3月30日
夜、20時を過ぎた頃だったろうか。
玄関の鍵を開ける音が聞こえ、母が仕事から帰ってきた。
居間の扉をあけ、コートを脱ぐ前から愚痴を言い始めている。
これはいつものこと。
ただ、今夜は様子が少し違う。
・・来た。
母の「感情爆発」。
僕の母は数ヶ月に一度のペースで、感情を爆発させ、一人泣き叫び、錯乱する。
どうやら今回の引き金は、職場での雇用条件を巡るやり取りにあるようだ。
これまでに断片的に聞かされていた情報から鑑みるに、職場の管理職である彼女は、理事長、施設長、副施設長、その他管理職を巻き込んだ政争の只中にあるらしい。
今日は政治的な動きがなにかあったのだろう。
職場での恨みつらみを、まるで呪文のように、誰に伝えるともなく、それでいて僕の存在を確実に意識しながら、とうとうとしゃべり続けている。
ヤバイ兆候だ。多分、数分のうちに彼女の感情爆発が起きるだろう。
しかし、居間で立ったまま話を聞かされていた僕は、その場を去ることも、動くこともできずに立ちすくんでいる。
声が涙声になってきた、顔は伏せているが、鼻をすする音も聞こえる。
完全にスイッチが入った。
突然大声をあげ、泣き叫びながら、彼女は、これまでの自分の半生と、今の職場に対する、恨みつらみを語り続ける。
自分のおかれた辛い境遇を、独り言のように、しかし確実に僕に向かって、語り続けている。
こんなとき、僕は吐きそうな気持ちになりながらも、そこに立ち尽くすしかない。
こうなってしまった彼女には、もうどんな慰めの言葉は通じない。
ただ泣いて、くだを巻き、ひたすら自分の人生を憂う。
こんなときの彼女の周りには、暗黒のオーラが猛烈な勢いで放たれている。
同じ空間にいるだけで、気持ちが悪くなり、吐き気をもよおし、一刻も早くその場から逃げ出したくなる。でも、足が動かない。
彼女が泣くのは悲しいからではない。悔しいからだそうだ。
僕は「悔しくて泣く」という感覚がわからないのだが、彼女は良く泣く。悔しいと言う理由で。
そのまま50分ほどたった頃、僕はやっと解放された。
こうしてブログを書いている間にも、彼女は隣の部屋で布団に入りながら、今日一日に起こったことを反芻し、悔しさと虚しさにむせび泣いていることだろう。
彼女はの未来観測は恐ろしくマイナス思考である。
感情爆発を起こしている時の彼女は、全身から闇を漂わせている。
僕はうんざりするのと同時に、彼女への同情を禁じえない。
しかし、この親にしてこの子ありである。
血のつながりにつくづくうんざりした夜だった。
僕だって、不安なことを抱えているのに・・。
その声は、僕の心の空洞に虚しく響いただけだった。
夜、20時を過ぎた頃だったろうか。
玄関の鍵を開ける音が聞こえ、母が仕事から帰ってきた。
居間の扉をあけ、コートを脱ぐ前から愚痴を言い始めている。
これはいつものこと。
ただ、今夜は様子が少し違う。
・・来た。
母の「感情爆発」。
僕の母は数ヶ月に一度のペースで、感情を爆発させ、一人泣き叫び、錯乱する。
どうやら今回の引き金は、職場での雇用条件を巡るやり取りにあるようだ。
これまでに断片的に聞かされていた情報から鑑みるに、職場の管理職である彼女は、理事長、施設長、副施設長、その他管理職を巻き込んだ政争の只中にあるらしい。
今日は政治的な動きがなにかあったのだろう。
職場での恨みつらみを、まるで呪文のように、誰に伝えるともなく、それでいて僕の存在を確実に意識しながら、とうとうとしゃべり続けている。
ヤバイ兆候だ。多分、数分のうちに彼女の感情爆発が起きるだろう。
しかし、居間で立ったまま話を聞かされていた僕は、その場を去ることも、動くこともできずに立ちすくんでいる。
声が涙声になってきた、顔は伏せているが、鼻をすする音も聞こえる。
完全にスイッチが入った。
突然大声をあげ、泣き叫びながら、彼女は、これまでの自分の半生と、今の職場に対する、恨みつらみを語り続ける。
自分のおかれた辛い境遇を、独り言のように、しかし確実に僕に向かって、語り続けている。
こんなとき、僕は吐きそうな気持ちになりながらも、そこに立ち尽くすしかない。
こうなってしまった彼女には、もうどんな慰めの言葉は通じない。
ただ泣いて、くだを巻き、ひたすら自分の人生を憂う。
こんなときの彼女の周りには、暗黒のオーラが猛烈な勢いで放たれている。
同じ空間にいるだけで、気持ちが悪くなり、吐き気をもよおし、一刻も早くその場から逃げ出したくなる。でも、足が動かない。
彼女が泣くのは悲しいからではない。悔しいからだそうだ。
僕は「悔しくて泣く」という感覚がわからないのだが、彼女は良く泣く。悔しいと言う理由で。
そのまま50分ほどたった頃、僕はやっと解放された。
こうしてブログを書いている間にも、彼女は隣の部屋で布団に入りながら、今日一日に起こったことを反芻し、悔しさと虚しさにむせび泣いていることだろう。
彼女はの未来観測は恐ろしくマイナス思考である。
感情爆発を起こしている時の彼女は、全身から闇を漂わせている。
僕はうんざりするのと同時に、彼女への同情を禁じえない。
しかし、この親にしてこの子ありである。
血のつながりにつくづくうんざりした夜だった。
僕だって、不安なことを抱えているのに・・。
その声は、僕の心の空洞に虚しく響いただけだった。