東京リサーチ日記

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「天皇の料理番」

2020-08-21 00:00:00 | 日記
 2020年8月21日、テレビ・映画の歴史劇を制作する上で、欠かせない存在となるのが時代考証家。その中身が史実として適性なものか否か・・・。TBSテレビ60周年特別企画・日曜劇場「天皇の料理番」(2015年4月26日から2015年7月12日、日曜後9・00)で、その検証を担当しているのが山田順子氏である。作品の価値を左右する重要な仕事だけに「プレッシャーもありますが、何より楽しい」とそのやりがいを口にした。モニターで撮影シーンを見守る監督の後ろから、同じ画面を見つめる山田氏。監督が俳優の演技やせりふをチェックするのに対して、この時山田氏の視線の先にあったのはエキストラひとりひとりの動き。真冬の屋外ロケ。通行人役の袴のすそから防寒のために身に付けていた黒色のタイツが一瞬のぞき、リテイクを要求した。「当時にはないもの。立っている時には分からないけれど、動き始めた瞬間に見えちゃったのね」。プロだけが感じる“黒い違和感”を見逃すことはなかったのだ。歴史的な事実の正誤を判断するのはもちろん、ロケ地や建物、言葉遣いや生活、美術、政治などがその時代にふさわしいのか判断する。「普通の時代考証は会議室で終わるけど、私の場合は所作指導から建物、美術考証…全部一人でやるのよ」。ロケには基本100%帯同。その合間にも打ち合わせをこなすなど息つく暇もないのだ。歴史を無視すれば批判を受け、かといって忠実すぎるとエンターテインメントとしての面白さに欠ける。山田氏は「演出を優先します」ときっぱり。「私は学者でも論文を発表する教授でもない。演出が何をしたいのか見極め、それをフォローする。歴史を描くために歴史をうまく利用することもある」すごく難しい作業である。ただ、譲れないものもある。今ドラマは主演の佐藤健(当時25)が演じる料理人・秋山篤蔵が青年時代から宮内省(宮内庁)の主厨長になるまでを描いた作品。「職場である皇室がいかに威厳ある場所かを描くことで篤蔵さんの価値が高まる。天皇陛下と宮内省の関係をきっちり描けて初めて成立することだから、そこは神経質になる」と、主人公の環境だけはリアリティーの追求に妥協しないのだ。「篤蔵さんが登りつめていく階段の一番上の部分。階段を高く上げればそれだけ篤蔵さんの苦労も見える。そこにたどり着くまで彼がどれだけ頑張ったのか。私に問われていることは、その一番上の部分をしっかりと描くこと」。その言葉にあったのは、主人公へのリスペクトと仕事へのプライドだったようだ。しかし、このドラマは、昭和戦後期でも平成期でも制作している。それは皇室について描くドラマだからである・・・(井森隆)