
まずは…お福ちゃんに着てもらいました。
申し訳ありませんが、これに締める丸帯がありませんで、ゴマカシです。
とりあえず、帯締めたらこんな感じ…で。
近くによって裾模様…。あっ光ってしろっぽくなってる…。
後ろ側の柄の出方はこんなです。どこが広がっても華やかですね。
では細かく見ましょう。まずは前裾から左脇。
お酒を飲む二人、歌を詠もうとしている二人、その先輩に色紙をさしだそうとしている禿、
お囃子方でしょうか、ちょっと地味目の着物の女性は、三味線を手にしています。
ちょっとアップで見ましょう。
「ねぇねぇいいお歌、詠めた?」「なーんか、川柳しかうかんでこないのよねぇ…」ちゃうやろ…。
髪の描き方なんかもこまかいです。
こちらが禿さん、稚児髷がかわいいです。大きな手毬柄の着物もいいですね。
ちょっと年増風のおねえさま、丸髷ですね。
着物の柄も細かいです。
そしてこちらが右脇から右前。舞う人、鼓を打つ人、踊りに見とれる人…。
昨日出しました「鼓の人と、舞いを見る人」
そして「踊る人」…。
この人、実はほとんど、真後ろ…。位置的に言うと、前柄との距離はこんな。
左の縦線が背縫いです。
上の写真の下の方が裾なわけですが、下の方に大きく長く描かれているのが「小袖幕」です。
ちょっと色が濃くなってしまいましたが…。
そして、実はこの着物は「襲」で入手しました。
つまり「中着」つき、だったわけです。
残念ながら、中着は薄紫でした。この色はもういちばん「薄汚れる色、褪せる色」なのです。
裾なんか汚れで茶色になってます。衿元を見ると、ずいぶん着られています。
中着の前はこんな感じ。向かって左、つまり「右の前」は、小袖幕をかざるためのヒモを結んだ桜の木。
左の前は小袖が一枚、無造作に掛けられています。細い市松柄は帯ですかね。
通常、両褄柄と言うのは、左右対称が多いです。
それの「中着」の両褄は、表着の柄と同じか、系統だったもの。
しかしこれはとてもこってまして…。
まず、上の中着の前の裏側はこちら。幔幕の前の硯箱と火焔太鼓
硯箱は、表の左前に「和歌」を書こうとしている人がいますね。それにあわせたもの。
つまりこの「中着の右の前の裏」は、「表の左の前の裏」と合っています。こちら。
ややこしいですからゆっくり…次に「中着の左の前の裏」は、 「表着の右の前の裏」と合っています。
ちょっとこんがらかりますね。要するに、普通は、表着の共八掛の柄は、中着の共八掛の裏と、
左右対称で、まったく同じ場合は、同じ柄が8枚とれるわけです。
中着の方がちょっと柄が地味だと、同じ柄のものが表着4枚、中着4枚になります。
ところがこの着物は、表着の表と八掛、中着の表と八掛の8枚が、全部違う柄で、
しかも、表着の右と中着の左…というように、交差するような感じで「対」になっています。
実際に着て歩いても、そんなに「上の前と、下の前」なんて変わりばんこに出るわけではありませんから、
よくよく見なければわからないのです。でも、そこが贅沢なんですね。
袖裏は紅絹。戦前のものだと思いますが、当時の世相を考えますと、
これは芸者さんが、ごひいきの「旦那」に作ってもらったものでしょう。
ずいぶん豪気ですよね。相当のお金持ちだったのでしょうね。
つまり、それだけ美人で売れっ妓だったのだと思いますが、たぶんこれは「花見用」に作らせたもので、
これだけのものですから、そうそう二度三度、二年三年とは着られません。
おそらく妹芸者などに譲ったのでしょう。それでも、もったいなくて中着だけかなり着た…と言う感じです。
柄行は関西好みだと思います。江戸の芸者さんだと、もっと「粋」を選んだと思いますから。
本来、黒地の五つ紋は「出の衣装」と言って、お正月に着るものですが、
舞台の時などにも着ましたから、春の桜のころの舞台できたのかもですね。
いずれにしても、こういう染、といいますか「柄」は、もうありませんし、今これを作ったら…
相当な価格になると思います。よく見るとシミもありますし、汚れもありますが、
着るわけではありませんから、このまま「保存」。ミニミニ博物館に飾れたらいいですねぇ。
それにしても華やかで美しいと
ため息が出ます。
いやぁ、贅沢な品ですねぇ。
柄の人物たちの髪型や着物の取り合わせにも心惹かれました。
芸者さんの衣装はドールで作りましたが、やっぱり実物大のものは違いますねぇ。
眼の保養をさせていただき、ありがとうございました。
有吉佐和子の小説が写真解説されたみたいで、わかりやすくて嬉しいです(^^)
(博物館の学芸員さんも見習って欲しいなぁ)
中着があるのもまたびっくりでした。
何とも豪華で華やか。
これをお召しになった人はどんな方だったのでしょうねえ。
想像するだけで楽しくなってきます。
こういう世界があるのですねえ~~
今朝は良いものを見せていただきましたー感謝
どれほどの財力の方が どれほどの魔力に掛って
この様な物を作られたのでしょうか。
画を描いた方も 仕立てた方も ここまでの仕事をされると気持ち良かったでしょうね。
ほんとに何回も着られない着物ですよね。
どれだけゼータクなんだか…。
着て見せるより、衣桁にかけて飾りたいですわ。
こういう柄行は、今はないのでしょうね。
中着がもう少しきれいだったら…と言うのは、
贅沢かな、なんて思いました。
残っていただけマシ…だと思います。
もう袖つけなど切れていました。
説明がなかなか難しくて…。
わかりやすいといっていただいて、ほっとしています。
まぁどれだけ美人さんだったんでしょうか。
写真でも残っていたらぜひ拝見したいところです。
飾っておきたいですわ。
今作ったら、いったいどれだけかかるやら。
なじみの芸者さんに、こんな着物を作るお大尽は、
奥さんにもゼータクな着物を着させてたんでしょうか。
それもまた気になったりします。