すいーと雑記帳

とっこの独り言

「沖縄戦が問うもの」

2010-09-18 19:23:32 | 居眠り読書
9月18日 SAT    30℃


林 博史 (大月書店 2010年6月)

沖縄戦全体についての入門書としてはもちろん、かなり沖縄戦のことを知って
いる人が読んでも面白く、さらなる勉強の入口となる資料満載のとても良い本
でした。
簡潔明快な文章で読みやすいので夢中で読み進めます。「検証」として1~33
の項目を立てたのもとてもわかりやい構成でした。

沖縄戦の総体と細部がとてもバランスよく配置されているのに驚きました。
細かい木の枝も丁寧に見落とさずに見ながら、森もちゃんと見ている、さらに
森のある場所全体を時の流れの中で検証している、という感じ。

何より感銘を受けたのは、
「歴史認識は決して過去の出来事をどう見るのか、という問題にとどまらない。いま
現在をどう見るのかという問題と不可分である。歴史認識と現状認識はメダルの
表裏である。いま生きている社会と格闘するとき、なぜこうなっているのか、どの
ようにすれば変えられるのか、と真剣に考えようとするとき、歴史を振り返る必要が
ある。歴史とは過去をふりかえることを通じて未来を見ることである。日本では
過去にこだわらずふりかえらないことが『未来志向』だなどという人々がいるが、
それでは同じ失敗、過ちをくりかえすだけである。沖縄戦がくり返しとりあげられる
のは、いまをどうするのか、未来をどう展望するのか、それが問われているからで
ある。沖縄戦を過去の出来事としてではなく、いまにつながる出来事、いま私たち
が取り組まなければならない課題と共通の課題が含まれている出来事として見て
いってほしい」(「はじめに」より)という考え方です。

つまり、沖縄戦は決して突然起きたものではなく、そこに至る長い経過があった、
どのようにして戦争への道が作られていったのか、人々はどのようにして戦争へ
の道を受け入れていくのか。その流れと仕組みを、今生きているわれわれが沖縄戦
の諸相を学ぶことからくみ取ること、そういう視点をもって生きること、それこそ
が沖縄戦の悲劇を繰り返さない方法だという観点に一番心うたれました。

「我々は、幾たび沖縄に”捨石”を強いるのか」と本書の帯にありましたが、今、
また沖縄県・辺野古に新基地が押し付けられようとしている事実、これを本土の
日本人のひとりひとりがどう考えるのか、そういうことをまさに考えさせる本で
した。

文句なし、5つ星。是非読んでほしい、各地の図書館にリクエストしていただき
たい本です。
55歳の著者の純情な「あとがき」にまたシビれました!

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