すいーと雑記帳

とっこの独り言

「あなたが気づかないだけで 神様もゲイも いつもあなたのそばにいる」

2019-01-10 16:36:44 | 日録・雑感など

1月10日 THU  22℃

新年おめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

年末に風邪をひきこんで、とんだ寝正月になってしまいましたが、なんとか8割がた回復しました。安和の琉球セメント桟橋や辺野古海上、シュワブゲート前で寒風吹く中頑張っておられ方々にはほんとに頭が下がりますし、軟弱な自分が情けなく申し訳ないです。

このお正月にとてもいい本を読みましたのでご紹介します。

       

平良愛香さん(男性)という1968年沖縄生まれのキリスト教の牧師さんが書かれた「あなたが気づかないだけで 神様もゲイも いつもあなたのそばにいる」(学研出版)という本です。平良さんはお父さんが牧師さんで、ご自分も中学高校と保守的なキリスト教系の学校の寮で過ごされます。自分が「男性同性愛者」であることを自覚して、そのことで悩み苦しんでおられた高校時代の生活の様子を読むと、ほんとに心が痛かったです。青春時代は誰でも親との葛藤、異性との恋愛、将来への不安、進路問題等々、悩むのは当たり前ですが、今から三十数年前、LGBTとか「性の多様性」などという言葉も全然知られていない時代に(今でもまだまだ知られていませんが)、しかも同性愛を「罪」だとみなす保守的なキリスト教の学校にあって、愛香少年が日々どんなに悩み苦しんだかと想像するだけで胸が苦しくなりました。当時の愛香少年にこそこの本を読ませてやりたい、こんな本に出遭っていたら「自分は異常じゃないか」と、あんなに苦しむこともなかったでしょうに・・・。

同じような悩み、自分のセクシュアリティに一人で悩んでいる若い人(大人も)は、今も多くいるはずで、その人達にぜひこの本を読んでほしいと思います。そういう意味で、この本は全国の中学高校大学の図書館に必須の図書だと思いました。同性愛者である自分のことを真摯に、率直に(時に赤裸々に)、ユーモアたっぷりに語っておられて、読み始めたら惹きこまれてやめられない魅力のある本で一気に読みました。そして不思議なことに、自分が「とても生きやすくなった」感じがしました。つまり性的マイノリティでない人にとっても、「あなたはあなたのままで生きていていい」とすべて認めてもらったような明るい気持ちになれる内容だったと思います。

圧巻は、なんといってもご家族へのカミングアウトの場面でした。ご兄弟にはごく自然に受け入れてもらえてよかった!と一安心。ご両親にカミングアウトする場面はドキドキしながら読みました! お父さんの牧師さんはじっと無言。ずっと「自分らしさを大事にしなさい」と子供たちを育ててこられたお母さんも、しばらく考え込まれた後、「それは育て方の問題?」「異性愛に変わらないの?」と問いかけられたという場面を読んで、「やっぱり時代だなあ、当時のキリスト教会では同性愛はそれほどの衝撃的な告白だったのか!」(ひょっとしたら今でも?)と驚きました。でも、それからが、すごいんです! お母さんはその後いっぱい勉強して息子さんのことを理解されます。それだけでもすごいのに、そのあと一気呵成に「私の自慢の息子はゲイです」のTシャツを着て街を闊歩するに至ったんですって! かっこいいわ~、素晴らしい! そんな勇気のある行動は他の誰にもできません。最高に素敵です。

で、自分だったらどうしたかな、と考えてみました。十数年前にそんなことが自分に起こったら・・・。やはり最初はすごい衝撃だったと思いますが、長いこと考えた末に「あんたが幸せと感じるんだったらそれでいいんじゃない」と言ったような気がしますが、わかりません。私自身も世の中も今ほど性的マイノリティについて知っていたわけではないし、自分の息子のこととなったら全く違う反応をして「勘当や!」になっていたかも・・。それはないと思うけど、わかりませんからね、人間は。

数年前、母の介護施設からの帰り路、那覇市国際通りのてんぶす広場前で、男性同士の人前結婚式をしておられるのに、たまたま行き会いました。真っ白いスーツをバリッと着こなして胸にコサージュをつけた髭の男性お二人が、広場に集まった多くの人達の祝福を受けて、ほんとうに嬉しそうに頬を紅潮させて満面の笑みをたたえておられた、あの晴れやかな表情は忘れられません。「いいなあ、なんと幸せそうな笑顔だろう」と感銘を受けました。

那覇市だけでなく早く全国の自治体でもパートナーシップ登録が認められたらいいのにと思います。たとえ法的な効力はなくても、住宅とか病院の付き添いとか同意書とか、そんな場面で傍にいたいですものね。

 愛香さんとお父さんのやりとりについても心を打たれました。のちにお父さんが「同性愛者だということが、神が愛香に与えられた十字架なんだな」とおっしゃったこと。そして愛香さんが「父にとっての十字架は沖縄です。父はずっとその十字架を背負って、沖縄の人のために尽くしてきました。十字架はとても重いものだけど、使命でもあり、喜びでもあるのです。僕はこの言葉を聞いて、真の意味で父に認めてもらえたのだと感じました。」と書いておられることです。NHKのドキュメント「イエスと歩む沖縄」を見て、お父さんの平良牧師が歩んでこられた道について知って、以来ずっと深く敬服していますので、愛香さんのこの言葉にはとても重く深いものがあると感じました。

 それにしてもユニークな愛情あふれるご両親やご兄弟の中で育たれて、愛香さんはとても幸運でした。ご本に出てくるお母さんの素敵なエピソードはどうでしょう! 貧しくて食べるものがない時に「食べられる葉っぱ採りピクニックに行きましょう」とおっしゃったとか、愛香さんがスカートを穿きたいと言ったらすぐに布を一緒に買いに行って縫ってあげたとか、折に触れて「人と違うことはかっこいい」と言われたとか、もうニコニコしながら読みました。若くて生き生きして貧乏も楽しく工夫で乗り越えた若いお母さんの姿が目に浮かぶようでした。

第6章の「性と差別にまつわる特別講義」もとてもよかったです。多くのことを学ぶことができました。「自分が差別する側になっているかもしれない」という自覚がいつも必要であるという指摘にはハッとさせられます。

このほかにも、LGBTだけでないセクシュアリティの驚くほどの多様性について、またキリスト教の幅の広さ、その負っているマイナスの歴史、同性愛についての様々な聖書の解釈のあり方、キリスト教が今も発展の最中であることなどなど、多くのことを学びました。

以上、雑多な感想になりましたが、とにかくそのセクシュアリティにかかわらず多くの人に読んでほしい本です。ぜひ、みなさんのお近くの図書館で、蔵書になかったらリクエストしてみてください。旭橋に移転した新しい沖縄県立図書館(すっごく素敵な図書館になりました。毎日遊びに行きたい!)にはあります。那覇市立図書館は、今長期休館中なので調べられませんが、もし蔵書になかったらリクエストを出すつもりです。

では、今年が辺野古新基地建設阻止にむかって一歩一歩前進する年でありますように。たまにしか更新しないブログですが、今年もどうぞよろしくお願いします。

 

 


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