意思による楽観のための読書日記

チルドレン 伊坂幸太郎 **

5つのオムニバス短編、中心となるのは陣内という変な男。友人の鴨居が語るバンクでは、二人が一緒にたまたま入った閉店直後というか直前というかの銀行の支店で、銀行強盗に出くわす。ここでのポイントは陣内が人質になりながら口ずさむ「ヘイジュード」、そして強盗が人質全員にかぶらせるアニメの主人公のお面、そして犯人の顔に貼り付けられた赤いばってんのテープ。同じ時に人質になったのが盲目の永瀬と盲導犬のベス。永瀬は目が見えないながらも、犯人たちの意図を推理しようとした。お面を人質に被せるのは、犯人の顔を分からなくするためではなく、だれが強盗だったのかを解らなくするためであり、警察に包囲された時に、開放する人質に紛れて犯人たちが逃げ出すためだと。そして赤いばってんは一瞬見られる顔の特徴をわかりにくくするためだというのだ。事件は永瀬の読み通りに展開する。そして陣内と永瀬は友人となる。これが鴨居が語る「バンク」。

「チルドレン」では、バンクの事件では大学生だった陣内は家庭裁判所の調査官となっている。陣内と同じ職場で働く武藤が語るこの短編、武藤は28歳の若者だった。そこに調査官の対象となる少年、志朗が万引きをしたことで家庭裁判所に送られてきた。父親だという男と一緒だったが、父の前ではビクビクしているようだったので、武藤は父親を先に帰らせた。それで少年志朗は少しは話をするようになった。そして実際には、その父親という男は志朗の家に押し入った強盗であり、志朗の両親は長期の旅行中だったという。そしてその強盗に身代金を要求されていたのだと。いったいなぜ志朗はそのことを武藤に言えなかったのか。犯人に脅されていたからだというのだが合点がいかない。

「レトリーバー」は盲目の永瀬の彼女が語る、陣内の失恋物語。しかし、陣内の失恋は物語の中心ではなく、その失恋を目撃した永瀬とその彼女の周りにいた人たちが、みんな警察官であり、脅迫事件の犯人を張り込み中だったという設定。そして武藤の「チルドレンII」、陣内が親父を殴る「イン」へと展開していく。

短編はいずれも荒唐無稽とも言えるストーリーであり、面白いのだが、なにかあとに残るものがあるというわけではない。Webなどの書評では評価の高い作者であるが、今ひとつ高い評価点をつけたいとは思えないのだ。


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