意思による楽観のための読書日記

運命の息子 ジェフリー・アーチャー(上) ***

ナット・カートライトとフレッチャー・ダベンポート、この二人は双子としてこの世にうまれてきたが、産院での別の夫婦の死産とその家に仕えていた乳母の働きにより二人の姉弟は別の家族として育ち生きていった。そのことを本人たちが知るのは43歳になってからである。

二人はコネティカットに育つ、そしてホッチキス校とタフト校という2つの名門校に進む。カートライト夫妻は息子の進学に関して次のように議論する。「私は息子にパトリシアン(貴族)よりもイガリテリアン(平等主義者)になって欲しいのよ」と妻、「なぜその2つがインコンパチブル(両立)しないんだ」と夫、それを聞いていたナットは辞書を引いて両親の議論を知る。そして両親に言う。「モビーディックは巨大なパトリシアン、善良なコネティカットの人々は巨大な鯨をそうだと考えたのさ。」

二人はタフト校とホッチキス校それぞれで一生の友人となるトムとジミーと出会う。そしてフレッチャーは初めてジミーの家を訪問した時にその妹(キッドシスター)のアニーと恋におちて、結局二人は結婚することに生る。そしてジミーの父で上院議員のハリーゲイツと出会う。ハリーはフレッチャーに天性の政治家を感じ、自分の息子よりフレッチャーを自分の政治後継者とすることを決めることになる。ナットはトムという親友、そしてラルフ・エリオットという一生ライバルとなる人間と出会う。ラルフはこのごの人生でもナットの前に度々登場しナットの邪魔をすることになる。小説的には完全な悪役、ここまで徹底した悪役は日本小説では珍しい。

この小説は現実のアメリカの歴史と共に進む。ナットにその歴史が直接的に覆いかぶさってきたのはベトナム戦争時の徴兵、大学生のナットに来た召集令状であった。大学生であったナットには召集猶予を申請することができたが召集に応じて訓練に参加することにした。新兵訓練でナットは優秀な成績を示し、上官は幹部候補生として遇すること、そして前線には送り込まないことを取り計らう。後方部隊の物品調達担当中尉となってベトナムに赴任していたナットはある時、前線からの救難信号を受信、自らもヘリコプターに乗って前線に救助に向かい、ヘリコプターは撃ち落とされてしまう。しかし、傷病兵を連れて徒歩でサイゴンまでの211マイルを帰還、名誉勲章を授与される。

招集されなかったフレッチャーは新聞でベトナム戦争の記事を読む、そして兵役免除を申請せず前線で活躍して名誉勲章を得たカートライト中尉の記事を読み、自分に召集令状が来たら自分はどんな決断を下したかを考えてみる。

ナットは上官の計らいで大尉となり、大学に復学して給与を得ながら卒業した後にも軍人としての年金を受け取ることができる権利を得る。大学に戻ったナットは同級生たちとの経験の差、精神的な自分の成長を感じる。その時であったスー・リンという韓国人女性と恋に落ちて結婚することになる。スー・リンは優秀なコンピュータ技師になり、その後大学で最年少准教授となる。

フレッチャーもナットもその後大学を卒業、フレッチャーは法律事務所、ナットは銀行で働くことになる。
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↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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