『LAMB ラム』、バルディミール・ヨハンソン監督、2021年、106分。アイスランド、スウェーデン、ポーランド合作。
第74回カンヌ国際映画祭、ある視点部門受賞。
怖いのはちょっと苦手で観るか迷っていたけど、予告に釣られて観に行った。
アイスランドの大地が、地に沿うような視点から撮られている。
冠に雪を抱く山々。広がる牧草地。軋むような暗闇に、白夜。灰色の動かない空。
横に動く霧。羊達の足元の泥。
そんな景色を見ていると、「何か」が起こっても不思議ではないような感覚になる。とは言え、羊飼いの夫婦はいたって普通の生活を送っている。冒頭から「何か」の気配が近づくけれど、最後までそれは明かされない。
アイスランドの大地と、扉を抜ける風と、唸り声。
この映画をギリシャ神話の精霊サテュロスに結びつけ、「性と誕生の物語」と解釈する人もいた。説得力があるし、実際そうなのかもしれない。
ただこのサテュロスは、人間を見向きもしないし、冷たく尊大な眼で世界を観察し、ただ己の摂理を成して行く。
この恐怖の原因を大地のみに負わせるのは、どうも無理なのかもしれない。
なぜなら並行して描かれる人間の思念。自然はむしろ、それを鏡映しにしているようなのだ。
製作総指揮には、主演のノオミ・ラパスを始めとした沢山の名前があるが、ハンガリーの巨匠、『ニーチェの馬』のタル・ベーラの名前もある。
ヨハンソン監督は、師であるタル・ベーラの名のおかげで資金集めがスムーズに出来たとも話している。
カンヌで上映される数日前、完成作を観たタル・ベーラは、笑顔で「ハッピーだった」と言ってくれたそう。
畏れ多いことではあるが、怖い映画を観て、笑顔で「ハッピーだった」と言える人に、私もなりたい。出来ることなら。
2時間弱釘付けで、たっぷり引き込まれはしたけど。いや、怖いから。
そう言えば、ゴーォォォという低音が響いた際、座っていた椅子が小さく震えた。
4DXではないので、ただ振動が伝わったのだろうけど。
皆でサッカーを観ているのかと思いきや、ハンドボールだったシーン↓大興奮の3人。
子羊に反抗期はない。↓そうなのか?
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます