快読日記

日々の読書記録

「脳ブームの迷信」藤田一郎

2010年01月24日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《1/23読了 飛鳥新社(家族で読めるfamily book series017 たちまちわかる最新時事解説) 2009年刊 【脳科学】 ふじた・いちろう(1956~) 》

例えば、「脳トレで頭がよくなる!」なんて惹句は眉唾ものだし、そもそも頭のよさって何だかわからないけど、
小学校の先生が言ってた「人間は一生かけても、その脳の10%くらいしか使っていない」説や、右脳派・左脳派なんてのは、ずっと信じてました。
これらは皆「迷信」なんだって。
でも、そっちの方がなんだか希望があっていいじゃん ―― そんな未練がましいこと言わずに、現実を直視しないといけないみたいです。

帯には「脳トレ」や「サプリ」などの迷信を一刀両断!とありますが、
もどかしいくらい慎重にその間違いを指摘・訂正していて紳士的。
迷信の発信源として、実名を挙げられているのは川○隆太くらいで、本丸・茂木某をスルーだったのがとても残念。
まあ、批判が本書の目的じゃないようなので、そこは仕方ないか。

結論は「人間は、その脳について、まだほとんど何も知らないに等しい」ということみたいです。
「何用あって月世界へ。月はながめるものである」派(山本夏彦派)のわたしとしては、未知の分野がたっぷり残っているのは素敵なことなのですが、
(人間のコントロール欲や解明欲って、考えようによってはおこがましいし、人間が踏み込んじゃいけない領域ってあるような気がするから)
筆者が取り組むこうした地道な研究のおかげで、人類はさまざまな病気や不便を克服できるんだもん、感謝しなきゃいけないんですね、たぶん。

個人的には複雑な読後感です。

「慢性疲労は首で治せる!」松井孝嘉

2009年08月31日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《7/22読了 角川oneテーマ21 2009年刊 【健康 医学】 まつい・たかよし(医師)》

慢性疲労・頭痛・めまい・自律神経失調症・更年期障害・うつ・パニック障害・大抵の不定愁訴、これらの原因の多くは首にある!という話、この説得力と力強さはなんでしょう。すてきです。
――軽口はさておき。
医学の隙間っていうか、盲点っていうか、たしかにありますよね。
つまり、わたしは何科に行けばいいの?という問題です。体調が悪いんだけど、なんだかわからない。
それが判れば苦労しない。
これは病院や医者を選ぶより重大な問題です。
見当違いの科にかかって更に悪化、なんて珍しい話ではなさそう。

そこで、そうした症状の多くは首から来ている、という主張です。

経験に裏付けされた理論の頼もしさと、克服法として提示されているのが肩透かしなくらい地味な運動だったりするところに高い信憑性を感じます。

原因不明の体調不良に苦しむ人が快方に向かうきっかけになるかもしれない1冊です。

しかし本って いろんなものがありますね。←何をいまさら(笑)

「それは、『うつ病』ではありません!」林 公一

2009年02月23日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《2/17読了 宝島社新書 2009年刊 【医学 鬱病】 はやし・きみかず(精神科医)》

いつも自分が被害者であると主張して、
立派な発言の割に、努力している気配は見られず、
うまく行かないことがあると周囲を逆恨み、
耳の痛い忠告には「鬱病」を楯に徹底抗戦。
――これはあくまでも一例ですが、
近頃各地で増殖してる気がするこんな「擬態うつ病」について、丁寧に解説した本です。

「ありがちな20の症例」の正体を大まかに分けると
(1)性格の問題
(2)人格障害・統合失調など、鬱病とは別の病気
鬱病の診断基準も難しく、(1)タイプの中には自分に都合のいい診断名を獲得するまで医者を渡り歩くツワモノもいるようです。

実はわたしの知人も、(1)タイプの人にちょっと振り回されていて、
その様子を聞くたびに「それはどう考えても鬱病じゃないだろ」とモヤモヤしていたので、
読後だいぶすっきりしました。
文章の切れもよく、わからないことやグレーゾーンについても率直に書かれています。

とくに覚えておきたいのは、
"鬱は脳の病気であり、適量の投薬があれば2週間ほどで効果が見え、何か月という単位で改善する"という話。

この「擬態うつ病」増加の真の被害者・本当の鬱病患者のために、本書の指摘・考察が生かされたらいいけど、「擬態うつ病」なかなか手強いです。

「辰巳芳子 食の位置づけ ~そのはじまり~」辰巳芳子

2008年12月19日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《12/17読了 東京書籍 2008年刊 【食 食文化】 たつみ・よしこ(1924~)》


ここんとこ、メキメキ増量中のわたしです。
たしかによく食べています。
では「食べること」を大事にしているのかと言うと、むしろ逆。
食をないがしろにしてきたような。

だから本書の"食べものはガソリンではない。何でもエネルギーになればよいというものではない"という主張にはどきっとしました。

福岡伸一氏の「食べることによって固体の身体は、分子レベルで日々刷新される」発言を入口に、遺伝子組み換え食品の問題点、日本食の伝統、風土と食、「理をはかる」と書く料理の重要性など、食を巡る様々な考察は読み応え十分です。

第3章には、実際に生産に携わる酪農家、牡蠣の養殖家、有機農法に取り組む農家、みそ・しょうゆの醸造家が登場します。
その理念の確かさと、それを実行している人の迫力に圧倒されました。

最後、カトリック神父との対談で"食は祝福である。食は祈りである"との結論にたどり着くと、なんだか自分も浄化されるような、変な錯覚に陥ります。
そう。錯覚です。だってこれを読み終えたのはモ○バーガーの客席ですから。

食を変えることは人生そのものを変えることなんです、たぶん。

「べんのお便り」辨野義己

2008年05月21日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《出口から人体を見る》



うんこは「便」、つまり体からの「お便り」であるという1冊です。
わたしたちは、つい摂取のことばかり考えがちですが、排出の方も相当大事です。
人間の便1gには約1兆個の腸内細菌があり、それは生まれてくるときに産道でお母さんからもらって受け継ぐものなんだそうです。
この菌が悪いものだと赤ちゃんはダメージを受け、体調不良やアトピー、果ては短命の原因になるというのは、ちょっと怖い話です。

他にも、性別や年齢・生活による便の違い、整腸剤やサプリメント依存がよくない理由、理想的な便の作り方、国内外で調査した数々の便のエピソード、著者自身が体を張った実験など、おもしろい話が満載です。

ところで、辨野先生といえば、テレビ「ネプ理科」で体重270kgの日本人男性の便からすごい発見をして、その続報がないまま番組自体が終わってしまったので、ず~っと気になっています。
結果が知りたいです。

■5/21読了 幻冬舎 2004年刊 【人体 健康】辨野義己(べんの・よしみ 1948~)

「自分ですぐできる免疫革命」安保 徹

2008年04月22日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《体への信頼》





お医者さんが書く病気の本を読んでると、自分もどこか悪いような気になってきませんか。

その点、この本はいいですよ。
根底に"明るさと強さ"があって。
人体が本来持つ"免疫力"に対する信頼に満ちているのも心強いですが、ガンになる理由や漢方薬の意味など、目から鱗な解説満載で、ネガティブな匂いが全然しないのもうれしいです。
医者は相談相手であり病気を治すのは自分自身だといった、なんだか力が湧いてくるような表現も効果的で、免疫についての説明もストンと腑に落ちます。

この本を読むことが免疫力をつける第一歩、と言ったら誉めすぎでしょうか。

病気になってからこういう本を読むのもつらいから、楽しく読める今のうちに読んでよかった1冊です。
いつか必ず再読すると思います。
その時はかなり救われそうです。

■4/22 読了
だいわ文庫(大和書房)2007年刊
「ガン免疫力」(2004年 大和書房)を再編集・改題 【医学】