8月23日、戒告処分について人事委員会本人尋問が行われます。不服審査申出から随分時間が経過しましたので、当ブログを通して、改めてこれまでの軌跡を紹介します。まず、2015年2月3日に行った冒頭陳述を掲載します。「君が代」条例のもと、学校でどのようなことが起こったか、ぜひ多くのみなさまに知っていただきたいと思います。
人事委員会第1回口頭審理 冒頭陳述(2015.2.3)
辻谷博子
人事委員をはじめみなさまへ、
なぜ、私が入学式において「君が代」斉唱時不起立であったのか、なぜ、戒告処分を不服とする申立てを行うのか、口頭審理の冒頭にあたり述べたいと思います。
大阪に「君が代」条例が制定されたとき、私は、これは“禁じ手”、つまりしてはいけないことだと思いました。「君が代」を学校で実施するかどうかについては、二十年以上にわたって議論がありました。教員ばかりではありません。生徒や保護者からもいろんな声を聴いて来ました。「君が代」については実に様々な考えがあります。その都度、私たちは話し合いをし、どうするかを決めて来ました。私は、「君が代」問題に限らず、異なる立場や異なる意見を持つ者が意見を交わし合うことはとても大事なことだと思っています。
ところが、「君が代」条例は、教職員に「君が代」起立斉唱を義務づけることによって、そう言った学校での議論を封じ込めることになりました。条例で決まったから仕方がない、管理職を初めとして何度この言葉を聞いたことでしょう。命令が出た以上処分されない為には止むを得ない。学校から話し合いの余地を奪い、ただただ命令に従えという遣り方は間違いなく生徒にも影響します。
当時の橋下知事は、これは服務の問題であると繰り返し言いましたが、「君が代」問題は、なにより教育の問題であり、人権の問題、憲法上の問題です。
条例制定後、職務命令が発出され、2012年の卒業式は「君が代」不起立を理由としてこれまでにない多くの教員が処分されました。私は、卒業式は家の事情で休まざるを得ませんでしたが、入学式を前に、どうすればいいだろうかと考えました。1年生の副担任であり、また人権教育の主担でもあり、そして教員として最後に迎え入れる新入生でした。当然私は入学式に参列しなければならないと考えました。しかし、当時松井知事は不起立の教員は現場から離すことも考えているとの報道もありました。現場から外されることは恐怖でした。
そんな時、中学からの情報で「君が代」は歌えないクリスチャンである新入生がいることを知りました。入学式が人権侵害の場になってはいけないと、私は中学を訪れましたが、それ以上のことはわかりませんでした。私はやはり入学式には参列しなければならないと思いました。参列すれば、これまでと同じように「君が代」斉唱時には静かに座るしかありませんでした。君が代」が式次第に入るようになってから、私自身を守るために最低限私にできることは座ることだったのです。私はそのことを校長に伝えました。
しかし、校長は、条例ができた以上は、それに従ってもらわなければ困る、式場内に入れるわけにはいかないと頑として認めてはもらえませんでした。
教育委員会からは、全教職員を式場内か式場外か分かる一覧を作成せよと校長に指示がありました。これまでの入学式から考えればあまりにも異常でした。校長は、職務命令を出したその時から、式場内の教職員が全員起立し、教育委員会に無事報告することが自分の務めであると思っているかのようでした。条例と職務命令は入学式をすっかり変えてしまったのです。少なくとも、教育委員会と管理職にとっては、教員に「君が代」を起立し歌わせることがなによりの目的であるかのようでした。私は、条例には従うことはできないと言ったのですが、「君が代」起立不起立で頭がいっぱいの校長には、「不起立を貫く」としか考えられなかったのだと思います。
さらに、橋下市長はメディアを通して、「立てないと考えている教員には逃げ道を与えている」「立ちたくなければ欠席という選択をするのは大人の知恵」と発言し、ますます入学式は、「君が代」起立斉唱することが、教員にとって参列の条件となるほど異常な事態に陥りました。
直前の職員会議で校長が示した役割分担表で、私は「式場外」に当てられていました。「変更を希望する教員がいれば認めてほしい」と発言したところ、校長は希望があれば教頭に言うようにと認めてくれました。私は式場内への変更を教頭に申し出ましたが言下に否定されました。教頭もまた不起立であることがわかっている私を式場内に入れるわけにはいかないと考えたようです。
当日、私は警備の仕事をしていました。ところが、開式の少し前、新入生の親からリボンを届けてほしいと頼まれ、それを教室に届けた後、入学式に参列しました。すぐに教頭が私のところへ来て持ち場に戻るようにと言いましたが、私はそこで教頭と押し問答になるのはまずいと判断し、咄嗟にこれ以上言うと騒ぎになりますよ、と言いました。私は入学式に参列し、新入生を見届けることができて本当によかったと思っています。後日、クリスチャンの生徒から「君が代」は歌わなかったと話を聞くこともできました。
人事委員のみなさまへ、職務命令に違反したから戒告処分は妥当と考えれば、そもそも私は不服申立てをしていません。全国で唯一、教職員に「君が代」起立斉唱を強制し、しかも、3度の不起立で免職まで規定する条例は、大阪の教育のあり方を変えてしまいます。何より条例は思想・良心の自由を保障した憲法に違反しています。どうかその是非について、ご審理いただき正しきご裁決をお願いいたします。
人事委員会第1回口頭審理 冒頭陳述(2015.2.3)
辻谷博子
人事委員をはじめみなさまへ、
なぜ、私が入学式において「君が代」斉唱時不起立であったのか、なぜ、戒告処分を不服とする申立てを行うのか、口頭審理の冒頭にあたり述べたいと思います。
大阪に「君が代」条例が制定されたとき、私は、これは“禁じ手”、つまりしてはいけないことだと思いました。「君が代」を学校で実施するかどうかについては、二十年以上にわたって議論がありました。教員ばかりではありません。生徒や保護者からもいろんな声を聴いて来ました。「君が代」については実に様々な考えがあります。その都度、私たちは話し合いをし、どうするかを決めて来ました。私は、「君が代」問題に限らず、異なる立場や異なる意見を持つ者が意見を交わし合うことはとても大事なことだと思っています。
ところが、「君が代」条例は、教職員に「君が代」起立斉唱を義務づけることによって、そう言った学校での議論を封じ込めることになりました。条例で決まったから仕方がない、管理職を初めとして何度この言葉を聞いたことでしょう。命令が出た以上処分されない為には止むを得ない。学校から話し合いの余地を奪い、ただただ命令に従えという遣り方は間違いなく生徒にも影響します。
当時の橋下知事は、これは服務の問題であると繰り返し言いましたが、「君が代」問題は、なにより教育の問題であり、人権の問題、憲法上の問題です。
条例制定後、職務命令が発出され、2012年の卒業式は「君が代」不起立を理由としてこれまでにない多くの教員が処分されました。私は、卒業式は家の事情で休まざるを得ませんでしたが、入学式を前に、どうすればいいだろうかと考えました。1年生の副担任であり、また人権教育の主担でもあり、そして教員として最後に迎え入れる新入生でした。当然私は入学式に参列しなければならないと考えました。しかし、当時松井知事は不起立の教員は現場から離すことも考えているとの報道もありました。現場から外されることは恐怖でした。
そんな時、中学からの情報で「君が代」は歌えないクリスチャンである新入生がいることを知りました。入学式が人権侵害の場になってはいけないと、私は中学を訪れましたが、それ以上のことはわかりませんでした。私はやはり入学式には参列しなければならないと思いました。参列すれば、これまでと同じように「君が代」斉唱時には静かに座るしかありませんでした。君が代」が式次第に入るようになってから、私自身を守るために最低限私にできることは座ることだったのです。私はそのことを校長に伝えました。
しかし、校長は、条例ができた以上は、それに従ってもらわなければ困る、式場内に入れるわけにはいかないと頑として認めてはもらえませんでした。
教育委員会からは、全教職員を式場内か式場外か分かる一覧を作成せよと校長に指示がありました。これまでの入学式から考えればあまりにも異常でした。校長は、職務命令を出したその時から、式場内の教職員が全員起立し、教育委員会に無事報告することが自分の務めであると思っているかのようでした。条例と職務命令は入学式をすっかり変えてしまったのです。少なくとも、教育委員会と管理職にとっては、教員に「君が代」を起立し歌わせることがなによりの目的であるかのようでした。私は、条例には従うことはできないと言ったのですが、「君が代」起立不起立で頭がいっぱいの校長には、「不起立を貫く」としか考えられなかったのだと思います。
さらに、橋下市長はメディアを通して、「立てないと考えている教員には逃げ道を与えている」「立ちたくなければ欠席という選択をするのは大人の知恵」と発言し、ますます入学式は、「君が代」起立斉唱することが、教員にとって参列の条件となるほど異常な事態に陥りました。
直前の職員会議で校長が示した役割分担表で、私は「式場外」に当てられていました。「変更を希望する教員がいれば認めてほしい」と発言したところ、校長は希望があれば教頭に言うようにと認めてくれました。私は式場内への変更を教頭に申し出ましたが言下に否定されました。教頭もまた不起立であることがわかっている私を式場内に入れるわけにはいかないと考えたようです。
当日、私は警備の仕事をしていました。ところが、開式の少し前、新入生の親からリボンを届けてほしいと頼まれ、それを教室に届けた後、入学式に参列しました。すぐに教頭が私のところへ来て持ち場に戻るようにと言いましたが、私はそこで教頭と押し問答になるのはまずいと判断し、咄嗟にこれ以上言うと騒ぎになりますよ、と言いました。私は入学式に参列し、新入生を見届けることができて本当によかったと思っています。後日、クリスチャンの生徒から「君が代」は歌わなかったと話を聞くこともできました。
人事委員のみなさまへ、職務命令に違反したから戒告処分は妥当と考えれば、そもそも私は不服申立てをしていません。全国で唯一、教職員に「君が代」起立斉唱を強制し、しかも、3度の不起立で免職まで規定する条例は、大阪の教育のあり方を変えてしまいます。何より条例は思想・良心の自由を保障した憲法に違反しています。どうかその是非について、ご審理いただき正しきご裁決をお願いいたします。
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