こねないⅠ型トルク打法。
これについては日本の打撃論(2)で言及した。選抜高校野球を見ても、中田のようなTHの使い方をする打者がいかに多いことか。
この打法は昔からあった。たとえば、この長池はそうだろう(3:22頃)。しかし、主流はあくまで(恐らく)山内、大島、掛布のような打法だった。それが最近急激に増えた理由は何なのか?
ひとつは、今アメリカで主流のB型を真似た結果だろう。もちろん、BHの引きはなく、トルク打法でもないB型からはかなり遠いのだが、日本人が旧来の打法を下敷きにしてTHの操作だけを真似るとああなりそうだ。城島はそこからBHの引きを排除したマグワイアと同じ変則Ⅲ型なのだが、彼は何と「ボンズを真似た」と言っている。原理的な部分を理解して正しく真似るのは至難の技なのだ。T-岡田はコリンズに感謝しなければならないだろう。しかし、まぁ、B型よりあの打ち方の方が日本人に合っているかもしれないし、もしそうなら怪我の功名だが・・・。
もうひとつは、(2)で紹介した谷沢、小早川の言葉に見られるように、「旧来の打ち方では、手首が返るのは失敗スイングだ」というところから来ている。そこから「バットをこねるのは悪い」という『通説』が生まれた。青木がここで、「面で入れる」と言っているのも同じことだ。それに拘ると、同じⅠ型トルク打法でも王やシュミットの打ち方は良くないということになる。
王のような腕の伸展動作によってバットに順回転がもたらされるのはゴルフスイングも同じで、このジョーンズのように振ると(ただしトルクは掛けない)、インパクトゾーンでクラブフェースが閉じる。これがゴルフスイングにとって欠点なのは明らかで、ベン・ホーガンの時代から修正が加えられてきた。しかし必ずしも野球には当てはまらない。王やシュミットの成績がそのことを裏付けている。青木の言うように「面で入れ」れば、B型と同じで、コンタクトの正確さは向上するだろう。しかし、球にバックスピンを掛けることが飛距離を伸ばすわけだし、打球にエグ味が増してディフェンスを難しくする。芯でとらえてもヒットやホームランが出にくいとなれば、考えものなのだ。つまり、「こねるのは悪」は現代にあっては迷信でしかない。
いずれにせよ、B型を真似し損なった中田らの打法か?それともB型を真似たら自然と改良B型になったT-岡田らの打法か? 今後注意深く見て行く必要がある。