快読日記

日々の読書記録

「死刑弁護人 生きるという権利」安田好弘

2009年06月22日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《6/15読了 講談社+α文庫 2008年刊 【手記 ノンフィクション】 やすだ・よしひろ(1947~)》

突飛な殺害動機や懲戒請求騒ぎで話題になった光市母子殺害事件の報道を見るたびに、
この鋭い目の弁護士は一体何者なのか、気になっていた人は多いと思います(わたしもです)。

さらに彼が、新宿西口バス放火犯や、オウム麻原など、「世の憎悪の的となる殺人犯(帯より)」の弁護士だと知って、これは即買い即読みです。

まず、加害者を「悪い人」ではなく「弱い人」と位置付けるところまでは同意できるのですが、
だから処刑するなという主張にはどうしても賛同できませんでした。

しかし、安田弁護士個人の印象はだいぶ変わりました。
タフな人権派、教条主義で冷徹な戦略家で、どんな批判にも動じない人って(かなり勝手な)イメージでしたが、
実は情け深い熱血漢で、厚顔というよりむしろナイーブ、ものすごい修羅場をくぐり抜けているのに、驚くほど素直、っていうか愚直と言ってもいいくらい。

もう一つ理解したのは、安田弁護士が闘っている相手は犯罪でも死刑制度でも輿論でもなく、杜撰な裁判そのものであり、送検されたら9割以上が有罪になるという現行の検察と裁判官のやりかたなんだということです。
ここらへんは裁判員制度によって、現状よりさらに悪化しそうな気がします。