合理的体育観

なにぃ！さては、悪かった校外模試の点数表を息子が捨てたのか？と目の色を変えて拾い出した。
すると、それは「体力測定」のデーター表だった。
今時は、年一回の体力測定もカラーのイラスト付きで、まるで校外模試の点数表のごときものが返されてくる。
個人のスコア、全国平均値、校内平均値、体力要素別バランス判定図、総合評価、トレーニングアドバイスなどなど、まさにこれは教科のデーター表である。
小さい頃から、その体型ゆえ体育の成績が悪かった息子であるが、このデーター表で見る限り、まぁ、まぁ、許せる範囲内に収まっている。

それを見た、夫。
「なんや、しょーもない」と一言。
彼は、体力テストの結果なんか、全然興味がないという。
だいたい、なんのためにするのかその目的がわからない、とも言う。

標準的日本人の考え方である両親に育てられた私は、何事も一生懸命するのが大切だ、結果は悪いより良いに決まっている、特別に秀でてできるよりも、何事も平均的に出来る方が良い、というような価値観を植え付けられて育った。
だから、学校からやらされる体力テストをいやだなぁと思いつつも、何のためにこんなことをやらされるのか、などという疑問を持ったこともないし、悪くても平均以上の数値をださないと落ち着かなかった。
だが、夫は違う。
学校で履修科目にあった、逆上がりも、高鉄棒も、練習することもなく肉屋の冷蔵庫にぶらさがるブタのごとく、だらんとぶら下がって過ごしたというのだ。
熱血漢の体育教師が、頭にきたのは言うまでもない。
だが、ペーパーテストで悪い点をとらないのと、球技が得意だったので悪い成績をつけたくてもつけられなかったという。
そんな夫の理屈はこうである。
「大人になって、デートするときに『さあ、鉄棒をしに行くぞ』とか『さあ、跳び箱をしよう』とかって言うか？
『オレ、二重跳びが連続５０回飛べるんやとか、前回りが連続２０回できるんや』
とかって、デートのときに見せたりするか？
そんなんで女の子釣れるとおもうか？
それよりも、テニスが上手い、ボーリングが上手いっていう方が絶対女の子の気が惹けるわ。
そんな大人になって何の役にも立たん様なこと、必死になってやってもしゃーないわ。あほらし。」
と、にべもない。

秀でた結果はだせずとも、それなりに頑張ってやってきた私は、歯ぎしりしつつも返す言葉が見つからない。
確かに、
「どうだ、上手いだろう（藤岡弘調）」と大車輪を見せられても、その場では盛り上がりはするが、デートでそれを見せられたら・・・

夫の考え方が正しいとは思わないが、彼のように合理的に生きていたなら、もう少しは楽に生きられたのかも知れないなぁ、と屁理屈を聞きながら思うのであった。