1月25日
ダルい・・・・・・・。
超ダルい・・・・・・。
身体が泥になってしまったように、ベットに沈み込んでいく。
仰向けになったり、横を向いたり、うつぶせになったりと、姿勢を工夫してみるがどんな格好になっても身体の芯が抜かれてしまったかのような倦怠感で、自分の身体の重みで自分が潰れてしまいそうになる。
まるで自分の身体にそって引力がそこだけ強くなったかのようにどうしても起き上がることができない。
昨日の予感は的中だ。
いつもは半日しか起きていない身体で、昨日は朝から夕方まで弟の手術に付き添った。久しぶりに丸一日、外で行動した疲れが翌日にどっと襲ってくるのだ。
多少、調子がいいからといって、調子に乗って昼間活動しすぎると、決まって次の日の朝はこうだ。
やっぱり、治ってないんだなぁと痛感させられる。
結局、今日は14時近くまでベットの中に埋もれていた。
今日は一日ずっとそうしていたかったのだが、夕方から2週間に一度の通院の予約が入っている。起きなければならない。
ダラダラとベットから身体を引きずり出し、とりあえずシャワーを浴びる。
髪の毛や身体を洗っているうちに、だんだんと目が覚めてきた。
でも、身体の感覚はダルいままだ。
ドライヤーで髪を乾かしながら、電車の時間を考える。
今日は少し余裕をもって駅まで行けそうである。
コンタクトをはめようとするが、また手指が震えてなかなかうまく装着できない。
何度も眼球を指でつつきながら、なんとか両眼にコンタクトを入れることができた。コンタクト一つで大仕事である。
いつものように徒歩で駅まで向かい、終着駅で地下鉄に乗り換えた。
普段ならそのまま病院(というか正確にはクリニック)に向かうのだが、今日はその前に弟が入院している病院に様子を伺いに行かなければならない。昨日、本人と約束したのだ。
10年ぶりの再会から、今回で3度目の対面である。
病室に通じる病棟の廊下を歩きながら、未だにどこか緊張している自分がいる。
ベットまでたどり着くと、弟は目を開いたまま、昨日と同じ体勢のでベットに横たわっている。
僕が挨拶代わりに無言で軽く手を振ると、弟は「やぁ、どうも。」と気楽に返事を返してきた。どうやら緊張しているのは僕だけのようである。
僕はベットサイドの丸椅子に腰掛け、二言三言話を交わす。
昨日よりはだいぶ身体も楽になったとのことだ。
だが、胸には管が入ったままだし、腕にも点滴用の留置針がささったままである。
身体を動かすのがつらいので、ほぼ一日中同じ姿勢でベットに身体をあずけているそうである。腰からお尻にかけて「床ずれ」ができそうだと笑いながら話していた。
主治医の話だと、状態が安定していれば、明日、胸に刺さっている管を抜くことになるらしい。術後の経過が良好だとその分、退院も早くなるとか。
早ければ月内にも退院できるかもしれない。
後は会計だが、弟はフリーターで蓄えもないので、どうしてもお金が足りないときには相談するように話して、正味30分ほどで病室を後にした。
お金が無い時は相談しろ、と兄らしいセリフを残してきたが、僕は無職で鬱病で母親の家に居候中である。無論、収入はなく今は退職時に任意継続した健康保険組合から支給される「傷病手当金」に頼って生活している。
手術の費用は入院中の医療費を含めてどれくらいになるのだろう、実際に弟からお金の相談をされたときはどうしようかなぁ・・なんてことを考えているうちに病院についた。
今、通院している病院は18時までは完全予約制、18時からの夜間診療帯は予約なしでもOK、そのうえ隔週で土日も営業という社会人にとってはとても通いやすい病院である。しかし、18時以降は混雑しやすく、日によっては受付してから診察まで2時間待ち、3時間待ちといったことも珍しくない。小規模な良くある街のメンタルクリニックながら最近、事務スタッフも一人増え、結構な数の患者さんを抱えているようであった。
受付を済ませると、小さな小部屋の診察室に通される。
しばらくして、主治医がいつものようにノートパソコンを片手に入ってきた。
「どうも~。その後、どうですか?」
僕は午前中はほとんど寝ていて起き上がれないこと、憂鬱感や不安感はあまり感じなくなったが、口渇感や手指の振るえに悩まされていることなどを話した。
主治医の判断は、「順調に経過してきている。もう少し今のお薬で様子を見ていきましょう。」だった。
僕には何が順調なのかよくわからなかったが、おそらく専門的な見地からして、僕が話したことの中に、病状の微小な変化を捉えての言葉であろう(というか、そうあって欲しい。)と解釈して納得することにした。
ただし、口渇感や手指の振るえは今服用している薬の副作用だと思われるので、口乾感を軽減する新しい薬(ターゼン5mg錠)を新たに処方された。ただ、手指の振るえについては、病状の回復とともに自然になくなっていくと思われるのでしばらく辛抱してください、とのことだった。
15分ほどで診察は終わり、次回の診察の予約と会計をすませて、処方箋を受け取り、同じビルの中にある調剤薬局で薬を受け取った。
しかし、医療費は高い。僕は行政の医療費補助制度を利用しているので、通常の健康保険よりも自己負担が少なくて済むのだが、それでも2週間に一度の通院で結構なお金がとんでいくので、医療費補助制度が適用されていなかったら、無職の僕には到底通院を継続することは不可能であったろうと思われる。
次回の診察は2週間後の14:50という、なんとも微妙な時間。
この2週間で少しでも体調が回復していればいいなと思いながら、雪の降る道を帰途についた。