「メジャーの打法」~ブログ編

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続・投球のバイオメカニクス(15)

2011年08月20日 | 投法

 三角筋肩峰部(中部)

 風井論文によると、フォワードスイング終期に三角筋肩峰部の筋活動がある。その役割がやっとわかった。というより、風井論文を間違って読んでいた。これだけ長く付き合い、強い支持を表明しておきながら、基本的なところを読み間違えていたとは・・・、恥ずかしい限りだ。

 以下は終期のくだりなのだが、

両型ともポーズ④で三角筋鎖骨部の放電が減少・消失し,かわって大円筋・上腕三頭筋長頭に顕著な放電がみられた.この間,フォ一ムからもわかるように上肢の引き下げが積極的になされている.通常,ボールが手から離れるとき上腕が前額面より前に出るものと思われている.しかし,非連続型(N.K)の上方から撮影されたフォームをみると,ほぼ前額面内でボールが手から離れていることがわかる.この間,非連続型(N・K)では三角筋肩峰部・棘部に強い放電がみられた.これは岡本7)らの上肢の内転の筋電図的解析結果より上肢を前額面内で後方向に力を入れながら引き下げているのがわかる.一方,連続型(A・K)では離球前まで大胸筋鎖骨部・腹部にかなり強い放電がみられ,この間,三角筋肩峰部・棘部に強い放電がみられなかった.離球前では大胸筋各部と交代して三角筋肩峰部・棘部に放電がみられた.これは前額面内で上腕を前方向に力を入れながら引き下げられ,離球時に非連続型と同様に前額面内で上腕を後方向に力を入れていることを示している.
(風井論文は広背筋ではなく大円筋が測られている)

 まず、大円筋と三頭筋から、「上肢の引き下げが積極的になされている」とした。問題はそのあとの、「三角筋肩峰部・棘部に強い放電がみられた.・・・上肢を前額面内で後方向に力を入れながら引き下げている」の部分。つまり、

三角筋肩峰部の収縮をもって、「後方に力を入れ」ているとする

わけなのだ。そして、連続型の記述を読めばわかるように、「前方に力を入れ」ているかどうかは大胸筋の収縮で判断している。

これまで、「水平外転は広背筋がもたらす」という思い込みがあったものだから、肩峰部の放電と「後方に力を」がつながらなかった。
この記事は面白い。「リリース時には、――大胸筋、三角筋前部の放電消失によって大円筋、広背筋の効果が浮かび上がる――と考えていたところ、三角筋中後部に少なからぬ放電があった。水平外転が肩内旋のもたらす他動運動だと思っていたら、トルクが加担していた」ということではないか?


 連続型、非連続型共通の特徴として注目すべきだろう。Gowanを見ると、アメリカン(アマ)もアーム式(プロ)も三角筋の収縮は弱いのだから、そのような末端加速様式は採っていないことになる。そして、石井の算出した肩水平外転トルクにそれが反映していると見る。やはり、石井のほとんどの被験者が風井の被験者と投法を共有しているのだ。

 肩水平外転・内転は、肘において後下方に力を及ぼし、前腕の回転にプラスに働く。これは、レイトコッキング期に肩水平内転・外転が肩外旋運動を引き起こすのの逆の現象だと考えればよい。「加速期において水平内転・外転を維持しつつ肩内旋を掛けるアメリカン投法よりも、水平外転・内転トルクの支援を得つつ肩内旋を掛ける日本式(連続型、非連続型)の方が肩肘に負担が掛からない」というのがダルビッシュの主張のバイオメカニクス的解釈だ。
 



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