「メジャーの打法」~ブログ編

野球、ゴルフを中心とするスポーツ動作論
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引き下げ運動(その3)

2007年02月13日 | 引き下げ運動
 「寸勁による瓦割り」に話を進める。

 動画を再掲する。「格闘技『奥義』の科学」(以下「奥義」)には、松井極真会館館長の写真が載っている。動画も恐らく彼だろう。

 動画から切り出した連続写真がこれである。「奥義」には「掌を浮かすことなく割る」としているが、実際は浮く瞬間があるのが判る。2~3で体を浮かしておいて、3~4で沈めるのだが、その瞬間に上肢・上肢帯を引き上げるのである。

 もちろん、「トリックを見破った」などと自慢するつもりはない。「何がこの素早い引き上げを導き出しているか」を問題にしたいのである。
 結論から言うと、体幹の筋群および下肢の屈筋群の収縮である。それによって体幹上部が急速に引き下げられ、反射で上肢・上肢帯の引き上げが起こる。さらにその反射で上肢帯下制、肘伸展筋群に収縮が起こり、上方への反動も手伝って、筋肉が活性化するのである。
 
 吉福は下方の力の源を、重力加速度のもたらす運動量に求めている。彼の計算によると、60kg重の人間が5cm下降することで、(瓦が1~2枚割れる)150kg重の力を0.067秒間持続できる運動量が得られるとしている。
 そのときの体の使い方について、「奥義」には以下のように書いてある。
・・・両足の力を抜いて身を沈める。その間は肩甲骨の動きによる肩関節の遊びや胴体のひねりを利用して、掌底が動かず瓦に力が加わらないよう、またその反作用で体が沈むのを妨げないよう務める。


しかし、実際の動作はこれとは多少異なるのである。

 上肢・上肢帯を引き下げる筋群の発生するパワーを無視することはできないが、仮に上肢・上肢帯の役割が力を伝えるだけだとしても、「肩と胴体を一体化する」(「奥義」)強固な筋力を引き出すためには、上に述べた一連の動作が必要だろう。