ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

柄の名前

2006-07-25 18:55:58 | 着物・古布

タイトルに反して、名前の付けようがない柄・・。
これは銘仙です。これで幅いっぱいですから、かなり大きい柄というのは
わかっていただけると思うのですが、それにしても・・なんなんだこれ・・。
一応右側は「花柄」・・らしいのですが、なんとなく花・葉・茎というより
「田楽」とか「バーベキュー」を連想してしまいました。
左の幾何柄部分はもう説明のしようがありません。見たままで・・。
よくまあ、こんな柄を着たものだと思います。
布団でないことは確実です。私が着物を解いたんですから。
一番下に、少し「ヒキ」で写したをアップしました。
もうひとつ、こちらはすっきり銘仙。





カマ柄で、ポン・・ポンという感じでとんでいます。
これも柄としては「色紙に雪輪」らしきもの・・としかいいようがありません。
それでもまぁ、これならまだ着てもいいかな・・と思いますが。
銘仙と言うのは、本当にポップなもの派手な色あわせが多くあります。
ちゃんと「何々柄」と名前を言えるようなものもありますが、
たいがいは「・・・だと思う」「・・・のように見える」「・・・らしい」
それがまた銘仙の特徴なんですが、昭和の初期から戦前まで、
爆発的に流行しました。町中こんなのを着ている女性ばかりが歩いていた頃に
ちょっとタイムスリップしてみたい気もします。
「サイケデリック」の比ではなかったりして・・・。

いつも着物やハギレをご紹介するとき、私は「○○柄」という言葉を使います。
「模様」とか「文様」或いは「紋様」という言葉はあまり使ってない気がします。
実は昨日のブログで「もよう」という言葉を使いましたが、
自分で書いておきながらなんとなく違和感があります。
辞典などで調べますと、文様と紋様はあまりはっきりわかれておらず、
文様の中で「紋章」風のものを使ったものが「紋様」と呼ばれるとあります。
また、模様は図柄のこと・・。
着物の説明の時は、どれを使ってもよさそうなものですが、
実は「呉服屋さん」ではこれ、ちゃんと使い分けているのだそうです。

文様・・・使われている柄や色、使われている図柄構成など全てを表すとき。
紋様・・・織の地紋のこと、染めたものは文様。
模様・・・図柄の構成全体のこと。
柄・・・・・単一のモチーフのこと。

呉服業界全体かどうか、そこまではわかりませんが、
言われてみれば納得・・の言葉と分け方です。
たとえば、下の写真はこの前アップした「絽の留袖」です。
これを例にとって見ると・・・、





まずは全体をいうと
「波に群鳥、、花、潮汲桶などを淡い色調で配した絽の留袖」
(留袖は黒なので色はパス)
紋様は「絽」なので地紋はなし。
模様をいうと
「流水と波しぶきに、蛇籠や桔梗、流れの中に潮汲桶を配して
水辺の草には多数の群鳥をが飛び立つ様を描いている」でしょうか。
そして柄、と言うところでは、この絵の中で何がメインとして描かれているか、
となると「潮汲柄」・・となるわけで、売られるときの名前なんかも
おそらく「潮汲の絽留袖」になると思います。
もちろん、説明するときには「柄」として「波」「流水」「桔梗」など、
ひとつひとつも単一のモチーフとして名前が挙げられます。

この「柄」と言うのは、言葉の意味として「同じ血のつながりをもつもの」
という意味があります。同属、の意味、よく書類などで「続き柄」という欄が
ありますね。このときの「ガラ」がこれです。
そうしてみると「単一のモチーフ」は「同属」であるわけで、
もみじ柄、といえば「さまざまな色や形のもみじの同属」が散らしてある、
ということですね。

和服の柄には、よく使われるものがたくさんあります。地紋でいうなら
紗綾型・麻の葉・桧垣・籠目・網代・流水・霰・雲取り・色紙・地紙
すぐに全部パッと柄が思い浮かんだら「着物好き」!?なんちゃって。
こういう地紋、つまり地模様の上に、さらに柄をおいていくわけです。
どんなものを置いても馴染む、オーソドックスな地紋もあれば、
地紋が大きくて個性的なために、それに合わせた柄を染めるものもあります。
もちろん無地もありますが、押しなべて、和服は「柄に柄」・・・
なにしろ、その柄の上に「柄のついた帯」を締め、
時には更に「柄のついた」羽織やコートを着るのですからたいへんです。

洋服はデザインというものが多種多様ですから、まずその「形」が
自分に合うかどうか・・から入ればいいわけですが、
和服はデザインは全部同じですから、その中でまずは自分に似合う色柄、
そして、その着物に合う色柄の帯、羽織・・となっていくわけで、
さらには「似合う着かた」・・がキメ、と言うわけです。
洋服を選ぶのとは別の難しさがあるわけですね。
それでも慣れてくると、このコーディネートが楽しくなります。
同じ着物なのに、帯がかわっただけで、まったく雰囲気が違ってしまう、
同じ着物と帯の組合せでも、使う小物で華やかにもおとなしくもなる、
羽織をきたとたんにしっとり落ち着く、或いはパッと若やいだ感じになる・・。
和服の「組合せの妙」は、やってみないとわからないんですね。

着物の場合、色柄の組合せも洋服とは違います。
また、洋服なら似合う色が着物だと似合わない・・なんていうこともあります。
特に若いヒトから「似合うかどうか着物だとわからない」と聞くことがあります。
でもあまり怖がらずに着てほしいと思います。
やっぱり習うより慣れろ・・ですね。

私は若いころ、背が低いのと、ヤセと首のラインが着物には向いていないのとで、
衿をツメ気味に着たり帯を胸高に締めたりするとバランスがとれなくて、
自分でもうまく着られている気がしませんでした。
中年過ぎて、チビはかわりませんが補正もいらなくなったし?!
首のラインの悪さをカバーするのに衿元ゆったりとか、帯も下目にゆったりとか
そんなふうに着られるようになって、楽しくなりました。
今になって、若い頃はやっぱり自由に着ることを知らなかったと思います。
決まり事はもちろん大事ですが、着付けの教科書のようにビシリと着なくても
よかったんじゃないか・・と今頃思っています。
洋服を着るとき、このセーターにはどのスカートがいいかしら・・とか、
アクセントにスカーフ・・とか、いろいろ楽しく考えて悩みますね、
着物も同じ、悩みどころは違うけれど、自由に自分らしく選んで
洋装にはない「主張しあう柄と柄」を折り合いつけさせて自分らしく着る・・、
着物を楽しむ醍醐味はここにある・・と私は思っています。


追記  柄ひとつじゃ感じがわかんない・・と友人が言ってきました。
    で、ちょっと大きく写してみました。やっぱすごい柄です。
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8 コメント

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大正~昭和初め (ぶり)
2006-07-25 21:10:14
いろいろと豊富な時期なので、

ワクワクします♪
返信する
Unknown (陽花)
2006-07-25 21:25:06
私もとんぼ様とおんなじで

若い頃は帯は高い位置で締めましたが

年齢と共にだんだん下がって、この頃は

できるだけ胃のあたりは浮かすように

締めています。
返信する
えへ、全部分かります (雪花)
2006-07-25 22:04:44
やっぱり私、筋金入りの着物好きだぁ~(笑)



業界ではこんな区別をしていたんですね、気づかなかった。今まで話がかみ合わないってことはなかったけど、微妙に違うことを指していたのかも???



銘仙ってほんと面白いですよね。

ポップでキッチュで大胆。

今の若い子が騒ぐのも納得、の魅力がありますね。

でも私は着こなせないかな
返信する
Unknown (うまこ)
2006-07-25 22:18:43
ガラが良いとか、わるいとか、柄にもないとか言いますが、「同じ血のつながりをもつもの」という意味を知ると、なるほど、なんて思いました!

一方、着物の色合わせ、柄合わせはまだまだ難しくて、つい一歩退いてしまいます。。。
返信する
意外と着てみれば (えいどん)
2006-07-26 00:12:16
そういうものなんだ、と受け入れてるのかもしれません。それこそ着る人の「ガラ」に合ってたら違和感ないです。銘仙は普段着だから、そう気を張ってかまえて着てる訳じゃないし・・・わたしも「何じゃ!この柄!」みたいなのを普通に着られるようになりたいです。道はまだまだ遠く続いているようですが・・
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-07-26 10:37:41
ぶりねぇ様

あの時期は、ほんとに一種「なんでもあり」みたいな

時期ですから、銘仙なんてピンキリで楽しいですね。



陽花様

そうそう、食事をしてもラクになりました。

おなかも出てきて、ちょうどのっかるし・・?!



雪花様

やはり「スジガネ」はいってましたか!

銘仙は、日本の着物柄の歴史の中でも

異種だと思います。おもしろいですね。

けっこう具象もあるんですが、具象になると

あまりおもしろくないんですよね。フシギな柄です。



うまこ様

柄・・いわれてみればなんですよね。

着物の柄あわせは、もう自信持つよりない・・です。

悩みますよね。



えいどん様

周りがみんなそうだと、逆に「遅れをとっては」

というのがあるかもしれませんね。

流行と個性・・永遠のテーマでしょうか。

「何じゃ!この柄!」いいですね、

こなしたいです。私も道は遠そうですー。
返信する
面白い柄ですね (ほろ)
2016-12-17 06:56:06
過去記事にコメントごめんなさい。
この柄、櫛と簪に見えます。
ほんと、おでんみたいですねー。
返信する
Unknown (とんぼ)
2016-12-18 00:42:55
ほろ様

コメントありがとうございます。
お返事遅くなりましてすみません。

たぶんそのつもりなのかとおもいますが、
花かんざしよりはどうしても「おでん」が先に…
あ、これは単に私が「花よりだんご」なのでしょうか?
返信する

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