「メジャーの打法」~ブログ編

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金田正一

2008年11月18日 | 投法
 彼については、いつかは取り上げたい―と思っていた。

 日本プロ野球史上最高の投手であることに異論はないだろう。400勝、4490奪三振はどちらも日本記録だ。ライバルチームの巨人に移籍して輝かしい経歴にミソをつけた格好だが、国鉄時代にすでに353勝をあげていたのだから文句はあるまい。
 父親につれられて行った後楽園球場で、巨人(当時の四番は川上)相手に投げる国鉄時代の金田を見た。父親はアンチ巨人で金田のファン、せがれの方は御多分に漏れず巨人ファンだったから、敵味方にわかれた親子が仲良く並んで観戦していたというわけだ。そのときは金田がKOされた。退場を喜ぶよりも首をうなだれてベンチに引き上げる姿に漂う哀感に魅せられたのを覚えている。負けたときに存在を際立たせるのが一流選手というものなのだろう。モハメッド・アリのダウンシーンが超スローに見えたり、送り出される横綱輪島の背中がいやに大きく見えたりしたものだ。


 さて、フォームはどうか?

 名球界の動画で同じサウスポーの鈴木啓示と比べると、下半身の使い方がまるっきり違うのがわかる。鈴木の投げ方は普通だ。プレートを蹴って勢いをつけ、踏み出した足を軸にして腰を回旋する。それにたいして金田は腰を折り曲げている。踏み出し足側の股関節が著しく屈曲していて、股関節屈曲トルクの大きさをうかがわせる。言いたいことはもうおわかりだろう。つまり、
金田はアーム式である。


股関節屈曲、体幹前屈、肩内転と続く末端加速様式だ。こちらは有名な新人長嶋四連続三振の図。これを見ると鈴木よりコーファックスに近いのがよくわかる。
 彼については頭の中に<典型的な本格派投手>というイメージが出来上がっていて、アーム式とは結びつかなかった。沢村が外れたが、金田が加わることによってアーム式投手陣はかえって厚みを増したようだ。

アーム式の解釈にはいろいろあるが、バックスイングに限定するのは不適当だろう。沢村もアーム式になってしまう。
鈴木啓示は「アーム式は肘が出ていかない」という表現で、フォワードスイングの特徴に言及している。さらには、からだ全体のエネルギー生産・伝達様式と考えるべきなのだ。
投法(5)で自分なりの定義を述べたが、股関節屈曲について述べてないのでは十分とは言えない。


 この写真に特徴がはっきり出ている。『科学する野球ー投手篇』村上豊著に載っているものだ。村上の解説は、

右脚を伸ばして右腰を後ろに引き、上体を前に突っ込んで体を捻ってない


と述べ、金田の欠点としている。この写真を見れば、コーファックスにたいする評価も同じものになるだろう。メカニズムを異にするふたつの投法が存在し、どちらもアリだ―ということに彼は気づいてないのだ。



 


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