用していると思えてしまいます。

エベレストの登山費用は高額です、その費用集めに登山家たちは誰もが苦労します。
そのためスポンサーを探す方も多いです、それを「テレビ企画」や「チャリティー」にすればスポンサーがつきやすいのも現実です。
いわゆる商業化・ショービジネス化=「有名になるor金を得るチャンス」としての登山、これだと資金もサポート隊員も集めやすくなります。
そこでの目的は「山」じゃなく「著名度or金」賭博のようなもんです、だからこそ自費で登る山ヤさんもいます。

山野井泰史さん、って方がいるんですけど世界最強のクライマーと言われていました。
未踏ルート開拓、単独無酸素登頂、北壁踏破、偉大な記録たくさんな山ヤさんですけど、山好きじゃないと知らないかと、笑
なんであまり知られていないかって言うと「宣伝が下手というかしたくない」ようするに「好きなことやってるだけ」だから。
商業化したら山に対して純粋じゃなくなる、登ることに理由づけしたら山に失礼だ、そういう考えをされる方です。
そんな鉄人かつ哲人な方ですけど、雪崩からの自力下山で負った凍傷から指をいくつか失ってしまいました。
それでもトレーニング黙々とされているんだとか。

ただ山に登りたいから登る、山の危険性を越える努力しても良いから登りたい。
ただそれだけで山野井さんはトレーニングを続け、山を執筆&撮影し、奥さんと奥多摩で静かに暮らしています。

田中陽希さん「グレート・トラバース」っていう企画で日本百名山・二百名山を「自力」で踏破した方です。
延々ほんとに歩き続けます、山も一般公道も、海はカヌーで自力で渡る、カメラマン一名だけ交替で付いた?ってカンジ。
これはホント大変だろうなと…期間長いし体力保持も難しい、タイムロスすれば季節の変化で登頂の難易度も変ってしまう。
エベレストなど八千峰みたいに目立つわけもなく、テレビ企画でもスポンサーつこうが普通あまりやりたくないんじゃないかと。

ただ淡々と登って走る姿を追うだけのドキュメンタリー登山です、
そういう「淡々と」に皆が応援するわけなんですよね、励まされて病床から回復→登頂して田中さんに挨拶していた方もいました。
応援の人から差入されることも多くなって、でも「重量やカロリー計算などあるので」という理由で断ったりもするわけです。
たしかに登山の時はザックの重量は計算がある、標高変化と腹具合もある、そして「特別視は違う」ってことだそうです。

自分はただ好きなことをしているだけ、褒め讃えられることではないしヒーローじゃない。

そういうこと言うアタリ本物の山ヤなんだなあ、と思いました。
それは彼自身への戒めでもあるだろうし、感謝ある謙虚なんだなと。
ほんとうに「好き」だから感謝も謙虚もそこにある、それは「山」が彼の本分だからこそです。

山で記録を作ることは「ただ登りたい」にくっついてくるオマケみたいなもので、人の賞讃もオマケでしかない。

そういう単純さが山ヤさんたちにはあります、
この単純な「登りたい」が無くなってしまうと「山で無理をする」になり遭難事故にもつながりやすくなる。
だからナンラカの目的=名誉欲や金銭など報酬のために登ることを忌むワケです、遭難事故はホント迷惑だとプライドを持っているから。

だからこそ疑問になるわけです「福島のため」ってなんで言っちゃうのかな?と。

ただ好きで登りますって登っても同郷なら「同郷人が登ったんだ、すごいなー」ってなる、それだけで良かったろうに?
それを「ふるさと福島のため」なんて宣伝すると「おまえのために俺は苦労してやるんだ」と押し売り的になってしまう。
そういう押し売りは山の世界ではしちゃいけないNGなんですよね「登山は危険行為=他人に迷惑をかける可能性」だから。

なぜ登山で感動するかっていうと「危険行為を乗り越える」からで、だからこそ「感動を与える」目的で登っちゃいけない。

もし「感動を与える」ことを目的にしたいならエベレスト登山なんて選ぶべきじゃない。
危険とは=他人と生命に迷惑をかける可能性です、その迷惑によって「与える」感動などニセモノです。

被災地支援を目的にすれば「立派だ」と讃えてもらえる、金も集まる、どっちも現実に得られる利益です。
その利益についても周囲は反対意見を言い難いっていう特典もあります、だって「被災地支援=人道的行為」だから。
けれど遭難したら逆に支援を求めることになります、そうした現実にたいして「人道的支援」を目的と言っても矛盾でしかありません。
人道目的の登山と言えるのは山岳救助隊の方くらいです、が、そんなことご本人たちは決して言いません。

じゃ何すればいいのか?っていうなら例)その莫大な費用と時間で「福島の現実」を歩いて撮って記録する。

芸能人ならその本分で応援すれば良い、なぜなら「その人にしか出来ない」から。
同郷人にしか見えない本音がある、同郷人だからこそ映せるリアルな現実があるはずです。
復興の手伝いにいつも行っているなら、その記録を撮って記録映画として発表すればリアルな感動が生まれるのに?
エベレスト4回分の時間と費用をそこに懸けたなら、どんだけ素晴らしい記録映画を遺せたろう?残念だなあ…って思います。

ふるさとの哀しみと希望、そこに生きる人の心で遺せたなら?

それを国際映画祭に出品したら、どれだけの支援が福島に向けられるだろうかと。
そういうことは「芸能人」である彼の本分、彼にしかできない応援かなと。
だからモッタイナイと惜しみます、その4回分の費用と時間。

なんでソウイウ発想を彼自身しないのか?は、言ってしまえば「目立ちたがり」な本性だろうと、笑

地味に地道に映画こつこつ撮るよりも、世界最高峰エベレストに一発登って当てる方がヒロイズムは満ちる。
たしかにエベレスト登頂は大変です、が、ノーマル・ルート+ガイド付きなら体力適性と資金あればいけるのも事実です。
ある意味で記録映画はずっと大変かもしれません、映画技術を学ぶ労力、製作メンバーの人間関係、簡単なことじゃありません。
その「簡単じゃない」は一過性ではなくてズッと付きまとう苦労です、そんな苦労が隠されている作品こそ無限大の力を生めると思います。

ただ「登る」じゃない、大義名分モットモラシイ正当化は「山」に名誉棄損だなと。
そういう人は事故ると他人に責任を被せたがります、そういう迷惑登山は哀しいです。
ただ好き、それだけの理由に覚悟+準備してコレカラの山シーズン楽しめたらいいですね、笑


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山岳ブンガク:慟哭の谷―三毛別羆襲撃事件

2016-03-28 23:00:00 | 解説:用語知識
摂理相克



山岳ブンガク:慟哭の谷―三毛別羆襲撃事件

クマは雑食動物です、が、草食メインの雑食だと想っていませんか?

日本にはツキノワグマとヒグマが生息しています、
どちらもドングリや栗など木の実を食べますけど、魚も肉も獲って摂っています。
そんな熊たちは味を一度でも憶えるとまたソレを食べたがります、そのため東京都内の奥多摩でもクマによる被害が問題です。

庭の柿をクマが憶えて食べにくる→遭遇×事故

人と鉢合わせして驚いたクマが攻撃してしまうわけです、
奥多摩では数年前も、世界最強クライマーを謳われた山野井泰史さんがランニング中にツキノワグマと遭遇し負傷しました。
こうした不幸な遭遇を防ぐため柿を早めに採取→干し柿にする取り組みを自治体青年団で行ったりしています。

で、こういう事故クマはどうなるか?っていうと射殺されます。
人間を襲うことを憶えてしまうと、次からは人間を狙うようになるからです。

①襲った→勝った=自分の方が強い→次からは攻撃対象
②襲った→反撃され怪我をした=敵→次からは攻撃対象

という思考パターンがクマにはあるらしく、もっと恐いのが、

③襲った→齧った=自分の餌→食べ残しは俺のモノ=所有権主張→反抗・邪魔するヤツは攻撃

これらの思考パターンが惹き起した事件が三毛別羆襲撃事件=苫前事件、
ノンフィクション『慟哭の谷』のリアルです。



大正4年・1915年初冬に北海道苫前村三毛別でヒグマによる殺人傷害事件が起きました。
死者8名・うち臨月の胎児1名、重傷3名・うち後遺症で1名死亡。
これら死亡傷害をヒグマが起こした目的は「食人」です。

事件現場になった三毛別は開拓村でした。
その村の一軒で干してあったトウモロコシをヒグマが食べ、
11月30日それを家主が狙撃したんですけど、傷を負わせたまま逃がしてしまいました。

12月9日、もう雪の開拓村は氷橋=すがばしの橋桁材を伐採し搬出する日でした。
厳冬期の北海道原野では河川が凍るため船はNG、代わる通行手段として丸太+エゾマツなどの枝葉+雪で氷の橋を作りました。
そのため開拓村の男は出払った隙にヒグマは再び集落に現れ、トウモロコシを狙うヒグマに叫んだ母子が襲われ亡くなりました。
この母親はヒグマに食害=食われてしまったわけです、ここからヒグマの食人習性が始まり次の被害者が続くことになります。

12月12日に本部編成、そして12月14日ある熟練のマタギが加害熊を銃殺しました。
この三日間に出動した討伐隊員は官民あわせ約600人、鉄砲60丁、アイヌ犬十数頭。
ただ一頭のヒグマが惹き起した被害は大きすぎました。

なぜヒグマは人を襲うようになったのか?
なぜ被害は拡大化したのか、どうしたら防げたのか?
それらを解析し未然に防ぐために事件を研究したノンフィクションが『慟哭の谷』です。

『慟哭の谷―北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』木村盛武

著者の木村さんは北海道庁林務官を勤めた方です。
その職務中からヒグマに遭遇されることもあり、食人被害の現場を目撃したご経験もあります。
実際リアルにそこで生きている、その視点から過去の事件を解析していく筆致は惹きこまれ、向きあわざるを得ません。

この本で気になった点は、人食熊の頭部+体格です。
作中には三毛別の他も事例が挙げられていますが、巨体+体に比して頭部が大きいと言うクマが何頭かいました。
詳細データが無いためアクマデ推測ですけど頭部の巨大化=脳の肥大化があったのかもしれません。
そうした脳の異常があるとしたらその原因=肥大化が何によってもたらされたのか?
を解明するとクマの残虐性・食人嗜好を根本から防げる可能性があるなと。

人間も犯罪者の脳は欠損・異常が見られるケースが多いです。
この異常部分治癒を回復させる実験がイギリスやアメリカで行われました、結果、再犯率がカナリ低下しています。
どんな方法をとったのかっていうと簡単で、

栄養バランスの崩れ→脳の必須栄養素が不足→不足分を食事療法で補う→脳の正常化

ヒグマについても栄養失調は充分に有得ることです。
作中にもありましたがクマが巨体すぎるということは、

巨体=冬籠りできるサイズの穴が少ない→穴なし熊として冬もさまよう→栄養失調

ようするに・餌不足に陥る=脳に変調をきたしても不思議はありません。
クマは蜂蜜や果実など甘いモノを好むことが知られていますが、糖分=ブドウ糖が大量に消費される体質だってことです。
で、脳はブドウ糖がメイン栄養+無機質バランスで保たれている器官になります、ってことを考えると、

巨熊は冬期に栄養失調になる→冬をいくつか重ねる=栄養失調期間が長くなる→体調から脳まで異常を起こす

というメカニズムが成り立つワケです。
コレが熊の凶暴性にある原因だとしたら、森の食糧豊富+冬籠り穴の確保が予防になるのかなと。
山や森林の環境保全が課題になるワケです、かといって人間がどこまで介入すべきかは自然淘汰を考えると難題ですが。

あとは・脳の肥大化=食人により摂取された栄養素または毒素が原因、
っていう可能性もあるかもしれませんが、いずれにしても症例研究が必要になる話です。



登山者は熊鈴をつける、コレは平成の今も山の常識です。
所在を音により知らせることでクマとの鉢合わせを防ぐ=遭遇を避けることが目的です。

なんて書くとクマは臆病だしソンナ食人とか無いでしょー?
とか思うかもしれませんけど・遭難者の遺体が短期間で白骨化するって事例が今でもあります。

短期間で白骨化=野生獣に遺体が食べられた、

ってことです。で、現代日本で肉食雑食獣がどれくらいいるのか?
タヌキもキツネも雑食動物です、そしてツキノワグマも雑食で、ヒグマは今でも人身事故件数が多いです。
ツキノワグマはヒグマより小型で獰猛性も低いと思われがちですが、野生獣の死骸を食べていたという報告もあります。
ようするに・人間の味を知っているツキノワグマも存在し得るってことです。

臆病で火の気や人間を避ける、それは自然界で健全に生きているクマの習性です。
けれど一度でも人工物の味を知ってしまえば人里に近づき、オイシイ食料を求める貪欲性が臆病を超えてしまいます。
ようするに以前の習性から逸脱するワケです、そんなクマは人の気配もオカマイナシに食欲のためなら人も民家も貪婪に襲撃します。

今、ある学者が捕獲したクマを遠方に放すって取り組みをやっているそうですが、
クマの行動範囲・貪婪性・執着性・復讐心などから考えると、戻ってくる可能性と後々どうなるか恐いなって思います。
こうしたクマのリアル生態はある意味、自然界の縮図でもあります。

クマとの共生をどうするべきか?=クマの生息地である森林問題に直結するワケです。



森が食料の宝庫であればクマは人里にくる必要がありません。
それでも柿=甘い果実や、人の食べ残し=美味しいモノを知ってしまえば人里に来る可能性は大です。
ソコラヘン考えてから山歩きすると「森」にある陰翳も美しさも見られるんじゃないかなって思います。

いま登山はテレビ番組も多く流れて、ちょっと前には山ガールなんて言葉も生まれて、
ボルダリングやってるイケメン俳優はカッコいいみたいな空気もあるらしく、
山=ファッションみたいになっていますけど、

でも、山は危険だらけです、マジで、笑

遭難事故なんて当り前みたいに起きます、その大半は山を知らない人間です。
スポーツジムのクライミング施設とリアル山は違います、が、そこらへん解かっていないから事故るんだろうなとも。

クマなんか遭わないと思ってるし、
踏みこんだ落葉or雪の下が崖である可能性も知らないし、
登山道以外のルート=遭難ヶ所が多いんだよってことも知らない、だから道に迷って崖から転落するし、
食べ残し放置→クマが里を襲うことも・ビニール食べた鹿が腸閉塞で死ぬことも、タヌキたちが食品添加物で中毒死することも知らない。
山の日没が平地よりカナリ早い・南斜面と北斜面の温度差も知らないし、雪崩や雷雨の予兆も気づけない。

山は綺麗です、その美しい恩恵には危険もあります。
そうした自然の二面性を『慟哭の谷』は考えるヒントをくれるかなと。


撮影地:撮影地:森@神奈川県、湯川@栃木県、鹿@山梨県八ヶ岳山麓

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山岳ブンガク:森の本―Forest Story

2016-02-28 23:54:05 | 解説:用語知識
There’s more of wisdom in it



山岳ブンガク:森の本―Forest Story

山や森をちょっと覗いてみたくなったら、

『森の本』ネイチャー・プロ編集室/角川書店

山森の写真×解説文の本です、が、ただの写真集とアナドルナカレ、笑
山歩きで知っていると楽しいコト+基礎知識などなど解かりやすく書かれています。

1.水のあるところ
2.動物たち
3.静もる森
4.うつろい

こんな4章に分れているんですけど、
山林と水の関係性から動物の生活、森の四季に樹木のアレコレ、
いつもナントナク見ていたことが、精巧なメカニズムに織りなされる世界だなって楽しめるかなと。



ナンテ書くと難しいのかな?って思われそうですけど、きれいな写真で絵本感覚に親しめます。
添えられている文章も美しい日本語でつづられて、詩から解説文までノンビリと読めて好みです、笑
帯に「小さな生命の壮大な物語」と書かれていますが、誇大広告ではないなーと思わせてくれる本です。

小学生には漢字が多めかもしれませんが、動物写真がカナリかわいいのでウケると思います。
ヤマネ、シマリス、野ウサギ、オコジョ、カモシカ、フクロウ、
森のアイドルせいぞろいで、大人でも萌えます、笑

自然と人間の共生なんていうと仰々しいけれど、自然に敬意を払うっていうコトが根っこから理解できる本です。



ソンナワケで夏休みの自由研究ネタ探しに好い本だろなって思います。
親子で読んで一緒に楽しんで、話しあって一緒に学んでいくことは共に伸びれるかなと。
ってカンジに、大人も子供も楽しめる本っていうのはコミュニケーション・ツールでもあります。

写真を見て、わーきれいだなって想えたら解説も読みたくなる。
見て読んで、その場所に立ちたくなったら登山の知識×装備×技術きちんと、で一歩へ。

そうやって本→リアル現実に踏みだすと、本より美しい世界を歩けます。



The sun, above the mountain’s head,
A freshening lustre mellow L28
Through all the long green fields has spread,
His first sweet evening yellow.

Books! ‘it’s a dull and endless strife:
Come, hear the woodland linnet,
How sweet his music! on my life,
There’s more of wisdom in it.

太陽、山の頂点めぐらせて、
澄明やわらかな光は
はるか緑の大地あふれて、
黄昏あまやかに輝き初める。

本か、「それ」は鈍らす果てない論争だ、
おいで、森の紅雀を聴いてごらん、
森の音はこんなに香り高い。僕の全て懸けていい、
そこに本を超えた叡智あふれている。

【引用詩文:William Wordsworth「The tables Turned」抜粋&自訳】


撮影地:カタクリ・森@神奈川県、ヤマネ@山梨県、ふきのとう@群馬県

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山岳事情:遭難事故×携帯電話

2016-02-18 23:54:24 | 解説:用語知識
山のリアル



山岳事情:遭難事故×携帯電話

淵から凍てつく氷瀑、昨年一月の三頭大滝です。
落差33メートル、標高1,098メートルにある東京都檜原村にある滝です。
三頭山は標高1,527.5メートル、二千メートル未満&都内だけど例年これくらい凍結します。

で、滝写真なのになんで滝ナンタラいう題名じゃないのかっていうと、↓昨日のニュースから。

【遭難電話の女性、自力で下山「捜していると思わなかった」】

北塩原村の西大巓(にしだいてん=1,982メートル)に登り、13日に近くのスキー場に「道に迷った」と電話をかけた女性が、同日昼までに自力下山し、帰宅していたことが16日、猪苗代署への取材で分かった。
同署によると、スキー場の通話記録から女性の電話番号を特定。16日朝までに連絡を取り、無事と分かった。
女性は東京の会社員(49)で、12日に同山で1泊、13日の下山中に道に迷って電話をかけた。
女性は県警ヘリの捜索を見たが「自分を捜しているとは思わなかった」と話しているという。
同署や喜多方地方消防本部などは遭難事故として15日まで捜索活動を続けていた。
同署は「登山届の提出と、道に迷った場合は110番に電話をかけてほしい」と呼び掛けている。

【出典:福島民友ニュースhttp://www.minyu-net.com/news/news/FM20160217-050607.php】

こうした遭難×携帯電話の安易な通報はホント大迷惑です、絶対にやめてください。

どんなにアホらしい話でも本人から救助要請があれば山岳救助隊は出動するしかありません、
そうした安易な通報で出動したために、本当に救助が必要な遭難事故が手遅れになることもあります。
その命のリスクを負いきれますか?

コウイウ遭難者がたいてい言うコトは「自分は大丈夫だと思った」過信&無知まるだし常套文句です。
なにより「道迷い」とスキー場に電話→無事下山の連絡をしない、は、山の初心者というより社会的常識に欠けます。
典型的「登山前から遭難している」タイプじゃないかと思います、コウイウ遭難者はとくに標高2,000メートル未満の山でめずらしくありません。

道迷い=ルートファインディング能力が低い、経験値も知識も低レベル+登山図とコンパスを持っていないと言うコトです。
とくに低山は仕事道&水源巡視路が交錯して迷いやすい+無名の谷や沢も多い=雪崩もおきるし転滑落も当然にあります。
ルートを見失ったら山頂へ登りかえして正規ルートに戻る、山であたりまえの対処法です。

なぜ正規ルートに戻るのか?=山は谷も崖もある+冬は積雪が危険だからです。

雪庇=雪が庇上にのびて下は空間→踏抜いて転落
凍結=凍りついた足元に滑って転んで転倒・転滑落→受傷で行動不能または即死
低温=雪で体温を奪われて低体温症→思考力低下による道迷い・転滑落、行動不能による凍死

なんて危険が積雪期の山にはあります。



イイカゲンな装備+イイカゲンな山行計画=アタリマエに道迷遭難→安易な電話連絡&身勝手な行動→救援隊の徒労

また今回は冬山&単独行かつレベル低、最も遭難死しやすい事例です。
単独=自分ひとりで技術・知識を補って的確な判断をすることは簡単ではありません、受傷しての自力下山は厳しいです。
しかも女性で49歳だと体力もあまりない→早急な救助が必要だと判断されて当り前です。
そうした危険な状況下だからこそ救助隊も「一報」で動いてくれます。

救助隊員は厳しい訓練を毎日いつも欠かしません、そして救助要請あれば危険地帯にも踏みこみます。
そうした危険地帯&危険な天候でも耐えて救助活動できるように訓練する=訓練もハイリスク、命懸けです。
どんな救助要請でも「一報」あれば出動せざるを得ない、ただ「山が好き」だけで務まる仕事じゃありません。

「公務員ナンダシ救助が仕事ナンダカラ文句言ウトカ資格ナイデショ」

なんてこの手の遭難者は言います、でも同じセリフを救助隊員が受傷or亡くなったとき言えますか?
コウイウコトを救助隊員の家族に言ってもビンタされない自信あるほど正しい意見だと思いますか?

で、雪山は標高に関わらずドレダケ遭難死しやすいか?ってことを書こうかなと標高1,000アタリの冬記事です、笑



低温化で見られる現象が↓氷の花です、冬山らしい風物で三頭大滝へむかう登山道にもよくあります。
シモバシラというシソ科の植物が冬、外気の低温→植物内の水分が凍って膨張→茎が破裂して飛びだすまま凍る現象です。



植物の水分が凍って破裂なんてドンダケ低温かっていうと落差33メートルの滝も凍る状況です。
その滝の上部、沢水も流れの軌跡のこしたまま凍りつきます。



東京都内=南関東で標高2,000メートル未満、そんな条件下でも冬山は平地と異世界です。
今シーズンは暖冬、それでも三頭大滝は↓こんなカンジに凍結しています。



東京都の山岳地域、奥多摩の冬は標高1,000メートル付近でもこれだけ厳しいです。
で、ちょっと北上した栃木県の標高2,000メートル未満はどうかっていうと↓こんなカンジになります。



中禅寺湖@栃木県、標高1,269メートルの湖畔はわずかな水も凍ります。
湖面の風にとんだ飛沫そのまま木に凍てついて、雨氷と同じ現象が起きるワケです。
湖から少し離れてもコンナカンジ↓大気にふくまれる水分が冷たい樹皮にふれると氷化します。



ここまでの写真すべて標高1,000~1,200メートル付近で撮りました。
標高2,000メートルないと「タイシタコトナイジャン」なんて言う方もいますけど、これが冬山のリアルな姿です。

足場も氷化していてアタリマエ=転倒→怪我で動けなくなれば凍死もアタリマエ、
そのためどこの山域も冬はアイゼン(登山靴に装着する滑り止めの刃)推奨しています、
が、低山にアイゼンとかイラネーなんてヤツが転倒→怪我して行動不能→救助要請なんてことも多いのが冬と春の山です。

雪山は無雪期の山と別世界、難易度もコースタイムもまったく変わります。
たとえば富士山の積雪期はエベレスト登頂者でも遭難死するレベルで、白魔と呼ばれるほど高難度です。
冬富士=冬型気圧配置による豪風(一瞬でシャッター破壊する威力)+低温+コンクリート級に硬く氷化した雪はアイゼンが利きません。
条例で冬期入山規制を設ける谷川岳@群馬県なども同様です、積雪期のレベル変化はどの山でもあり低山も例外ではありません。
そのため積雪期は単独行を避けるよう各警察署の山岳警備隊・山岳救助隊は呼びかけています。

積雪期の剱岳単独行VSプロ集団に囲まれエベレストに登る、どっちが高難度かといえば剱岳単独です。
専門家と登る=安全管理+ルートファインディング+荷物の振分、体調管理や撤退のタイミングも面倒みてもらえる=「自助」レベルが低くて済みます。
また遭難は下山時に起こりやすいです、それは体調管理と撤退タイミングを間違えた→思考能力の低下がミスを惹きおこすという現実もあります。
それらを単独行では全て担えるだけの経験・技術・判断力が自身に要求されます、怪我しても自力下山する覚悟と根性もアタリマエです。
プロに守られた某テレビ登山企画で「カンタンジャン」と思ったら大間違い、体力適性や山名だけで登山レベルを量るのは危険です。

こうした勘違い、季節天候による変化や登山技術を量りまちがえて遭難するケースが多いです。
今回の猪苗代西大嶺もスキー場に電話+無事下山の連絡もしないことから初心者か自己過信タイプだと思います。
49歳で女性だと山ガール流行にデビューした初心者かもしれませんが、中高年に多い「経験年数で傲慢」自己過信のどちらかだと。
体力低下=判断能力も鈍るのが山です、若いころと同レベルを保つのは毎日訓練を積んでも難しい現実があります。



四月は平地で桜満開の春、でも山は真冬の別世界。
どれくらい違うかって例えば↓三頭山の四月はこんなカンジ、標高1,500級の山@都内ですら春山は雪の季です。


撮影地:三頭山@東京都檜原村、芦ヶ久保の雨氷@埼玉県秩父、雨氷と中禅寺湖畔@栃木県

真実が大事なんだよ、キミ・・・ 2ブログトーナメント
もし山に行ってみたいなー思われたら専門誌をちゃんと読みましょう。
る●ぶ・●Zなど旅行誌やライフスタイル雑誌にも特集組まれていますが、不十分すぎます。
そういう雑誌の地図は簡略すぎてアテになりません、ちゃんとした登山図+コンパスが道迷いを防ぎます。

たとえば羽根田治『ドキュメント気象遭難』『ドキュメント道迷い遭難』読みやすくてイイかなと。
金邦夫『金副隊長の山岳救助隊日誌』はかなりおススメですが、版が少ないため入手が難しいと思います。
いずれも気象変化や山の危険性・注意すべき点を描かれています、入門としての基礎知識&心構えに一読してみてください。
すこし知ったら登山雑誌『岳人』『山と渓谷』や山の専門書、モンベルなど登山専門の会社が開く登山教室もイイと思います。

山岳会に所属すれば知識も技術も教えてもらえる+同行する山仲間もできます。
ただし講習会も無く集まって登るだけ会はあまり安全と言えません、山のプロフェッショナルが在籍する会を選んで無難です。

で↓先日の記事から転載します。

山の鉄則ざっくり書くと、

低山でも装備きちんとする
○アイゼンの携行:低山でも秋から春先は凍結の可能性アリ、一度でも転んで墜ちたら遭難するのが山です。
○ヘッドライト携行:谷間や樹林は翳りやすく暗い、急な降雪や濃霧で見通し悪化、など照明器具が必要になることも。
○水は必須:適切な水分補給は高山病も防ぎます、怪我をしたとき傷を洗うためにも必要です。
○塩分糖分ミネラルの補給:行動食に飴やゼリーなど便利です、汗をかいて塩分やミネラル他を失うと脱水症状や疲労を起こすので早めの補給を。
○登山靴:登山前に履きならしておく+防水・滑り止めなど機能性よいもの+専用靴下。靴紐もエイトノットなど解けないよう結ぶ。
○温度調整できる+濡れない服装:雪と風と日蔭で気温低い×歩くと体温上昇→汗が冷えて低体温症なんてことも。
○熊鈴必携:クマは意表を突かれると襲ってきます、鈴の音で「いるよ」と知らせることで遭遇を防ぐってワケです。

遅くても14時には下山完了※ヘッドライト携行
日が傾く→斜面で影になる→15時には真っ暗なんてことも。
特に冬山は午後になると気温が下がります、登山道が帰りは凍結している可能性も。

沢は雪崩の巣になる
低山でも沢=斜面がおちこむ集中点は雪崩の直撃を受ける可能性が大きくなります。
ちいさな雪崩でも足をとられたら滑落&転落→遭難事故につながり危険です。

もし迷ったら山頂に戻る
山頂は必ず正規ルートにあります、正規ルート=危険地帯を避けていける道です。
登山道から逸れると危険地帯=崖や滝につっこんで転落死の可能性大、疲れていても来た道を戻ることは鉄則です。
とくに冬は積雪で道が埋まるため迷いやすくもあります、雪で崖に気づかず踏抜いて滑落…なんて事故も多いです。

ビバークは北斜面ではなく南斜面
北斜面と南斜面の温度差はカナリ違います、どうしてもビバーク(緊急露営)することになったら北斜面は避けましょう。
南斜面で風が避けられる+雪崩のトレースが無いポイント+沢から離れたところで、手足など末端を冷やさない工夫をしてください。
凍傷すれば行動不能に陥ります、特に冬期は濡らすとそこから凍るため沢の渡渉はホントに危険です。

ホント↑ざっくりなので専門書&山慣れている人に教えてもらってくださいね?笑

カメラ使う場合の注意点
○肩に架けたダケで歩くとカメラの重みが振れる→バランス崩しやすくなり危険です。
○遣うときだけ安全な場所でザックから出すorザックのチェストハーネスで固定する、など気を付けてください。
○山での三脚利用はぶっちゃけキケンです。
・背負った三脚をひっかけor風に煽られ転滑落、据えた三脚の重心を崩して転滑落…なんて事故も。
・三脚で根や芽を潰してしまう=貴重な植生を失ったケースが頻発しています、アナタの一枚より環境保全のほうが大事です、笑

丹沢や奥多摩は「低山だし」っていう油断=無知識から起きる遭難事故がほとんどです。
ニュースでも見ないよなんて想うかもしれませんが、頻発すぎて載らないって実情もあります。
山は「自助」が当りまえ、安全管理きちんとして楽しんでくださいね、笑

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言葉説明:アルパインクライミングact.1

2012-11-22 04:03:29 | 解説:用語知識
山の言葉たちと技術



言葉説明:アルパインクライミングact.1

アルパインクライミングの和訳は山岳登攀、天然の岩壁や氷壁を登ることです。
読んで字の如く山の岩壁を攀じ登る登山方法で、氷壁の場合はアイスクライミング=氷壁登攀とも言います。
これには様々な技術と道具を使いますが、第58話「双壁」に多く登場した用語を補記します。

【アイゼン】
正式にはシュタイクアイゼンと言い、クランポン、かなかんじきとも言います。
固い雪や氷の斜面を登降する際に登山靴に装着する、鋼鉄の爪「ツァッケ」がついた滑り止めの金具です。
ツァッケの材質はクロムモリブデン鋼やチタンなどが使われ、10本爪または12本爪が標準になります。
12本爪アイゼンには爪先部分に2本or4本の蹴爪「フロントポイント」があります。
4本爪の「軽アイゼン」は夏の雪渓などで使います。
アイゼンの裏に雪がつくことを「団子になる」と言って、これを防ぐ板を「スノーシャット」と言います。

 


【ハーケン】
ロッククライミングで確保支点を作るために、岩の割れ目に打ち込む金属製の楔です。
ハーケンが岩にしっかり撃たれ効いていると、打撃音が「キンキン」と甲高い音に変化します。これを「ハーケンが歌う」と言います。
シャフトがネジ式で回転し捻じ込むタイプは「パイプスクリュー」「アイススクリュー」です。

【カラビナ】
ドイツ語「カラビナハーケン(Karabinerhaken)」の省略形で、バネ式の開閉部がある金属製の輪っかのことです。
プロテクション=確保点になるハーケン等とザイルを繋ぐ、ハーネス=安全ベルトを繋ぐなど、様々な登攀器具を接続する器具です。
開閉部は「ゲート」といって、ゲートを固定できるタイプは「安全環付きカラビナ」と呼ばれます。

【ハンマー】
ハーケンを岩の割れ目に打ち込んだり、回収したりする手鎚です。

【ピッケル】
氷雪地帯を登攀する道具で所謂「つるはし」のことで滑落停止、足場切り、確保支点など多様に遣われます。
ピッケルの柄の部分を「シャフト」、金属頭部は尖った方が「ピック」平たい方が「ブレード」です。
差シャフトの先端になる「石突」を「スパイク」「スピッツェ」とも言います。
ピッケルと手首や体をつなぐベルトは「ピッケルバンド」です。



【コンティニュアス】
ザイルで結びあった複数の者が同時に移動する登り方です。
2人組ならトップはランニングビレーをとりながら、セカンドは回収しながら登攀します。
トップで登攀をリードする人が「リード」、ラストで登攀するザイル他を回収する確保者が「ビレイヤー」です。
国村と宮田は基本この方法で、国村がトップ=リード&宮田がセカンド=ビレイヤーを務めています。

【ランニングビレー】
メインザイルをハーケンにセットすることで、リードで登っているときにとるプロテクション=確保点のことです。
中間支点とも言い登攀者(トップ=リード)と確保者(セカンド=ビレイヤー)の間に取る支点を言います。

【アンザイレン】
ザイルでお互いを繋ぎあい、万が一の滑落などに備えることです。
アンザイレンパートナーの力量や体格差が大きいと、実際に滑落や墜落があった時に支えきれず、共倒れになる危険があります。
そのため素人でのアンザイレンが原因で、集団滑落や墜落といった遭難事故の実例も少なくありません。
第58話「双壁8」冒頭に書いたE・ウィンパーの仲間4人が滑落死したのも、この実例です。

【予備日】
山行にかかる予定日数に、アクシデント等で遅れる事を予想してプラスした日。
特に遠方や難易度の高い山である場合には設けて、焦って事故を起こさないように備えるものです。

【ルート】
登山する道筋のことです、この道を見つけることを「ルートファインディング」と言います。
この能力が国村は秀でている為、「バリエーションルート」と呼ばれる道標無しの登攀ルートも得意です。
バリエーションルートで作中なら槍ヶ岳北鎌尾根、マッターホルン北壁シュミッドルート、アイガー北壁ヘックマイヤールートなど。
一般的な登山道は「クラシックルート」や「ノーマルルート」、マッターホルンならヘンリル稜、アイガーはミッテルレギ稜などです。

【行動食】
登山の時に疲労防止に栄養補給する食べ物で、高カロリーかつ吸収が速いものが好まれます。
飴やチョコレートなど甘いものからサラミなど、個人の好み次第です。
宮田は蜂蜜オレンジのど飴、国村はアーモンドチョコレートを好んでいます。






【引用資料:高知鷲尾山岳会HP・登山用語集】

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