ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

昔話のモスリンじゅばん

2008-09-27 15:46:41 | 着物・古布
どこかまともに柄の取れるところはあるのだろーか…というほど、
「穴模様」の多い、モスリンのじゅばんです。もったいないねぇ。
まぁ小さくこまめに取れば、素材として取れるでしょうから、がんばってみます。

さて「昔話柄」、トップはおなじみの「カチカチ山」と「サルカニ合戦」ですね。
うささん、今まさにたぬさんの薪に火をつけたとこ、火打石持ってます。
このあと、背中とお尻をヤケドしたたぬさんに「薬だ」といって、
唐辛子かなんか、すり込むんでしたよね。あげく泥舟で「さよーならー」…、
仇討ちとはいえ、うささん、やりますなぁ。
カニさんのほうは、大きなおにぎり持って、おいしそうです。
こちらも「仇討ち」話しですね。ほかに出てくるのが、
オーソドックスなのは「ウス・栗・蜂」、ちょっとローカル色はいると
「ウス・栗・牛の糞」…。どっちも読みましたが、
やっぱりきれいな?ほうが広がったんですかねぇ。
ちなみに「牛の糞」のほうは、囲炉裏ではじけた栗でヤケドして、
外の井戸にいこうとしたサルが、入り口で牛の糞で滑って転んで、
その上にウスが飛び降りてのっかる…だったと思います。
どっちにしても「悪いことすると報いがありますよ」のお話しですが、
いまどきの子は…読んでるのかなぁ。

もうひとつはこちら、


   


これは、販売のときの説明に「鶴の恩返し」、とあったのですが、
よーく見るとちと違いますね。
障子の向こうで誰かが影絵をしています。
影になって写っているのは「キツネとツル」のようです。
こりゃ「イソップ物語」ですね。
キツネがツルを食事に招待し、平皿にスープを入れて出す、
ツルはくちばしが長くとがっているので、スープが飲めなかった、
次にツルがキツネを招待する、ツルは細長い口の壺に肉を入れて振舞うが、
キツネは壺の口が細すぎて、肉が食べられなかった…というお話し。

こんな和柄でイソップなんて、ちょっとミスマッチ、と思うかもしれませんが、
「イソップ」って始まりは紀元前です。
子供のころに読んだ本の巻末にあった「講釈」のうろ覚えなんですが…。
ギリシャの奴隷が創作したといわれていますが、長い間に当然、
あちこちの寓話などが混じりこんできたのではないかと思います。
その後あれこれ翻訳されて広まったわけですが、
日本にも江戸以前に長崎からちゃんと伝わってるんですね。
その後、「いそぼ物語」という名前だったと思いますが、出版されています。
当然、洋風の名前や設定などは、和モノに変えられたでしょうし、
たぶんですが、こういう寓話というものは世界中にありますから、
「いそぼ」にあわせて日本でのお話しも、混じったんじゃないでしょうか。

ともあれ、日本でも「イソップ物語」は、昔からあったわけで、
このじゅばん、たぶん昭和初期のものだと思いますが、
そこに「和柄」としてイソップがあってもおかしくないわけですね。

こちらは平絹のはぎれです。「舌切り雀」ですね。
おじいさんが杖をついて「雀はどこじゃ、お宿はどこじゃ」と
訪ね歩いていると、かわいい雀がお出迎え…。
いや、お話に出てくる雀は、かわいい女の子で振袖なんぞ着ていますが、
これは「雀踊り」の衣装ですがな。まぁ男の子の着物ですから、
そのアタリはしかたないですかねぇ。
「待ってたんですよーおじいさん、こっちですー」ってところでしょうか。


   


ちなみに「雀踊り」は仙台の踊り、築城に参加した石工たちの踊りが始まり、
といわれています。羽を広げ、エサをついばむような動作をするところから
「雀踊り」というのだそうですが、歴史の長い踊りなんだそうです。
和服の柄に雀が使われる場合、稲との取り合わせ、
或いは案山子との取り合わせで、羽裏やじゅばんの柄などによく使われます。
その場合はどちらかというと「豊作・豊穣」の意味で。
また雪持ち笹に雀、或いは雪と雀、の場合は、
ふっくらと丸まって暖かそうな雀の姿の愛らしさと、
冬を元気で越す小鳥のめでたさ、とでも言うのでしょうか、
そういったことで、こちらは着物の表の柄などにも使われます。
いずれにしても、四季を通じて人の暮らしにもっとも近くにいる鳥として、
一番なじんでいる鳥の代表だったのでしょうね。
でもってこちらはおじいさんが持ち帰ったつづらから、
宝物がたんと出てきて、おばあさんが驚いているところ。


   


宝物、この場合は「ほうもつ」ですが、周りにも散らしてありますね。
鍵・宝珠・丁子、蓑・かさ・七宝・分銅…定番です。
このあとおばあさんは、欲にかられて大きなつづらを持ち帰り、
結局「妖怪」に追いかけられるわけですが、
お祝いの着物ですから、そこまでは描いてありません。

こんな感じの「昔話柄」は大人の和服でも見られます。
「物語」は、それだけでも絵になりますから、
もっと何かお話し柄がでるといいなぁと思っています。
「牛方とやまんば」とか「三枚のお札」とか…いや路線が違うってば…。

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6 コメント

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Unknown (陽花)
2008-09-27 21:13:23
昔話は子供の頃に読んでいますが、
記憶が悪くて途中が抜けていて多分
こうだった・・・というあいまいさです。
こういう昔話柄の着物やお襦袢を小さな子が
着ていたら可愛いですよね。
返信する
夢がありますね。 (akkomam)
2008-09-27 22:54:31
子どもたちが小さいころ、ウールの着物に
あわせて襦袢はモスリンで仕立ててもらっていました。
娘の柄は覚えていますが、息子のは何の柄だったかしら?

童話のかわいい絵柄は色合いもよく楽しいですね。

着せてみた~いと思う息子は184センチ
の40台の一家の柱になっています。

今では着物はまったく着ず、ジーンズ大好きの世代です。
返信する
謎が解けました! (りら)
2008-09-28 00:57:39
私、この舌切り雀の雀踊りの柄の帯を持っているのですけど、舌切り雀だと分かっていませんでした!
お爺さんを雀踊りにおける猿回しの回す人(?)とか越後獅子の親方とか、そういう人だと思ってました。
ああ・・・・・
この柄、私の帯の柄に本当にそっくりです。
こういう物もあるのですねぇ。

昔話にイソップが入っているというのが、なんとも洒落ていますね。
モスは再利用後の保管も大変でしょうが、巧く何かに蘇らせることができると良いですね~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-09-28 14:10:36
陽花様
お話し絵本が大好きで、学校の図書室でも
そんなのばかり読んでました。
肝心なところが抜けてるってありますね。
始まりと終わりだけ知ってたり、
結果を忘れてたり…。
自分のじゅばんで、お花がいっぱいのを
覚えています。モスリンのあの蛍光色が
懐かしいです。


akkomam様
ちょっとちくちくするけれど暖かい、
モスリンのじゅばん今でももっています。

184センチ…見上げるようですねぇ!
最近は、子供にきものを着せることが
なくなりました。
お正月なんて、近所の男の子は絣、
女の子は手まり柄とか花柄とか…
かわいかったですよねぇ。


りら様
おぉ、雀踊りをお持ちでしたか。
男物に多い柄ですが、たいがい人が着物を着て
踊っているものが多いので、
雀そのものが着物を着ているのは珍しいですね

モスはほんとに虫食いがネックです。
昔は、モスの腰巻の古いのなんかは、
母が腰紐にしたりしてましたが、
これだけ穴があると、紐にするのも難しい!
返信する
ほしいな~ (yumeko)
2012-07-10 11:19:33
舌切すずめ良いですね!、私も古布好きです、お伽噺も童話もディズニーランドも好きです。
自分のサイトに動くおとぎキャラ作って載せました~、時々お邪魔して居ました~~。
http://www.geocities.co.jp/ahooo_yumeko/
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-07-10 17:56:50
yumeko様

ブログと動くおとぎキャラ拝見してきました。
私、牛若丸とからす天狗が好きですー。
ほんと、御伽噺の主人公は個性的でかわいいですね。

着物って、オトナでも「昔話柄」が着られるし、楽しいです。
いろいろ持っているのですが、ついついお話を思い出していたりして、
片付けのつもりがちっとも進みません。
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