アスファルトを打ちつける雨を、眺めていたんです。
用意周到に傘を持ち合わせていた人も、
覚悟を決めて小走りで家路を急ぐ人も、
激しさを増す雨の中でずぶ濡れになっていきます。
それは突然の雨だったから、繁華街の客引きも、
その前を行きかう人々も、
激しく降り続く雨と、黒く濡れたアスファルトが弾き返す雨粒を浴びて、戦意喪失の様子です。
雨は益々激しさを増して、横殴りの風をまとい、
コンビニの前で雨宿りをする僕の身体を少しずつ侵食していきます。
それから空が幾度か光って、空に爆音が轟きました。
地球の本気に皆、身を縮め、小さな悲鳴が鳴りました。
このまま何もかも水に流されてしまえばいい、と思い、
閃光と爆音にテンションを煽られながら、
原始の恐怖を目覚めさせるように、
僕は、街の軒下にかろうじて居場所をみつけるのです。
水面を泳ぐ呑気なカエルの下には、
水に沈んだビルの森。
都会に育ったマングローブは無機質だけど、いつか魚が棲むでしょう。
何もかも飲み込んでしまえばいいのです。一息に。
今度の怒りは大きくて、人々は傘を手に、あるいは新聞を頭上に広げ、
右往左往するのです。
それでもこの惑星の怒りは鳴りやまず、行きかう人々に降りかかります。
打ちつけろ。
討ち壊せ。
この惑星の願うままに。
ヒトが沈んだ水の色は、明けない夜のほのかな光に、青くはかなく揺れるのです。