「運命のふたり」
「想いを断つと言われる“忘憂酒”、小豆や青梅、白豆蔲をつかった上等な酒です」と変装した安世耿が言う。瑶花が「あなた…」と言うと、安世耿は「以前、桃花廟でお目にかかりましたね」と話す。
「ご一緒しても構いませんか」と言う安世耿。瑶花が「どうぞ」と返し、安世耿は席に座る。
安世耿は「忘憂酒を一口飲めば、憂いを忘れられ、どんな悩みも消え去ると言う。そういえば桃花廟では殿方との縁を祈ってましたね。男は星の数ほどいます。1人の相手にこだわる必要はない」と言う。「私の憂さ晴らしに付き合わせるのは気の毒だわ」と言う瑶花。安世耿は「私の想い人と酒を酌み交わすことは、二度と叶いませんから」と言う。
「想いを断ち切り、過去を忘れようと別の女性を妻に。素直で従順な妻ですが、心では別の相手を想っているのです」と話す安世耿。瑶花は「深い愛情は、時に厄介なものですね」と言う。安世耿は「私は耿といいます。あなたは?」と尋ねる。「名前など、どうでもいいわ。もう帰らないと。いつか、また」と言って、瑶花は席を立つ。安世耿は店を出て行く瑶花を見ながら笑みを浮かべる。
于春童から王妃の護送が諸葛正我の命じたことだと報告を受けた安世耿は、諸葛がすでに玉璽の件で自分を疑っていると考え「四大名捕が王妃をどうするか、見極めてから動け」と言う。玉璽に万一のことがあれば、すぐに手を打てと。
如煙の部屋の前で見張りをしていた奴奴。冷血は点穴で動けなくし、離陌と部屋の中に入る。
「如煙さんを救えるぞ」と無情に声をかけ、離陌を如煙に向けて椅子に座らせる冷血。自身も離陌の後ろに座る。冷血が「怖がるな、俺がついてる」言い、離陌は読心術を始める。
如煙のそばには、やはり老人がいた。また追い出されそうになるが、冷血のおかげで老人の掌(しょう)を返し、老人が消える。
囚われていた如煙の意識が戻り、離陌は自分の名と無情に頼まれてきたことを話す。「今すぐ、ここを出ましょう」と如煙の手を引く離陌。それを安世耿が察知する。
“読心術を使う者が?”と思った安世耿が術を送る。離陌と如煙の間に亀裂が走り、地が2人を引き裂く。割れた所には溶岩のようなものが流れ、そこから災いの神・計都と羅睺が現れる。
計都と羅睺によって炎に包まれる離陌。如煙は「もう行って、死んでしまうわ」と離陌に言うが、離陌は「あなたの支配を解き、救い出してみせる」と諦めない。そして冷血の力も加わり、離陌は計都と羅睺を消し去ってしまう。周りの景色も春のような、おだやかなものに変わっていく。
力を使い切り、離陌は意識を失う。同時に、現実の世界で意識を取り戻す如煙。そばにいた無情が「如煙」と言う。
遠くから術を送っていた安世耿は、術が跳ね返され“制心術を破れる者が神侯府にいたとは”と思う。
「無情、あなたなの」と如煙が言う。無情は「如煙、気がついたか」と喜ぶ。
籠は中からしか開かなかった。如煙が椅子にあった仕掛けを押し、籠が開く。無情と抱き合う如煙。
点穴が解け、奴奴が部屋に入ってくる。入れ違いに離陌を抱きかかえた冷血が出て行く。
奴奴が籠から出ている如煙を見て驚いていると、追命と鉄手、瑶花が来る。
追命が如煙の座っていた椅子に隠されていた玉璽を見つけ、奴奴は部屋を飛び出して行く。
寝台に寝かされていた離陌の意識が戻る。冷血は如煙を心配する離陌に、目覚めて無情と一緒にいることを話し「ゆっくり休め」と言う。そして離陌を見つめたあと「どんな時も俺が守ってやる」と言う冷血。
無情は如煙に毒消しを飲ませる。如煙は無情の目を心配した後「私のことなど、とうに忘れたかと」と話す。「君と過ごした幸せな時間を、忘れられるわけがないだろう?」と言う無情。
無情が玉笛を持っていることに気付き「まだ持っててくれたの?この笛を贈った日、あなたは口づけしてくれた。運命は残酷ね」と如煙が言う。「過去は忘れよう。もう離れない」と無情が告げ「命ある限り、ずっと一緒にいましょう」と言う如煙。
四大名捕が玉璽を発見し、王妃も目覚めたと春童は安世耿に伝える。そこに奴奴が来る。「だましたのですね」と言う奴奴。玉璽など知らなかった、玉璽も王妃も今や四大名捕の手中に、私は謀反など望んでいないと。安世耿は「玉璽を使い、挙兵するつもりだった。私が皇帝になれば、奴らなど、どうにでもできる。お前も思う存分、仇が討てるというわけだ」と話す。それでも「謀反に関わるつもりはありません。陛下とのご縁もこれまでです」と奴奴は立ち去る。
春童が連れ戻すか安世耿に聞く。しかし安世耿は「放っておけ。そのうち戻ってくる」と返す。
安世耿は都への帰途につく四大名捕が、どの道を通るか調べるよう命じる。「通り道で待ち伏せするのですね。奇襲をかけて四大名捕を一網打尽にし、玉璽を奪います」と言う春童。安世耿は「私の心が読めるようだな」と言う。
冷血たちは安世耿の真の目的が玉璽を隴西に運ぶのことで、温如玉の裏切りも玉璽の奪い合いだったことが分かる。追命が「離陌が心配か」と冷血に聞く。「読心術を使ったから、気が消耗していて回復に時間がかかる」と言う冷血。瑶花は「如煙さんはどうなの?」と言う。冷血は「安世耿の制心術にかかっていた」と話す。他人の意識と行動を支配し、意のままに動かす技だと。「心を乗っ取られていたわけか」と言う鉄手。冷血は「乗っ取られた側も激しく消耗し、気が損なわれていく」と言う。
「取り戻した玉璽を急いで都へ運ばなくては」と言う瑶花。冷血が「どの道が最も安全か、慎重に選ばねば」と言い、追命も「玉璽を守ることが何より大事だからな」と話す。瑶花が「周辺の状況を調査しましょう。冷兄さん、私と一緒に…」と言いかける。しかし冷血は「俺は残る。鉄手たちと行ってくれ」と言う。
鉄手に正しい道を歩むと約束した依依。しかし毒を断てば死んでしまうため、毒蛇に手を噛ませる。その時、依依を呼ぶ鉄手の声が。急いで鉄手の元へ行った依依は、ずっと捜してたと言う鉄手に「退屈だから散歩でもしようかと」と言ってごまかす。
依依は気が塞いでいると話す鉄手と一緒に散歩へ行くことにする。
歩きながら鉄手は「如煙さんは目覚めたけど、千香百味の毒は強く手を焼いている」と話す。無情の愛情の深さには感動させられると。依依が「命がけで人を愛せるって幸せなことね。だけど…」と言うと「2人の恋路には障害が多すぎる」と言う鉄手。依依は「障害を乗り越えてこそ、真実の愛よ」と言う。鉄手は依依の手を取り「俺たちも同じように想い合ってる」と話すが、依依は目をそらしてしまう。
「何だ?」と鉄手が聞く。依依は「如煙さんが死んでしまったら、無情はどうなるの?」と言う。「そんなことになったら、無情は後を追うだろう。愛を失えば生きていても死んでいるのと同じだ」と言う鉄手。依依は「いつか私が死んだら、あなたも後を追ってくれる?」と言う。鉄手は笑顔で「バカだな。君が死ぬわけないだろ」と言い、依依と手をつないで歩き出す。
庭にいた瑶花に公主が話しかける。「冷兄様は離陌の心配ばかり。腹が立って眠れないわ。お前も同じ?」という公主。お前を敵視してたけど、今は離陌こそが敵だわ、どうすれば?と。瑶花は「心にいるのは離陌だけ。とても入り込めません」と答える。そして「想い続けていれば、いつか伝わるはずです」と言う瑶花。
寝ている鉄手の部屋へ行き“鉄兄さんに手を握られて嬉しいはずなのに、つらくてたまらない。私は忌み嫌われ、蔑まれる毒女で、あなたは神侯府の名捕吏。生きる世界が違う。閻羅掌で強くなれた気がしたけど、今はこの手が憎い”と思いながら手紙を置いて出て行く。
如煙が寝ているそばで「決めたよ、如煙を連れて逃げる」と冷血に話す無情。冷血が「どこへ?」と聞き、無情は「誰にも邪魔されず、2人になれる所へ」と答える。「如煙と隠遁するつもりか」と冷血が言うと、うなずいた無情は「離れていた時間を取り戻したい」と返す。無情の気持ちを理解した冷血は「安世耿は決して2人を見逃しはしない。何かしら手を出してくるはずだ。だが四大名捕の名にかけて阻止してみせる」と言う。さらに身を守るために目を直してから出発しろと言う冷血。
目覚めた鉄手は“鉄兄さん、そう呼ぶのも最後です。もう会いません。理由は聞かないで。捜さないでください”という依依の置き手紙を読む。
離陌は如煙の部屋へ行く。目覚めさせてくれたお礼を言う如煙。「あなたは無情様の想い人だもの。皆が無事を喜んでるわ」と離陌は言う。
離陌は「無情様はあなたが亡くなったと言ってた。でも…」と尋ねる。如煙は嫁入りの日に輿の上で自害しようとしたが、安世耿に救われたことを話す。「命の恩人だから、お妃に?」と言う離陌。如煙は首を横に振り「安世耿は皇族だし、私の両親を軟禁し妃になれと迫ったの。逆らうことなどできず、黙って嫁ぐしかなかった」と話す。
離陌はこれからどうするのか聞く。「ずっと離ればなれだったから、これからは1日1日を大事に過ごしていきたい。永遠なんて望まない。今、この時を共有したいの」と答える如煙。しかし毒に侵されている如煙は、明日の命も知れない身だと考え「いつか私が死ぬ時がきたら、無情のこと、あなたに頼みたいの」と言う。私がこの世を去ったら、あなたが彼のそばにいてあげて、その時は“どうか穏やかで幸せな人生を送ってください”と伝えてほしいと。困った離陌だったが「分かりましたと」と言う。
捜していた依依を鉄手は町で見つける。手紙のことを問いつめると、嫌いになったの、と嘘をつく依依。鉄手は「自分を責めているんだろ。毒女の自分など、俺と釣り合わないと思ってる」と言う。依依が「だったら、どうなの」と言い返す。「構わない。毒女だろうと、俺は気にしない」という鉄手。依依は「私なんかと一緒にいたら、人に笑われるわよ」と言う。「他人は関係ない。君はきっと毒を断ち切れるはずだ。どんな困難も一緒に乗り越えよう。行くな」と言って鉄手は依依を抱きしめる。そんな鉄手を依依も抱きしめ返す。
屍魂丹のせいで、苦しい奴奴。このままでは死んでしまうと思いながらも、安世耿の元へ戻りたくない奴奴は、倒れてしまう。
公主は町で出会った占い師から「あなたが走り去った時、相手が追ってくれば脈はある。追ってこないようなら諦めたほうがいい」と言われる。できるだけ遠くへ行ってみるといい、どこまで追ってくるかで相手の想いの深さが分かる、と。
如煙の前で離陌は無情の目の湿布を外す。初めは眩しそうにしていた無情だったが、治った目で如煙を見ることができて喜ぶ。
周辺の道をくまなく探った冷血は「待ち伏せされにくい南側の道を行こう。大行岩を目指す」と追命、鉄手、瑶花、依依に話す。聞いた全員が扉の方を見る。部屋の外には男がいて、立ち聞きしていた。
寝台で目覚めた奴奴の近くには安世耿が立っていた。奴奴は「お前のような謀反者に用はない」と部屋を出て行こうとする。そんな奴奴に「屍魂丹の毒は誰にも消せぬぞ」と言う安世耿。奴奴が「なら死ぬまでだ」と返すと、安世耿は「仇を討つのは諦めたというわけか」と言う。忘れたのか、お前の一族が一夜にして朱煦悌に殺されたことを、死ぬのは勝手だが、あの世にいる仲間たちに顔向けできるのかと。涙を流した奴奴は、ひざまずき「殿下、お許しを。狼族の仇を討つため殿下に従います」と言う。
戻ってきた春童が「四大名捕は君安村を出て、南の大行岩を目指します」と安世耿に報告する。「大行岩へ向かうか。それは好都合だ」と言う安世耿。春童は「追跡して機会を伺い、しかるべき時に手を下します」と言う。
ーつづくー
冷血が助けてくれたとはいえ、離陌の戦いが凄かった!!( ゚艸゚;)
決して諦めない強さもあって。
離陌じゃなければ如煙を助けることはできなかったかも。
せっかく如煙は助かったのに…。
ずっと無情といさせてあげたい。
無情が二度も同じ苦しみを味わうことになったら、残酷すぎる(;д;)
とりあえず、無情の目が治ってよかったー。
公主は何をする気なんだろう…。
玉璽のこともあるから心配ヾ(・ω・`;)ノ
大事な時に足を引っ張りそうというか…。
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安世耿の制心術を冷血と一緒に跳ねのけるとは!
二人の共同作業の始まりが、無情たちのためになって
本当によかったです。
冷血は離陌にとって頼もしい人になりました。
冷血への片思いの二人、それぞれ動きが違います。
静の揺花は安世耿と出会い、それぞれの苦しさを分かち合いながら、
ちょっと心配です。
動の公主は姐姐のおっしゃるように気になりますよね、今後が。
そして、如煙も依依もちょっと不安ですね。
読心術もぐーんとスケールアップして・・冷血との共同作業、見応えがありました!
離陌の能力と冷血の支え、二人の信頼があっての奇跡のような救出劇でしたね。
そしてやっと如煙と無情がゆっくり会話ができるようになり、心が通うようになったのが嬉しいです。
如煙が無情のことを離陌に託そうとしているのはちょっと気になりますが・・
如煙には何とか回復してほしいし、離陌にも冷血がいるしね・・
続きも気になります。