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快読日記

読書とともにある日々のはなし
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「朽ちていった命―被曝治療83日間の記録―」 NHK「東海村臨界事故」取材班 新潮文庫

2007年01月14日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
じわじわと蝕まれた命


1999年9月に茨城県東海村で起きた臨界事故。
大内久さん(当時35歳)が被曝し、病院に担ぎ込まれ、
亡くなるまでの壮絶(なんて言葉ではとうてい足りない)な83日間の記録。

入院したその日は、
ちょっと強い日差しで焼けたかな、くらいの皮膚で、
意識もはっきりし、会話も正常にできていたそうだ。
その後、実妹からの造血幹細胞移植などの治療を受け、
入院も10日を過ぎた頃、
治療用テープと一緒にはがれた皮膚が二度と再生しないことに気付いたあたりから、
肉体が音を立てて壊れていくような気がした。
悪魔がむしゃむしゃと身体を内側から食っている音だ。
それからあとの様子は、
流れてくる涙を何度も手の甲で拭いながら、
それでも目をそむけてはいけないような気がして、
声を上げて泣きながら読んだ。
なんでこんな目に会わなければならないのか。
彼は一体、何の犠牲になったのか。

身体を覆う低刺激の特別なガーゼにしみこむ血液と体液は、
1日10リットルにもなった。
毎日3時間かけてそれを交換し、
おびただしいまでの投薬を続ける医師や看護婦たち。
意識のない(激痛から薬によって守られている)大内さんに話しかけながら、
これが大内さんを助けていることなのかどうなのか、
自らの行為の意味を自問するあたりも耐えられない。