ただ号泣する為に急遽、杜の都へ…。
ドンヨリ落ちていた彼の誕生日の夜、娘から、『最終抽選で当たったよ!パパが当てたんだ!」
アルバム
『miss you』はコンセプトからも苦し過ぎて今の私には聴くに堪えず、ほとんど聴けていない、ライブに行くのも勇気が要る。
事故に遭い傷だらけで戻った彼のスマホの待ち受けは2022年30周年ライブ時の『半世紀へのエントランス」
あのとき櫻井くんは歳を重ね、周りの親しい人が亡くなったりして、あとどれだけの時間、音を奏でられるかな?みたいなことを言っていた。
あのときカズは『半世紀へのエントランスって事は活動休止も解散も50周年まで無いって事だよね?」と喜んでいた。
これからライブは地方のに行こう、美味しいもの食べて、焼き物、美術館巡りと大ファンの新進女流建築家Kちゃんの作品を観て回ろう…。
小さな夢と幸せは膨らみ、それなのに49歳という若さで健康には何の心配もなかった彼が一番先に死んだ。
彼がいなくなった世界で聴く音は私には今までと全く違う音となって響いた。
櫻井くんの歌声には必ずカズの歌声や細かい表情や仕草がまでもがオーバーラップする。
独立開業して数年、全てが上手くいかなかった頃、『Everything(It's you)』の中のフレーズ
‘’何を犠牲にしても
守るべきものがあるとして
僕にとって今 君が
それに当たると思うんだよ‘’
…という部分を引用した手紙をもらった事がある。
櫻井くんの歌うラブソングはそのままカズが日々私へ歌うラブソング…だからどう聴いたら良いのかわからなくなった。
ライブは様々な装飾を削ぎ落とした4ピースバンドの原点を強く体現したような力強い素晴らしいものだった。『miss you』アルバム外の選曲、曲順共によく考えられているなぁと絶妙過ぎて、カズがいたら何て言ったかな?…と思い、ライブに行ってしまったことで、改めて本当に一人になってしまったんだな、と実感させられることが多々あった。
長い間、世話好きな彼に何もかもを依存して生きてきた。その為にあなたはいるのでしょ?とただやりたい事を口にし、着いていくだけで、何かを調べたり予約したり地図を見たり運転したりメニューを見たり何かを準備した事がなかった。彼は時間配分、行く場所、必要なもの…など全ての段取りを組む優秀なコーディネーターで食べる物に関しては並々ならぬこだわりがあり、私が口を挟む余地なんてなかった。
今回、新幹線の予約なんてしている自分にビックリ…。旅先で観光客の方と世間話になり「お嬢さんと旅行?ご主人はお留守番?」なんて言われ、初めて「あ、主人はいないんです」と答え、何気なく質問した方は困惑した表情を浮かべる。嫌だなあ、これがこれまで考えたこともない日常なんだなあ、キツいなと思った。
アンコールの『Sign』。私達が一番大切にしていた日常、彼がいたありふれた時間を失い、彼が好きだったフレーズは今の私に一番辛く重く響く。
『Ffifty's map 〜おとなの地図』
彼が健在だったならば、今頃どんな地図を描いていたのだろうか…?『終わりなき旅』に乗せられ、また高い壁を登っていた事と思う。50代のカズの活躍、一番近くで見続けたかったな、と心から思う。