すいーと雑記帳

とっこの独り言

Y君の「人生劇場」

2011-02-07 21:55:01 | 日録・雑感など
2月7日 MON   20℃

私の大事にしている録音テープがあります。去る1月19日に急逝した友人Y君の唄っている正調セリフつき「人生劇場」です。大阪で入院中だったY君のお見舞いに行く時に持参しようと思っていたものです。

彼がW大学に在学中だった頃から、飲むたびに何度も聞いた見事な「人生劇場」です。
あまりにいい声でうまいので、私は「Y君もこれから齢をとって、こんな声で唄えなくなるかもしれない、ハリのある声で上手に唄えるうちに録音させてもらおう」と思って、今から12年前の夏、宝塚のホテルで、親しい友人数人が恩師Y先生を囲んで飲む機会があった時にY君に頼んでテープに録らせてもらったものです。
Y君は当時52歳、まだまだ美声は衰えていませんでしたが、寄る齢波のせいか、前夜必死に思い出して2時間もかけて書いたというセリフのメモ(カンニングペーパー)を時々見ながらの熱唱でした。(青字がセリフ)

おい青成、おいどんの気持ちがわかるか 
わが胸の燃ゆる思いにくらぶれば 煙は薄し桜島山


やると思えばどこまでやるさ それが男の魂じゃないか
義理がすたればこの世は闇だ なまじ止めるな夜の雨

君見ずや滔々たる荒川の流れを 河畔楊柳あくまでも緑にして
万緑中一点紅を点ずるものあり その名をお袖という

ああ歓楽は女の命にして、虚栄また女の真情であり
わずか7日ばかりの享楽を得んがために あわれはかなくもまたうるわしき乙女の貞操は犠牲に供せられたのであります
覆水盆に返らずの例えあるごとく(ここでY君セリフ忘れてカンニングペーパーを見る)親を偽りし罪いと深くして ああ哀れなり 哀れなり (ジンタッタ ジンタッタ)


あんな女に未練はないが 何故か涙が流れてならぬ
男心は男でなけりゃ わかるものかとあきらめた

時は大正の末年 夕暮れの風いと寒き ところは三州横須賀村 
印半纏にもじりの外套 草鞋に乗せたる身も軽く 一人帰り来たりしは
音に聞こえし吉良常なり


時世時節は変わろうとままよ 吉良の仁吉は男じゃないか
俺も行きたや仁吉のように 義理と人情のこの世界

ああ夢の世か夢の世か 十有余年がその間 春は花咲き夏茂り
冬は雪降る故郷のいと懐かしきは父母か 生まれは正しき郷士にて
一人男子に生まれたる宿世の縁の哀れさか
浮き立つ夢に誘われてひとり旅立つ東京の学びの庭は早稲田なり


はした役者の俺ではあるが 早稲田に学んで波風受けて
行くぞ男のこの花道を人生劇場いざ序幕

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パチパチパチパチ! うまい、ええ声や、まさに絶唱だわ!
W大学応援団有志の「人生劇場」とか、その他YOU TUBEであまたのセリフ付き「人生劇場」を聞きましたが、Y君の歌ほどの風格と艶を備えた「人生劇場」は他にありません。

テープを聞くたびに懐かしくて涙が出ます。Y君の声が衰えないうちにと録音したのに、こんなに早く逝ってしまって形見のテープになってしまうなんて・・・。
Y君の奥さんと、同期の友人S君に、ダビングしたテープを送りました。

S君から来たメール
「Yの声をきいた。さびしいな、かなしすぎる。
4月に偲ぶ会をします。このテープ使います。
あんた こんなもん持っていたのか、
あのときのこと、あんたがスリッパで帰ったことまでおぼえてる 」

そうだった、そうだった。12年前、この録音をした宝塚のホテルから帰る時、私、玄関ではっと気がつくとスリッパのまま部屋を出てきてました! 
靴、靴! ダメじゃん、おばさん、酔っ払って。
靴を取りに部屋に戻ってみんなに笑われましたっけね。(大笑いしてたA君も、Y君も格山先生も、もういないんだ・・)

なんでエエ奴ばっか、先に逝くのかな? ひどいやんか、カミサマ。

最新の画像もっと見る