
長男20歳。
カズが選んで保管していた20歳になるその日を心待ちに待っていたワイン。
寒い誕生日だったが、長男が産まれた日も3月だというのに雪が降った日だった。ギリギリまでかかってしまった確定申告の帳簿付けを終え、出産予定日二週間前、実家に帰ったと思ったら、たった1日で破水してしまい、大雪の中、病院へ‥立ち会い出産のため、慌てて駆け付けた彼はずぶ濡れで「バスが来なくてもう大変だったよ〜、足先までビショビショ。」なんて言って息を弾ませてやって来た。
ずっと昔のことも亡くなる直前の最近のことも、彼の言葉や仕草や表情が鮮明に残っている瞬間瞬間がある。
ソムリエだったパパと頂くはずだったワインはお酒のことなんて何もわかっちゃいない、役不足な私とカンパイ。
「パパ、いつも難なく開けていたよね?」とまず栓が開けられない。
こりゃムリだわ、と思ったら‥力技でコルク栓抜くのを見ていたら、カズのスマートな所作を思い出してしまい、何だか泣けて来て2人で泣いた。
「本当だったら今頃、誰も聞いていないワインのウンチクたれて、酔っ払って、良かったな〜、息子と飲むお酒は最高だな、なんて同じ事何度も言って‥パパ泣いていたよね?」
パパと元気に20歳になれたことに感謝し、お祝いしたかったね。
記念の日のお家ご飯は普通のご飯。何が食べたい?って聞くと、「寿司、焼肉、唐揚げ、ハンバーグ」返ってくる答えはいつも同じだからハンバーグにしてみた。

我が家は料理によって何となく作る人が決まっていて、洋食全般はカズの役目、聖域だったのだが、何故かハンバーグだけはプロが作る肉肉しい味より繋ぎがいっぱいの主婦の味の方が当時の子ども達の口には合って、私が作っていた。
長男が小さい頃、キッチンでハンバーグを作っていると毎回必ず「ボクのハンバーグ、一番大きくしてね。」と私に耳打ちしてくるものだから我が家のハンバーグはドンドン巨大化し、あるとき逆に娘に「大き過ぎるよ〜」と言われ、小さくなったりした。
お料理一つにもそれぞれの家庭の歴史がある。
そんな可愛かった長男が大人になり、ワインを開けて「ワインの良さ、全然わかんない‥」なんて言ってお酒を飲んでいる。
カズが亡くなったとき、自分だって悲しくていっぱいいっぱいなはずなのに「ママが可哀想だ」と言いながら号泣した母想いのパパ譲りの優しい子。
どうかこれ以上悲しい事が起こらないよう家族がずっとずっと元気で過ごせますように‥。
‥そして私も3月産まれ。
休日はありがたい事にママ友たちが集結し、一足早いお誕生日会を開いてくれた。子ども達がいなければ出会うチャンスもなかったんだな、と思うと
子ども達の存在に感謝だなぁ‥
温かい友の存在に感謝だなぁ‥
皆に会えたのはカズがいたからだなぁ‥
と改めて思う。

とっても嬉しかった感慨深い一日。
カズの不在を重く感じる一日。
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