「チルドレン」では、バンクの事件では大学生だった陣内は家庭裁判所の調査官となっている。陣内と同じ職場で働く武藤が語るこの短編、武藤は28歳の若者だった。そこに調査官の対象となる少年、志朗が万引きをしたことで家庭裁判所に送られてきた。父親だという男と一緒だったが、父の前ではビクビクしているようだったので、武藤は父親を先に帰らせた。それで少年志朗は少しは話をするようになった。そして実際には、その父親という男は志朗の家に押し入った強盗であり、志朗の両親は長期の旅行中だったという。そしてその強盗に身代金を要求されていたのだと。いったいなぜ志朗はそのことを武藤に言えなかったのか。犯人に脅されていたからだというのだが合点がいかない。
「レトリーバー」は盲目の永瀬の彼女が語る、陣内の失恋物語。しかし、陣内の失恋は物語の中心ではなく、その失恋を目撃した永瀬とその彼女の周りにいた人たちが、みんな警察官であり、脅迫事件の犯人を張り込み中だったという設定。そして武藤の「チルドレンII」、陣内が親父を殴る「イン」へと展開していく。
短編はいずれも荒唐無稽とも言えるストーリーであり、面白いのだが、なにかあとに残るものがあるというわけではない。Webなどの書評では評価の高い作者であるが、今ひとつ高い評価点をつけたいとは思えないのだ。
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