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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

久しぶりの羽裏

2007-05-12 13:20:32 | 着物・古布
京都の風景、清水さんと物売りの女たち。
男物の羽織で、表地はちょっとカサッとする感じの軽い正絹です。
大きなダメージはないのですが、ヤケもちょっとあるので、
着用はギリギリライン…かなぁ、というところ。

右のお寺はいわずと知れた「清水寺」ですね。
私はいつも五条の下から、ちゃわん坂、表参道、二年坂、三年坂、高台寺道、
八坂さん、更に三条か、四条か…と、けっこう歩くのですが、
毎度清水さんの前は「素通り」…、無信心なことで。
いついっても人が大勢で、カレンダーの写真のようなだーれもいない時なんて
あるんだろうかと思っています。

写真は女性のところだけアップしてみました。
しかし、この絵を描いた人、どうして片手をアタマの荷物に
そえなかったんでしょう、これじゃ踊り踊ってるみたいです。


     



では「物売りの女性」の説明を…、アタマの上に載っているもので区別するなら、
小柴は「大原女」、はしごは「畑の姥(はたけのおば)」、花は「白河女」。
衣装はちょっと特徴的ではありませんね。
こんなふうに女性がアタマにものを乗せて、売り歩く風習は
鎌倉以前からあったといわれています。長い歴史のあるものですから、
時代によってその姿にも変遷がありますが、
現在特徴としての姿、としていうならたとえば大原女は筒袖に三幅前掛け、
手甲脚絆、手ぬぐいかぶって…という感じでしょうか。
これは初期のころに近い姿です。室町のころは短い着物に前帯、
江戸になると普通の着物の前裾を帯に挟む…という形で前掛けはありません。
つまりこの絵は「江戸時代」のスタイル…ですねぇ。
三人それぞれ売るものが違うのは、オンパレードにしたのでしょう。

小柴は要するに細いたきぎのことです。出家した「建礼門院」に仕えた、
阿波内侍がこの柴を売り歩いた姿をまねたのが大原女といわれています。
地図で言いますと、京都の町の外周のうち北東あたりが「大原」、
かつて都で使う薪や炭などの供給地でした。
そこから女性たちが、柴をかついで売りに来たわけです。

「畑の姥」というのは、なんでそんな名前なんでしょうねぇ。
はしごなどの木工品は京都の北西、あの北山杉を使って作ったようです。
バサマが子供のころは、よく来ていたそうです。バサマは長岡京ですから、
京都の南西です。ずいぶん遠くまで…と思いますが、大原女も白川女も、
けっこうな距離を歩いています。昔のヒトは健脚だった、アタリマエですが。
「はしご」の上に乗っているのは「くらかけ」、「鞍掛」ですね。
形は馬の鞍を乗せておく台ですが、用は「踏み台」です。
バサマの話しによればこの絵のように頭上に、はしごとくらかけを載せ、
いつも同じ売り声で…とここでいつもバサマがそのまねをするのですが、
てっぺんからぬけるような声で
「はしぃ~~ごにぃ くらぁぁかけぇ いらんかえぇ~、
 はしぃぃ~~ごぉ どぉぉ~~どすぅ~~~」というのだそうで。
花売りは「はぁなぁいらんかえぇ~~ はぁなぁどぅどすぅ~~」、
いやーリアルタイムで聞きたかった。バサマじゃねぇ、確かに「姥」だけど!

一番右は「花売り」、というと「白河女」です。白河は京都の東一帯、
花の栽培をしていたそうで、そこから花を売りに町へ出てきたわけですね。
京都では「大原女祭り」とか「時代祭り」などで、
昔ながらの姿を見ることができます。

同じ「~女」とつくもので「桂女」というのがあります。
これは白い布で髪を包み、それをターバンのように巻いた姿で、
季節には鮎、そのほかの時期には飴などを売り歩きました。
この桂女というのは、ほかの「職業婦人」とは違って、
たいへん歴史のあるもの…でして、元々は「巫女さん」系。
なにしろ神功皇后が応神天皇を御産みあそばされたときに立ち会ったと…。
その助産をした侍女が「桂」(京都の南西で桂離宮のあるところ)の出身、
その侍女がお産のときの「腹帯」を賜り、頭に巻いたのが「桂巻」、
といわれています。元々お産に立ち会うような巫女さんですから、
いわゆる「安産祈願」「長寿祈願」などがオシゴトだったわけでしょう。
それで時代が下がってくると、出陣や婚姻、成人などの祝い事に、
「めでたい言葉を唱える」「花嫁に付き添う」などを生業としていました。
実は、明治まで「女系家族」を守り通したのだそうです。
たいしたものですね。

さて、ちょっとズッコケた「踊る大原女」の絵ではありましたが、
わずかに使っている「金」などもまだきれいですし、
ちょっと解いてみようかなと思っています。

今日は天気が下り坂、全く落ち着きませんね。
皆様体調を崩されませんように。







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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (陽花)
2007-05-12 14:13:49
なるほど!バランスをとっているのかもしれませんが踊っているように見えますね。
それにしても物覚えがいいですね。私なんか親から聴いた事でもそんなにしっかり覚えていませんよ~。
ほんとうに感心してしまいます。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-05-12 17:44:32
陽花様
いやもー「耳タコ」になるくらい、
聞かされたんですよ。この「はしごにくらかけ」は
実演つきでしたからねぇ、すごかったですー。
今やもうムリですが…。
返信する
まるで掛け声が・・・・ (蜆子)
2007-05-12 17:46:38
とんぼさんのブログから、物売りの声が聞こえてくるような気がしましたって、そんな京の物売りの、どーーどす、なんて聞いたことないんだけど。
せいぜい、夏の金魚え、きんぎょ~、さおや、さおだけ~、なんてのしか聞いたことないんだけど、由緒ある物売りもあるのどすな、などと思ってしまいました。
そうだ、竹篭うりは今でもありました。
ちょっとうっとりです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-05-13 18:35:03
蜆子様
昔は物売りがきましたね。
私は「かさ直し」と「さお竹」を覚えています。
あとほんの数回でしたが「ほうき売り」。
最近は「物売り」じゃなくて
「ご不要になったーテレビィ、パソコン…」
なんだかなー、ですね。
返信する

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