「メジャーの打法」~ブログ編

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Welch 1995 (2)

2011年05月28日 | 打法

 地面反力の解釈。

 Welchは地面反力のデータから得られた2つのタイプをいわゆる『ローテイショナル打法』と『リニア打法』に重ね合わせたのかもしれない。この二分法はアメリカの打撃論の底流にあるようだ。アデアは、『ベースボールの物理学』で、以下のように書いている。

 There as been some conroversy over in batting of rotational motion and translational motion. Ted Williams emphasized the importance of rotation, and Charlie Lau emphasized translation. Of course, both are essential (as both Williams and Lau knew), and they are interrelated even as the energy of translation of the body goes into the rotary energy of the bat. Those who consider translation unimportant should imagine a batter standing with his back foot on a platform set on ball-bearing wheels on a toy train track running parallel to a line from the pitcher to the plate and with another such platform to catch his front foot-presuming he was able to place it there. This batter would not be able to stride forward, though he could still rotate. But how far could he hit a ball? I say not much past second base.
 On the other hand, if the tracks ran perpendicular to the line to the pitcher-plate line, he would be able to stride forward but would not be able to rotate. Without the possibility of a strong rotation, he would, again, be lucky to clear second base. To hit a baseball with dispatch, one needs to step into the ball, and to rotate.


 アデアの念頭にあるのはⅠ型だ。腰の回旋をBHでバットに伝える。「後ろ側の足で地面を蹴り、さらにステップ後、両足の地面反力による偶力を加味して腰を回旋する」("to step into the ball, and to rotate.")というエネルギー生産様式はお馴染みのものだ。

日本では前段を「腰でテイクバックし、それををもどす」というローテイショナルなものに置き換える打法もある。純ローテイショナル打法と言えなくもないが、腰の回旋をBHでバットに伝えるという動作様式は同じだ。だいたい、そのような打ち方をするMLBの打者は思い浮かばない。


 それでは、アデアの言うように、ローテイショナル・リニアの二分法は主観、あるいは程度の問題に過ぎないのだろうか? 
 Ⅰ型時代にあっては「然り」なのだが、Ⅰ型の前のⅣ型の時代については「否」と考えている。Ⅳ型はスイングの後半においてTHでバットを『引く』。このときに、

  • 偶力による腰の回旋を利用してグリップを横に振り回す(カップ
  • 後ろ足の前方への蹴りを利用してグリップを前方に振り出す(ホーンスビー

という、大まかに言ってふたつのやり方があり、前者をローテイショナル打法、後者をリニア打法と名づけた。そして、その頃の打撃論議の形式がそのままⅠ型の時代にまで受け継がれたのだが、動作様式が変ってしまったために形骸化した――と考えたいのだ。

 Ⅰ型の時代が半世紀ばかり続き、アデアのような見方が打撃論の常識となった。彼も言うように、この動作様式は地面反力に明確に現れる。彼は本を書くにあたって計測し、確認したに違いない。抜かりはないはずだ。つまり、Ⅰ型とはWelch言うところの"rotational component emphasized swing"なのだ。ところが、データにはそれとは異なる不思議な地面反力の数値を示す(ステップ後に偶力をほとんど使わない)"linear component emphasized swing"が混じっていたわけだ。それをホーンスビーに結びつけるだけの教養はWelchにはないだろう。「巷間言われるリニア打法ではないか?」と思ったに過ぎないと思う。しかし、Ⅰ型の時代に育った打者にはそのような地面反力をもたらすスイングは難しい。Welchだって、自分でバットを振ってみればわかったはずなのだ。Ⅰ型の常識では理解不能なスイングの動作原理は何か? それを考察するのが学問なのだが、彼は敵前逃亡してしまった。





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