関東平野の南東に位置するのが現在の東京都区部だが、その場所は古くは多摩川扇状地の上に横たわる武蔵野台地であり、その昔は南側を多摩川が流れ今ではその名残が立川崖線、国分寺崖線として残っている。武蔵野台地に湧出する水源からは、武蔵野台地の僅かな東向きの傾斜に従って、何筋かの川が隅田川や東京湾に流れ込んでいる。渋谷川、善福寺川、妙正寺川、神田川、石神井川、そして江戸時代に掘削された小名木川、玉川用水などがある。川は大地を削り、谷を形成するが、江戸時代以降の人口増加と都市化進行で、川は暗渠となり、土地はコンクリートで覆われ、さらにはその上に高層ビルが建設されて、本来の土地の高低や地形がわからない場所が多い。
東京都区部の北東側は縄文海進時代には海岸線となっていた日暮里崖線があり、京浜東北線がその崖下を通るが、崖の高さは15-20mほどもある。立川崖線はJR青梅駅付近から調布市と狛江市の市境まで続く段丘崖で、立川付近では15m程度の高さがある。国分寺崖線は立川市から野川に沿い、二子玉川駅で多摩川に近づいて田園調布まで続く。成城学園あたりでは20mほどの高さとなる。現在では、多くの場所で宅地化が進み、樹林地や公園として整備されているところが多い。本書は、そうした東京都区部を写真撮影しながら歩いて、もともとあった地形を想像しながら楽しもうという一冊。土地勘があり行ったことがある場所であれば、土地の高低や谷の存在も想像もできるが、地図を眺めただけでは今やそれは分からない、というのが大都会東京の悲しさか。そうした悲しさも自分の経験や記憶にからめて楽しんでしまおうという本書。地図好き、地形マニア、ブラタモリ好きなら一読の価値あり。